200話 騎士の行方
騎士は何処にいるかが分からない、メル達は精霊に見張りを頼み。
酒場へと向かうと彼らの情報は無かったものの「龍に抱かれる太陽」の冒険者であるメル達は優遇される。
そして、協力者を得ることが出来たのだった……。
果たして騎士は見つかるのだろうか?
「じゃぁ、頼むぞ」
店主の言葉を聞き酒場の外へと向かった冒険者達を見送るメル達。
彼らが去った後、メル達もまた酒場を後にする。
「顔がばれてるならここに居た方が良いんじゃないか?」
店主の言葉は確かにその通りだ。
しかし……。
「いえ、多分向こうもここに来るって思ってると思います。それなのに探さないのは逆に怪しまれると思うんです」
「それに盗られたのは大事な物だ、手伝ってもらって俺達が探さないなんて出来る訳がない」
「そうか、分かった気をつけろよ?」
心配そうな顔を浮かべる店主にメルは「はい!」と一言を残し仲間と共に歩き始める。
「そう言えば、どうやって連絡を取るんだ?」
暫く歩いた所でシュレムが首を傾げつつメルへと問う。
「シルフに連絡役になってもらうの、あの酒場には森族が多かったし」
森族であれば召喚されていない精霊とも会話が出来、またお願いもすることが出来る。
いつもメルが頼んでいる方法だ。
それを思い出したのだろうシュレムは片方の手の平にもう片方の拳を落とし――。
「ああ!」
納得したような顔を浮かべた。
「とにかく、俺達以外にもあいつらを探してもらっている……とはいえじっとはしてられない、行こう!」
シュレムが納得した所でリアスは騎士探しへと戻る事を告げ、メル達は再び街の中を歩き回る。
それから露店、武具店、宿……他にも回ったメル達だったが……。
「ど、何処にもいないよ? リアスお兄ちゃん」
がっくりと項垂れつつ、落ち込んだ声を出すエスイル。
少年が言った通り、二人の騎士の姿は何処にもなかった。
「そんな、この街に来てるはずなのにどうして見つからないの?」
メルもまた項垂れつつそうこぼす。
確かに地図を見ていてツィーアへ来るはずだ。
しかし、実はそうではなかったのか? メルが不安に思っていると……。
『メル!!』
「シルフ……?」
精霊シルフが焦った様な顔を浮かべメルの元へと飛んできた。
「見つかったのか?」
焦るリアスにメルは一度首を横に振る。
「今聞いてみるよ……シルフどうしたの?」
メルはいつもと様子が違う精霊シルフを気にしつつも尋ねる。
すると、シルフは説明するのも手間に感じたのか……。
『こっち!!』
まるでメル達を案内するかのように飛んでいく……。
「シ、シルフがついて来てほしいみたい!」
「他の連中が何かを見つけてくれたのかもしれないな! よっし! メル、行こうぜ!!」
今にも走り出さんとするシュレムに頷き返事をしたメルはリアス達の方へも目を向ける。
「行ってみよう」
「うん! ついて来て!!」
メルはそう言うとシルフの後をつけ走り出す。
シルフはメルが居るかどうか確かめるように振り返りながら進んで行き……その様子はやはりどこか焦っている様だ。
メルとエスイルは何があったのか不安を感じていると……。
「なんだ……こ、れ……」
「ど、どういうことなのかしら?」
リアスとライノはその光景と見て驚き思わず足を止める。
いや、二人だけではない皆足を止めたのだ……。
それもそうだろう……空は晴れている、風もそこまで強くない。
しかし、海だけが大荒れなのだ。
これでは船は出発するなんてことはできないだろう……メル達がそう思い浮かべ……はっとする。
「もしかしてあの騎士が首飾りでなにかしたとか……?」
精霊を生み出し、癒す道具である首飾り。
その力を使えばもしかしたら暴走もさせることが出来るのではないか? メルはそう思い口に出す。
「そうかもしれないな、メル……ウンディーネはどんな様子だ?」
メルが口にしたことを信じるつもりなのだろうシュレムは彼女に尋ねる。
勿論メル自身、心配になりアクアリムについて来ている精霊へと目を向けた。
しかし、そこに居るのは……。
『………………?』
何が起きてるかまるで理解していないかのように可愛らしい笑みを浮かべつつ首を傾げる水の精霊の幼子……。
ど、どういう事? この子もウンディーネ……ううん、この子がウンディーネに間違いない。
なのに何も変化が無いなんておかしいよ……。
「近づいてみよう……どっちにしても逃げられていたらどうやって追いかけるか考えなきゃいけないんだ」
「そ、そうだね……メルお姉ちゃん行ってみよう?」
「う、うん」
海の荒れ様を見て落ちたら大変だと考えたメルはエスイルの手をしっかりと握り海の方へと歩み始める。
すると……。
「…………え?」
「…………なん、だ?」
メル達だけではない、そこに出来ていた人だかりもさらに騒ぎ始めた。
何故なら、メル達が近づくと海は静けさを取り戻していくのだ。
「何をした! なんで海が穏やかになる!!」
船の乗組員らしき男はメル達の方へと怒鳴り声を上げながら近づいて来る。
メル達の仕業で海が荒れたのだと考えたのだろう彼は――。
「商売にならないだろうが!!」
と怒るが、当然メル達の身に覚えはない。
「何が……どうなってるのか私達も……」
「ぁあ!?」
本当の事を言っても実際にメル達が近づいた事で海は穏やかさを取り戻したのだ。
彼女達が何かをした、そう思う者は多いのだろう……次第に白い目や鋭い視線が増えていく中――。
人垣を超え現れた二つの影……。
「あら……どうやら変な事の犯人にはされたものの探し人は見つかったみたいよ?」
ライノはその二人に気が付き皮肉を口にする。
その言葉でメル達も彼らに気が付き顔を引き締めると……。
「全く、君達は……予想外の事をしてくれるな」
「あの魔物風情で止められないとは思ったけど……まさかこっちが足止めされるとは思わなかった」
二人の騎士の言葉を聞きこの現象がやはりメル達の仕業だと確信したのだろう一人の森族の女性は騎士に近づき……。
「お願いします、あの人達をどうにかしてください! うちのお父さんも漁には出れなく……」
すがる様に騎士の服を掴もうとした時――騎士の視線と身体がわずかに動いた事に気が付いたメルは――。
「下がって!!」
そう叫び、それよりも早く、シュレムは盾を構え飛び出していた。
直後、甲高い金属音が鳴り響き……。
「ほう……ただの足手まといだと思ってたが……」
女性と騎士の間に割り込んだシュレムの大盾は刃を受け止め……。
「騎士ってのは人を守る為に居るんじゃないのかよ!! 物語じゃいつもそうだぞ!!」
「人? 確かに私達は人を守る為に居る。だが、汚らわしい獣は人ではない」
その一言で自身が何をされたのかようやく気が付いたらしい森族女性はその場に崩れ……。
「ぁ? ……ぁ、ぁぁ……?」
呆けたような声を出す。
そして今の行動を見て、何人かはメル達の所為ではないのではないかと思い始めたのだろう……。
「た、頼むあいつらをどうにかしてくれ!!」
と叫ぶ声が聞こえ始めた。
「全く、手のひらを返すのが早いわね……」
笑うライノはメルからエスイルを預かると後ろへと離れ……メルとリアスは武器を構える。
二人の騎士はメル達を睨み……。
「さて、海を戻してもらおうか?」
鷹の様な鋭い瞳でメル達を射貫くのだった。




