表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
私の夢は冒険者だったのにっ!!  作者: ウニア・キサラギ
1章 冒険者になりたいっ!
19/486

18話 二人の血?

 少年が死ぬかもしれない……

 そう思ったメルは居ても立ってもいられず、ついて行くと告げる。

 首飾りを届ける相手はリラーグに居るみたいだが、少年は何を危惧しているのだろうか?

「「メル!?」」


 ナタリアとユーリは同時に声を上げたが、メルは気にしなかった。

 彼女は自分でそう決めたのだ今更発言を撤回するつもりはない。


 確かに私はこの二日間で危険な目に遭った……

 最後はユーリママの力にも頼った……でも、こんな私でも居れば一人よりは絶対に良いはずだよ!

 それに――


「あのな、俺の目的はこの首飾りを渡すだけじゃない! その人をある国まで護衛する事でもあるんだぞ?」


 メルが気にかけた理由はもう一つあった……

 何故彼が頑なに拒み続けるのか……その理由はたった今告げられ……その事もメルの意思を固くするものだった。

 何故なら、先ほどまで眠っていた怪我人を放って置く事なんてメルにはできない事だ……


「それなら私もついて行く!」

「メル! ……お前は首飾りを届けるまでで良い!」


 メルの言葉を聞き、ナタリアは堪らず声を上げそれは、珍しく怒った声だ。


「そうだよ、それにたったの二日で何度も危険な目に遭ったでしょ!?」


 メルは勿論ユーリの言う事は先程も考えた事で理解している。

 もう二度とあんな目には遭いたくない。だが、それ以上に死なれるのが嫌と感じたのだ。


「でも、この人を見捨てろって言うの?」

「そ、それは……」


 メルの言葉に違うと言う返事をユーリはすぐに返せず……

 口を動かすだけだ……やがて何かを思いついたように――


「でも、それなら冒険者に……メルが行く事じゃ」


 と言ったが、それは別の声で否定されてた。


「おい勝手に話を決めるな! それに俺はそんな金ないからな」


 龍に抱かれる太陽の冒険者は確かに腕利き揃いであり、本来であれば高額な依頼料を必要とするユーリ達は無料で受けた事もある。

 だが、今回は自分のわがままを通し彼を護ってもらうなんてことは言えなかった……そうなると他と比べて安いというだけで実際にはそれなりにかかる……

 勿論、舞い込む依頼には銅貨五枚と言った物もあるが、それは小遣いを握りしめた子供が飼い猫を探してほしいとか、そう言ったものだ。

 だからと言って決して手抜きをする事は無いし、冒険者の人達もまた人助けが半分趣味って言う人ばかりなんだろう。

 なので安く済ませようとすれば出来るはずだ。

 メルはそう思ったが、即座にその案を捨てた……長旅となれば食料や水、道具だって必要だ。

 そうなれば当然、冒険者達の命にもかかわってくる。そうするとやはりそれなりの依頼料が必要だ……

 だけど、自分なら――! メルはそう考え母に伝えた。


「ユーリママ……だから、私が行くんだよ」

「だから勝手に――」


 話が自分の意見を無視して進んでいる事に当然少年は怒った。


「勝手にって言うけど、私を助けたのは君で、君を助けたのは私だよ? 一人じゃなにも出来なかったのはお互い様」


 この街から旅立つ事は正直に言って辛いだろう……だが、メルはそれよりも辛い事が分かってしまった……


「それに――知り合った人が居なくなっちゃうのは一番辛くて、悲しいんだよ」


 少なくとも母達は同じ気持ちだと思えた……

 だから、人を助ける事を迷わない。彼女が憧れた冒険者はそういった者達の事だ。


「これは……もう無理だねー?」


 メルの耳に呆れ声が聞こえてくる。

 その声は聞きなれたもので(フィーナ)の声だ。


「フィー……そんな、メルを止めてよ!」


 だがそんな母に対し()は情けない事にメルを止めてと懇願している。

 しかし、フィーナに駄目と言われても、メルが決めた事だ。例え家出をする事になっても彼について行こうと思ったのだが……


「でも、ユーリの子供でナタリーの孫だよ? これ以上駄目ーって言ったら家出ていくって言って本当に出ていくと思うよ?」

「……ふぇ!?」


 どうやらそれはバレていた様で、彼女が間の抜けた声を発すると優しい笑みを浮かべながらフィーナはメルの方へ向き――


「昔飛龍船でユーリ達を助けに行った時なんか、勝手に乗り込んでたぐらいだからねー?」


 それは嘗てフィーナ達がユーリ達を助けにタリムへと向かう時の話だった……

 相手は世界を暗くした犯人だと聞いたメルは母達が心配になり、こっそりと船へ潜り込んだ。

 精霊であるシルフに見つかってしまい、あっけなく留守番することになったのだが……それは――


「フィーナママ!? 内緒って言ってくれてたのに!!」

「そうだったっけ?」

「そうだったよ!」

「へ!? ほ、本当なの?」


 フィーナの嘘だとユーリが思っていた事に気が付いたメルは思わず頭を抱える。

 もしかしたら今の言葉の所為で行くな! って言われるかもしれないと考えたからだ。


「メル……」


 そして、祖母の視線も何処か冷たいものが含まれている気がし……慌てた彼女は――


「と、とにかく! 私はこの人について行きます! もう決めたから! 準備してくる!!」


 その場から逃げるために言葉を投げると扉へと向かう。


「あ、おい――」


 少年の声は聞こえたが、話が終わらないと考えたメルはナタリアが持つ例の首飾りを指差した。


「これは後で渡すから! ナタリアはしっかり持っておいてね?」


 シルフに見張らせる事も出来たが、置いて行ったら絶対に先に行くだろうと思い、祖母に頼む事にしたのだ。

 何よりシルフには頼みごとがあった。

 部屋を出たメルは早速シルフを呼ぼうとする、すると彼女の耳に――


「やれやれ……誰に似たんだか……」


 というナタリアの呆れた声と――


「二人だと思うよ?」


 というフィーナの声が聞こえた。

 ユーリの声が聞こえないのは恐らく相当な衝撃を受けたに違いないと思ったメルは後でちゃんと謝ろうと心に刻み、改めてシルフを呼ぶと目的の部屋まで急いだ。






 シルフにその部屋まで連れて来てもらったメルは扉を手の甲で叩く。

 すると、やはり聞きなれた声がメルの耳へと届いた。


「は、はい、どなた……でしょうか?」

「私! ねぇ……お願いがあるの!」


 部屋の住人へと彼女はそう声をかける。


「メ、メル様!? 今、お開けいたします!」


 部屋の中から慌てたような音が響き、その慌て様からメルはもしかしたら悪い事をしてしまったと考えたが、それからしばらく経っても部屋の扉は空かず……

 不思議に思いもう一度ノックをしようとした所、目の前にある扉はやっと錠の音が鳴り、ゆっくりと開いた。


「も、申し訳ございません」


 彼女の名はシア、ドゥルガの嫁であり屋敷の一番偉いメイド……つまりメイド長だ。

 だけど、いつもはピシッとしている身なりは乱れていて、髪もちょっとボサついてる。

 ちょっと赤い顔は同じ女性であるメルも思わずドキッとしてしまうぐらいだった。

 そんな彼女を見てメルは女性さえも魅了する、今目の前に居るシアはずるいと思うぐらいだ。


「よ、要件は何でしょうか?」


 若干息を切らしたシアはそんなメルの考えを知る事もなく、用件を尋ねる。

 そこでメルは訪ねてきた理由を思い出し、自身の髪をいじりつつシアへと告げた。


「うん、髪が汚れちゃったから切って欲しくって」


 今日尋ねるのには少し抵抗があった。

 冒険者であり、彼女の夫であるドゥルガが帰ってきているのだ……久しぶりの夫婦の再会との事でナタリアも彼女に休暇を言いつけた位であり……

 今日は仕事が無いはず、だった――が――


「あ、あれ? シアさん、今日お休みなのになんでその服なの?」


 メルの目の前に居る女性は休みだと言うのにいつもの長いスカートのメイド服を着ている。

 いつも同じ格好だから不自然ではなかったが、休みの時は決まって私服を着ていたのをメルは何度も見ていたし、今日もそうだろうと思っていたのだが……


「い、いえ……その、メル様がいらっしゃったので急いで着替えたんですよ?」


 その言葉にメルは休日はいつも私服で会っていたような? と思うもののまぁ良いかと答えを出す。


「そうなんだ、別に気にしなくても良いのに……あっそれに急ぎ過ぎてボタンを間違えてるよ」


 メルは彼女の珍しい間違いに指摘すると、シアは慌てた様に直し始めた。

 なんか変だなー? っと思ったが、それも少しの間の事でシアは部屋の中へと一瞬目を向けた後いつもの表情に戻り――


「では、髪を切りましょうか?」


 そう言ってメルを部屋へ招き入れてくれた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ