185話 ツィーアに行くには……。
シルフとドリアードに呼びかけたメル。
しかし、二人の精霊はメルに応えることが無かった。
……不安を抱えながらもメルはフラニスを呼ぶ。
彼女の言葉に従い瞳の力を使うと騎士達は港町ツィーアへと向かっている事が分かったのだった。。
翌日、目を覚ましたメル達は食事を済ませると今後の事を話しあっていた。
「リアス、そう言えば時間がかかるって言ってたけど、どの位余裕はあるの?」
騎士がいくらタリムを使わず、港町ツィーアに向かうとしてもそんなに時間はかからないだろう。
どの程度の余裕があり、同時に急がなければならないのかメルは気になったのだ。
「ニ、三日は大丈夫だ。それにそれ位ならシュレムの盾も直ってるはずだ」
「そうだと良いけど、急がなくて大丈夫なの? リアスお兄ちゃん」
エスイルの質問にメル達の視線が一気にリアスへと集まる。
当然だ、首飾りの事を詳しく知っているとしたらこの場ではリアスだけだ。
そんな彼はゆっくりと頷いた。
「必ず取り返す、だけど焦っても駄目だ……現に俺達は敵わなかった」
「でも、結局取り戻すなら戦わないと駄目だよな?」
シュレムの言葉は最もであり、メルやライノも頷く――。
すると、リアスもまた頷き答えた。
「勿論だ。だけど、今はシュレムの武器が無いだけじゃない、メルがどうやって窮地を切り抜けたのかも分からない」
それを聞きメルは確かにそうだと考えた。
記憶が曖昧ではあったが、今回の窮地を救ったのはメル自身だ。
そして、本来ならば使えるはずもない精霊召喚までも行った。
それだけじゃない、精霊の瞳に関してもそうだ。
あれは何だったんだろう……メルが心の中でそう呟くと、風がふわりと髪に悪戯をする。
メルは思わず、髪を抑えると――。
「ああ、ごめんな嬢ちゃん」
「いえ……」
謝る宿の店主の方を向き、微笑んだ。
別に気にする事ではないという事だけじゃない。
その窓から入ってきた者の姿を見てほっとしたのだ。
『『メル!!』』
シルフとドリアード二人の精霊はメルの近くまで来ると嬉しそうに笑みを浮かべた。
「二人共無事戻ってきたんだね、良かったぁ……」
もし、ウンディーネの様になっていたら、そんな事をメルは何処かで考えていた。
しかし、元気な様子の精霊を目にし思わず目尻に涙がにじんだ。
「ど、どうした? 大丈夫か……? もしかして、昨日の魔法かなにかで――」
そんなメルを心配したリアスだったが、メルはそれを嬉しいと感じつつも首を振り、大丈夫だと告げる。
「二人が戻って来てくれただけだよ」
「そ、そうか……」
続く言葉にリアスもようやくほっとしたのだろう、息を大きく吐き出した。
「じゃ、取りあえずは此処に何日か泊まるでいいのね?」
「あ、ああ……メルもウンディーネ事が気になってるみたいだしな、調べられる所は調べよう」
メルはリアスの気遣いに感謝しつつ、目の前にあった空になっているコップを見つめる。
仲間には言っていないが不安なのだ。
ウンディーネがこのまま喋れなくなってしまったら、それは恐らく彼女自身の所為ではないかと思ってしまったというのもある。
しかし、それ以上に――。
なんでウンディーネはあの姿で召喚されたの? エスイルが呼び出せばいつも通りなのに……。
「メル……」
「ん?」
名を呼ばれゆっくりと目をそちらに向けた彼女は其処で初めて気が付いた。
仲間達が心配そうにメルを見つめていたのだ。
どうしたのだろう? そう考える彼女にリアスは答えを言った。
「首飾りは確かに大事だ。だけど、そんな顔するな……短い間だけど、精霊の事を調べに行こう」
そう言われ、メルはああそうかと理解し――顔を伏せる。
目頭が熱くなってきて涙がこぼれそうだった。
そう、メルは表情に出やすい……だからこそ、リアス達もメルが不安に思っていることが分かり、それが恐らくは精霊に関することであると予想を立てたのだろう……。
「行こうメルお姉ちゃん」
「そう、だね……」
メルはどうにか泣くのを堪えるとぎこちない笑みを浮かべ、椅子から立ち上がる。
「ここに居ても何も分からないし、まずは行ってみよう」
彼女はそう口にすると荷物を手に取り、扉へと手をかけた。
外に出たメル達はウンディーネが居るであろう井戸へと向かう。
そこの水を汲み取ろうと桶を入れた時、目の前から一人の女性が歩いてくるのが見えた。
「あら、あれって……」
「ああ、確か――えっと」
「フィオだな……」
リアスは彼女を見るなり、ため息をつくがそれが分かったのかフィオは焦ったかのように目を逸らしつつメル達の横を通り過ぎようとしていく……。
そんな彼女の様子にメルは首を傾げ……。
「あの、井戸はここですよ?」
と告げるのだが、肝心の彼女はメル達に背を向けたまま立ち止まり、何かをもごもごと言っているだけだ。
しかし、リアス達には聞こえなかったその言葉はメルとエスイルにはしっかりと聞えていた。
そう、フィオが口にしたのは感謝の言葉……恥ずかしいのか、理由は分からなかったがはっきりと言えばいいのにとメルは思いつつ――。
「今度は気を付けてくださいね」
「…………」
笑みを浮かべそう言うとフィオは何も言わずにそのまま去って行く、そんな彼女の背中を見つめながらリアスは……
「ど、どうしたんだ?」
と首を傾げた。




