192話 謎の魔物
ツィーアへと向かう一行。
そんな時何故か犬が目の前に現れる。
その犬は何処かに逃げてしまったのだが……代わりにそのすぐ後に大きな魔物が姿を現すのだった。
一体、どこから現れたのだろうか?
突然現れた魔物。
それは何処から来たのか全く分からなかった。
「これだけデカい奴が何処から!?」
リアスはその場に駆け付けると針を投げる。
しかし、そんな彼へと目を向けた魔物はその場に立ち尽くし――。
「……え?」
にやりと笑ったのをメルは目にした。
それにどういう意図があるのか、それを考えるメルだったが……答えが出たのはそのすぐ後だ。
「おいおい……」
それを見てメルは絶句し、シュレムは半眼をリアスへと向けた。
何故か? その理由は針が一切刺さらなかったのだ。
「嘘だろ!?」
しかし、それに一番驚いていたのはリアス本人だった。
「ど、どういう訳なのかしら……」
ライノは魔物から目を離すことなく問う。
魔物は当然の事とでもいう様に笑みを浮かべたまま見せつけるように一歩を踏み出した。
「くっ!!」
メルは正気を取り戻すとアクアリムへと魔力を伝え、振り下ろす。
放たれた水の刃は寸分狂うことなく魔物へと叩き込まれ――彼女は咄嗟に辺りを見回した。
そう言えば、あの犬は? まさかこの魔物に?
先程の犬が居ない事に気が付いたメルはそう考えるもすぐにそれを否定した。
血の臭いがしないのだ。
だから、あの魔物は無事だとほっとした時――。
「メル! お前まで何やってるんだ?」
シュレムが呆れたような声を出し、なんの事かと魔物へと目を向けた彼女はシュレムが言っている事を理解した。
「なん……で……?」
魔物はその場に立ったままで避けた様子はない。
水にぬれている事からもそれは確実だろう……しかし、傷一つないのだ。
リアスの針は皮膚が弾力があるのなら弾かれる可能性もある。
しかし、アクアリムの水の刃は避けるか防ぐしかない。
身を護る道具も無しにどうやったのか? いや、そもそも現状から見るに魔物は防ぐことすらしていないだろう……。
「ったく! こうなればオレが!!」
シュレムは吼えると盾を構え魔物へと殴りかかる。
しかし、それさえも魔物は避けるそぶりが無い……当たればひとたまりもないというのにとメルは思うが――。
「なん……なの? この魔物……」
確かに攻撃は命中した。
シュレムが手を抜く必要なんてないのだ。
しかし、魔物は其処に立っていた……勝ち誇ったかのような笑みを浮かべて……。
「お、おいおい……リアス! こんな魔物が居るなんて聞いてないぞ!!」
「知らないって! こんな魔物見たことも……いや、待て……そもそもこいつ一体なんなんだ?」
メル達と比較しても当然だったが、オークと比べても大きな体。
その身体に見合った丸太の様な腕……。
ゆらりと動き始めた魔物は腕を持ち上げ、流石に次の一撃は受けきれないと感じたのだろう、シュレムがメル達の方へと目を向け、それを察したメルはエスイルを連れその場を離れる。
その途中メルはシュレを心配し後ろへと目を向ける。
彼女の瞳に映ったのは振り下ろされる拳をギリギリの所で避けるシュレムの姿――。
この魔物、もしあの腕が掠りでもしたら……私達なんて……こんな魔物一体どこから、まさかこの魔物も消える事が出来るの?
メルはその可能性を考えるが――。
ううん、違う……もし、そうならシュレムが気が付かないなんて事は無いはず。
シュレムが気が付いてくれたから魔物を倒せたんだ、もし今回もそうならシュレムが気が付いてくれる。
「……急に現れる大きな魔物……こんな魔物家にあった本には書かれて何て……」
メルはそこまで口にし、ふと考える。
もし、消えていたのではなく……最初からその場に居たのならどうだ?
もし、そこに居て違う姿だったら?
昔、フィーナママが死にかけた時があるって聞いた事がある。
その時の魔物……それが今目の前に居るのだとしたら……? いくら主であるタリムの王が居なくても、魔物が居なくなるとは限らない。
「……試してみる価値はあるよね?」
「メルお姉ちゃん?」
呟いた言葉に反応するエスイル。
そんな弟に目を向けたメルは手を放し……。
「エスイルちょっと離れてて」
「う、うん!」
少年にその場から離れるように告げた。
そして、アクアリムを鞘へと納めると右手を魔物へと向け――。
「陽光よ……裁きとなりて降り注げっ!!」
もし本当にタリムの王の魔物なら、普通の魔法は効果が無い! だけど、この魔法なら!!
「アルリーランス!!」
メルが生み出した光は槍の形へと変わり――その手から投げ放たれる。
魔物はその魔法が自身にとっての弱点となる事を知っているのだろう、初めて身をかわそうとし――。
やっぱり、あの魔物は太陽の魔法に弱いんだ! じゃなきゃ避けようとはしないはず。
きっと本能でそれが分かってる!!
解き放たれたメルの魔法は直撃とまでは行かずとも魔物の片腕をかすめる。
魔物は声を上げる事は無かったがメルが危険だと判断したのだろう……彼女の元へと近づこうと歩みを進めた。
「させるかよ!! シュレム」
「オレに指図すんなって!」
リアスとシュレムはメルを守る為、魔物の前へと立ちはだかるが――魔物はそんな二人を煩わしいと感じたのだろうか?
『――――』
それともそれが一番得策だと思ったのだろうか、ぐにゃりと姿を変えていくのだった。




