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186話 ウンディーネ

 タリムへと戻ったメル達。

 フィオを助ける事は出来たのだが……首飾りを失ってしまった。

 だが、騎士達の向かう先は見当がついた。

 メル達はツィーアへと向かう事を決意したのだが……その前に気になる事があるようだ。

 フィオが去って行った方向を見つめていた一行だったが、目的を思い出し井戸の水の中に居るセイレイへと目を向ける。

 そこに居るのはやはり、昨日と同じ小さなウンディーネ。

 彼女達はメルを見つけるとはしゃぎはじめる。

 言葉は相変わらず発していない様だがどうやらその様子から元気である事は分かった。

 桶にすくわれた水も陽光を反射しキラキラと光っており、水自体に問題がある訳でもない。


「どうだ? メル何か変化はあるか?」


 シュレムはメルの目を向ける水へと目を落とすが精霊が見えないからだろう、質問をする。

 メルは彼女の質問にゆっくりと頷き――。


「小さくはなってるけど、ここに居るウンディーネは多いし元気みたい」

「元気? 小さくなってるって言うのはどういうことだ?」

「それが分からないけど……とにかく他に問題はない、みたい?」


 会話が出来ないのが不安ではあったが、他の精霊達とは会話ができる事からメルに問題があるという訳ではない。

 しかし、ウンディーネが小さくなったのはメルの影響だと考えられ――。


「メルお姉ちゃん……」


 エスイルに名を呼ばれた彼女は腰に差すアクアリムへと手を伸ばす。

 勿論街中で引き抜いたりすることはないが、祖母より受け継いだその剣が気になったのだ。


 ウンディーネが小さくなった時、アクアリムからは水が溢れ出た。

 これが関係あるのかな? それに……。


 メルはふと気になることがあった。

 相手は騎士、理由もなしに盗みを働くような者ではないだろう、しかし、アクアリムを放って置くのは理解が出来なかった。

 彼らもその剣が特別な物であることは十分に理解していたはずだ。

 盗まないまでも壊すことは十分に考えられたのだが――。


 アクアリムには傷一つなかった。

 何で放って置いたんだろう? もし、これがウンディーネと関係があったならあの人達はそれを見てたはず。

 首飾りを持って行ったんだし、アクアリムだって持って行ったっておかしくないのに――。


 首を傾げつつメルはアクアリムを見つめる。


「剣がどうかしたのか? まさか折れているとか……」


 リアスはメルと同じようにアクアリムへと目を向けつつ問う。


「ううん、これは大丈夫だよ」


 問題が無い以上、メルは当然そう答えた。

 一瞬だったが、リアスへと視線を向けたメル、その時――。


「あれ?」


 エスイルの疑問を持つ声に反応し、メルは少年の方へと目を向ける。

 すると、エスイルは一点を見つめ――メルは少年の視線を辿った。


「ん?」


 そこに見えたのはアクアリムへと集まる水の精霊ウンディーネ。


「ま、魔力を込めてないのに……」


 アクアリムは魔力を込めれば水を生む剣だ。

 だからこそ、ウンディーネが集まることは不思議ではない。

 しかし、それはあくまで水が出ていればの話であり、魔力を一切込めていない今は集まってくるはずはないのだ。

 現に今までは集まってくることはなかった。

 不思議に思ったメルは少しだけ鞘から刃をのぞかせる。


「え……?」


 一切魔力は込めてなかった。

 当然水は流れ出ていなかった。

 しかし、昨日とは違う事にすぐにメルは気が付いたのだ。


 銀色の中にうっすらと残る水色……それがアクアリムの刃の色だったはずだ。

 しかし、銀色が若干薄まり、水色が濃くなっているように見える。

 どういうことだろう? メルは疑問に思いつつも刃を収めると再びウンディーネへと目を向けた。


「剣の周りに居るのか? でもそれ、確か水を出すんだから普通じゃないのか?」

「でもメルちゃんが驚いているって事はいつもは寄ってこないんじゃないかしら?」


 そう疑問を上げる二人。

 それに応えようとしたメルだったが――。


「いつもは近づいて来ない……水が出てる時にたまにいるぐらいだったよ」


 エスイルがそう答えメルは頷く。


 フラニスはウンディーネに聞けって言ってたけど――。


「これじゃ、何が起きたのか分からないよ……」


 肝心のウンディーネが喋れないのでは調べようがない。

 メルはがっくりと項垂れる。


「メル……」


 そんな彼女の肩に手を置いたリアスは其処に居るであろう精霊へと目を向ける。

 勿論彼の目に映ることはない。

 だが、彼は何かを考え思いつく。


「首飾りだ……」

「あん? なんで首飾りなんだ?」

「首飾りを使って精霊を元気にしただろ? あれを使えば喋れない精霊も喋れるようにできるんじゃないか?」

「え……? でも――」


 リアスの提案にメルは言葉を詰まらせる。

 あの時は精霊が弱っていた、しかし今は弱っているのではなく小さく……幼くなっているのだ。

 それを成長させるなんて言う事が出来るのだろうか?


「可能性としてはありそうね、首飾りは精霊に関係があるんでしょ? 尚更取り戻さないといけないわね」

「ああ、試してみる価値はある」


 二人の会話を聞き、メルはウンディーネへと手を伸ばす。

 すると精霊は嬉しそうに手の平へと乗りはじめた。

 いつもなら大人しいその精霊はやはりどこか子供っぽさがあるのだ。


 こうなった理由、原因……今のままじゃどうしてもわからない。

 なら――。


「そうしてみよう! 首飾りを使ってみる」


 メルはリアスの提案を受け入れつつ――。


「それにはどうやって戦うかを考えないと」


 あの騎士に勝つにはどうすれば良いのか? と思考を巡らせた。

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