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私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
9章 奪われた精霊の首飾り
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194話 スプリガン

 魔物はメルの太陽の魔法が苦手なようだ。

 彼女はその魔物が母フィーナを追い詰めた魔物スプリガンだと考えた。

 しかし、その魔物攻撃はシュレムにも防ぐことが出来……。

 かつて本当にこの魔物が母達を追い詰めたのだろうか? と言う疑問が生まれたのだった。

 思わぬ襲撃があったものの食事を済ませたメル達は再びツィーアへと向け歩き始める。


「そんなに強い魔物じゃなくて助かったぜ、流石オレの嫁(メル)だな!」

「なんだろう、私の名前を呼んでるのに別の意味があるみたいに聞こえるんだけど……」


 メルは苦笑いを浮かべながらそう言うとシュレムは当然だとばかりに頷き――。


「ああ、その通りだ!」

「やっぱり……変な事を考えてたんだ」

「というより、いつも通りだろ?」


 二人の様子に苦笑しつつリアスは歩みを進める。


「でも、間に合うの?」


 エスイルは先程の戦闘で少しでも時間が取られたのが気になったのだろう、不安そうに尋ねる。

 それに対しリアスは少年の頭に手を置き答える。


「大丈夫だ、タリムからツィーアに行くには魔物にだって会う、絶対に遭わないで進むなんてその方が無理だ」

「ええ、そうね。だからそんなに気にしなくても――」


 微笑むライノは途端に険しい表情へと変え辺りを見回す。

 いや、彼だけではない。


「な、何か居る!」

「う、うん、僕にも分かるよ……」


 メルとエスイルも辺りを見回し、リアスもまた周囲を警戒し……シュレムもただならぬ雰囲気を感じ取ったのだろう盾を構えていた。


「一体なんだ?」

「わからねぇよ……だけど、いやな予感だ……」


 二人の会話を合図にしたかのように魔物は現れ、メル達を囲う……。


「そ、そんな……これってさっきの魔物がこんなに居たって事かしら?」


 ライノが口にした通り、メル達を囲うのは先程の魔物――。


「ス、スプリガン……」


 嘗てメルの母フィーナを死の危機に追いやった魔物であり、もう一人の母ユーリが名付けたその魔物はまるで仲間を殺された事を恨むかのように顔を歪めていた。


「ど、どうしよう……」


 エスイルは不安そうに魔物達へと視線を向け――そう口にする。


「どうしようって言ってもな、逃げるにせよ、勝つにせよ……戦わない訳にはいかないみたいだな」

「ああ! なら全部ぶん殴ってやる!!」


 既に臨戦態勢に入っていたシュレムは意気込み、リアスまた武器を構えメルの方へと向く……。


「分かった!!」


 そしてメルは魔物の弱点となる魔法を唱え始め――。


「エンチャント!!」


 二人の武器へと陽光を纏わせると自身もまた魔物へと向き直る。


「シュレム、リアス!! この数は多すぎるから、逃げる事を考えよう!」


 魔物を倒すのは危険すぎる、そう判断したメルは提案を叫ぶように告げた。

 二人は頷き――。


「なら、ライノの旦那とエスイルは隙を見て逃がしてくれ!!」

「その方が良いな、先にメル達が抜けるんだ!」

「先にってそれじゃリアス達は!?」


 メルは二人の身を案じ問う、すると二人は口元に笑みを浮かべた。


「オレがメルについて行かない訳ないだろ?」

「大丈夫だ! 後ろを守るだけでちゃんとついて行く」


 二人の言葉を聞きほっとした彼女は頷くと剣を構える。

 攻撃手段としては使えなくとも防御をするためには使えるはずだと考えたからだ。


「分かったでも、二人共絶対に逸れないでよ?」


 そして念を押すように告げるとリアスは苦笑した。

 その表情に再び不安感を覚えたメルだったが……。


「逸れたらメルが前を歩くことになるんだ。ライノ達が大変だろう」

「そ、それを今言うの!?」


 メルは思わず転びそうになりつつも、リアスへと突っ込みを入れる。

 彼女自身そう言った不安もある。

 しかし、今ここで言われるとは思っていなかったのだ。

 だが……リアスのその言葉で少し笑みを取り戻したメルは――。


「……行こう皆!」


 今まさに振り落とされる拳をアクアリムの水圧で逸らしながら叫ぶのだった……。








 メル達がスプリガンの群れと戦いを始めた頃。

 地図を見ながら歩く二人の騎士の姿があった。


「それで、こいつは手に入れたけど子供の方はどうする? 必要なんだろ?」

「ああ、その首飾りは森族(フォーレ)の力が必要だと聞いている」


 男の騎士の言葉にニヤリと笑みを浮かべた女は地図にあるツィーアへと指を向ける。


「じゃぁ、此処で手に入れれば良いのか?」

「そういう事になるな」


 女の言葉に頷いた男の騎士……彼の答えに満足する女はふと考え事をするように天を仰ぎ――。


「だが、あいつらはどうする? 大事な物なら追ってくるはずだ」

「問題ない、奴らが俺達が何処に行くかなんて分かるはずもないからな、それに万が一追って来ていたとしても――あれを抜けれる訳がない」


 二人の騎士はその顔を歪め、恐ろしい笑みを浮かべた……その笑みは誰にも見られていないと思っていただろう。

 しかし、メルの相棒であるシルフの目にはしっかりと移っており……。


『…………』


 言葉は通じずとも何かを感じ取った風の精霊はメル達のいる方向へと顔を向けた後、すぐ傍にあった水辺へと目を向けた。


『あれ?』


 そこには力を失い、幼くなった筈の水の精霊の姿があった……。

 だが、そこに居るのはいつも通りのウンディーネだ。

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