184話 精霊の瞳
精霊ウンディーネのお蔭で騎士を撃退したメル。
しかし、首飾りは奪われてしまっていた……。
だが、シルフとドリアードが彼らを負ってくれているらしいのだが……。
果たして、騎士達は見つかるのだろうか?
「シルフ……ドリアード!」
メルは追いかけてくれている精霊を呼ぶ……しかし、その場には二人の精霊は現れず。
「あ、あれ?」
「何かあったのか?」
困惑するメルにシュレムは首を傾げる。
すると、リアスも心配そうな瞳をメルへと向けた。
「もしかして、他の精霊にも問題が起きたのか?」
「う……うん、いつもなら呼びかけたらすぐに来てくれるのに……」
精霊とは人間同様何人も居る。
しかし、その意志や記憶は共通しており、森族が呼びかければ傍にいる精霊が現れてくれるのだ。
だというのにシルフもドリアードも姿を見せない。
「ど、どうしたんだろう……」
ウンディーネの事もあり、メルはどんどん不安になっていく、
「他の精霊に呼びかけて見たらどうかしら?」
ライノの提案にメルは頷く。
シルフもドリアードも反応が無いなんて何か起きたのかな?
早くはっきりさせないと……!!
メルは急ぎ部屋にあるランプへと火をつける。
その火を使い精霊フラニスが寄ってくるのを待つ。
「来た!」
エスイルは精霊が近づいてきたことに気付き、思わず嬉しそうに言う。
当然メルも気がついてはいたのだが、やはり他の精霊が心配なのだろう……。
フラニスをじっと見つめたまま固まってしまった。
『メル! どうしたんだ?』
火の精霊はそんな彼女の様子を察し、首を傾げつつ問う。
すると、メルははっとし――。
「う、うん! シルフやドリアードは大丈夫? それにウンディーネはどうしちゃったの!?」
『ああ、そういえば言われてた! 目を使えって! それとウンディーネの事は分からない! ウンディーネに聞いた方がいいぞ!』
「ウンディーネに聞けって言われても……」
水の精霊は今現在とても話せる様子ではない。
その事を知るメルは思わず文句の様な言い方をし、言葉を詰まらせる。
『うーん……その内戻る! 教えたいけど本当に知らないからな……ごめん』
申し訳なさそうにフラニスは頭を下げ、メルは慌てて火の精霊へと首を横に振った。
「フラニスは何も悪くないよ……」
「メル、悪くないって……精霊は何て言ってるんだ?」
突然誤った事に困惑するリアス達に対しメルはゆっくりと視線を向けた。
「大丈夫、すぐに首飾りは見つけてみせるから!」
彼女はそう言うとゆっくりと瞼を閉じた。
お願い、シルフ、ドリアード……皆の瞳を貸して……!!
この場に現れなかった精霊達に心の中で呼びかけた。
すると彼女の中で魔力が失われると同時に瞼をゆっくりと持ち上げる。
「見えてきた……!!」
メルの瞳に映るのは精霊の見ている景色……それは、様々な光景が一気に流れ込んでくる。
「…………ん?」
はずだった。
「何かあったのか!?」
シュレムは精霊の瞳を使ったメルにどのような影響があるのか、分かっていたのだろう気遣う様に近づく……しかし、メルはそれを手で制すると答えた。
「大丈夫……」
大丈夫、だけど……なんで――。
困惑するメルの瞳に映る光景。
それは――――――。
精霊シルフとドリアードが見ているのだろう、二人の騎士の姿だ。
見覚えのある騎士達以外に何か見えるはずなのだが、一向にその様子はない。
そして、メルはもう二つ気が付いた事があった。
魔力もそんなに減ってないし、一番辛い頭痛も大丈夫みたい。
自分に何が起きたのだろうか? メルは不安を覚えつつもこの状況でなくとも精霊の瞳の弱点が失われた事に喜び、騎士達が何処に居るのか情報を集めようと注視する。
騎士達は何やら話している様だが、その会話は聞こえない。
そこは変わらずだが、どうやらタリムとは別の場所に行こうとしているのだろう、地図を取り出し場所の確認をしていた。
地図が見えれば……そう思ったメルの想いを予想したのだろうか? シルフの視線は動きゆっくりと地図の上へと移動し――。
一つの街を指差している。
「メル何か分かりそうか?」
リアスの声が聞こえ、メルは頷く――。
「もう少しで街の名前が――」
これで追いかけることができる……メルがそう安堵した時。
「――――っ!?」
「お、おい!? やっぱり何かあったんじゃないか!?」
突然、瞳には無数の光景が広がりはじめ、頭は痛みを伴い始めその痛みにメルは顔を歪めシュレムは叫ぶ――。
な、何で急に!?
メルは突然起きたことに驚きつつも騎士達が見える光景を再び見つけると指で記す街の名を読む――。
「ツィ………ア」
何とか街の名を読むことが出来た彼女は先程と同じように心の中で「もう良いよ」と呟き、視界を切る。
頭痛が始まってからすぐに切ったのが幸いだったのだろう、以前よりは疲労は少ない様に見えた。
「ツィーア? 港町か……」
「でも、なんでツィーアなのかしら……」
「何かおかしいんの?」
メルはライノに尋ねると彼は頬に手を当てつつ答えた。
「確かルーフとフロムに行く定期便があるはずよ、私達が行くのもルーフでしょ? まだ相手がルーフに行くとは限らないけど、フロムにあんな騎士が居る王国は無いはずよ?」
ライノの言う通りならばルーフに彼らの国があるという事なのだろうか?
そんな疑問の中リアスはメルの肩へと手を置き――。
「とにかく、助かったよありがとうメル……タリムを通らずにツィーアに行くなら遠回りをしなければならない、シュレムの盾が直ったらすぐに発とう」
「ああ! 今度は役にやって見せるぜ!!」
意気込むシュレムを見てどこか安心したような仲間達の表情を浮かべたメル達はその日はゆっくりと休むことにした。
ただ一人メルを除いて――。
「…………」
夜風に吹かれつつ夜空を見上げる少女は――。
ウンディーネに……精霊に……それに私に何か、起きてるのかな?
不安を抱えつつ……その不安を一人胸の中で呟くのだった。




