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181話 ウンディーネ

 メルは自身の危機を仲間の危機でもあることを気づきアクアリムへと魔力を籠める。

 すると、アクアリムからは激流が生まれた。

 そして、精霊ウンディーネの導きの元、詠唱を唱えると……。

 そこには普段とは違う彼女の姿があった。

 姿を現した水の精霊はゆっくりと腕を上げると空中に水が集まりはじめた。


「そ、そんな馬鹿な……どうやって水を集めて!?」

「いや、それよりもこんな魔法見たことが無い! あの子娘は何をした!?」


 二人の騎士は辛うじて立つ少女メルへと目を向け叫ぶ。

 生み出された魔法……いや、召喚されたウンディーネに直接の命を下すのはメルだと考えたからだ。

 だからこそ、まだ水を集めているだけで何もされる訳がない。

 そう考えていた。

 事実、精霊召喚は言われた望みを叶えられる範囲で叶えるだけだ。

 しかし、メルが唱え、形を成した精霊は――。


『後は任せてください――メル』

「…………」


 最早答えるだけの力も残っていないメルはその場に崩れつつ、精霊ウンディーネから目を離さないようにと目を閉じまいとしたのだが、抗える事無く瞼は閉じた。


「術者が倒れた! これで誰一人命を下す者は居ない」

「あ、焦って損をした……さ、さっさと帰るよ……」


 アシェリーがそう呟いた時、ケルスはエスイルを抱えたままアシェリーの元へと近づき――。


「その剣を持って行こう、精霊と何か関係があるかもしれん」

「はぁ? 剣って持つのは私だろ? 人使いの荒い……」


 そう言いつつも、アシェリーはメルの剣であるアクアリムへと手を伸ばす。

 その時、ウンディーネがほくそ笑んでいる事にも気が付かず。

 二人はただエスイルと首飾り、そしてアクアリムを持ち帰るのにはウンディーネは脅威ではないと考えていたのだろうから当然であるが……。


『………………』


 その様子を見ていたウンディーネは水を集めつつ、何かを呟いた。


「……ん?」


 何かを呟いたウンディーネに気が付いたケルスは訝し気な表情を浮かべる。

 しかし、何を呟いているのかは分からないのだろう……。

 すぐに興味を無くし、アシェリーが剣へと手を伸ばしている所へと目を向けた。

 しかし、いつまで経ってもアシェリーは剣を拾おうとしないのだ。

 その場から動くこともなく手を伸ばした姿勢でピタリと止まったままだった。


「何をしている、急げ」

「あ、ああ……」


 アシェリーは返事を返すが止まったままだ。

 そんな彼女の様子が気になったのだろう、ケルスが一歩前へと進んだ時――。


『…………!!』

「――っ!?」


 彼の目の前に水で作られた剣が突き刺さる。

 慌ててメルの方へと目を向けた騎士だったが、そこには横たわる少女が居るだけだ。


「まさか……」


 彼は目を見開きウンディーネを見る。

 普段温厚な水の精霊はその顔に怒りをあらわにし、ケルスの方へと真っ直ぐと手を伸ばしていた。


「自分の意思で精霊が動いたというのか?」


 精霊にも意思はある。

 当然と言えば当然だ……いや、寧ろメルにとっては何も言わずとも助けてくれる友……それが普通だった。


「アシェリー!! 早く剣を拾え!!」

「わ、分かってる!!」


 苛立ちを声に表す男の騎士。

 対し焦りを声に出したのは女の騎士だ。

 そう、彼女は動けなかった……そして、その理由にケルスはようやく気が付いた。

 騎士だからこそ、これまで戦いに身を投じてきたからこそ気付けたのだ。


「……チッ!!」


 剣に手を伸ばせばウンディーネはアシェリーをためらいなく攻撃するだろう。

 まるで剣を守るかのように――。


「仕方がない一旦引くぞ……それは回収目的にある訳じゃない」


 だからこそ、この場から大人しく去れば逃げ切れる。

 そう思ったのだろう。

 頷き、ケルスの元へと戻るアシェリーに危害が加えられなかった事も彼らの隙を生んだ。


『………………』

「っ!?」

「……は?」


 二人の騎士がその場を去ろうと歩みを始めた時、エスイルを抱える男の騎士の腕が裂け、エスイルは男の手から離れた。







「ぅ……ぅぅ?」


 地へと落ちたエスイルはうめき声をあげ、瞼を開ける。

 すると目の前に広がっていたのは赤い血を肩口から噴き出している男の姿。

 不思議な事にエスイルはまるで水の膜に守られるかのようになっており、姉の魔法だろうか? と考えその姿を探す。


「メルお姉ちゃん!?」


 だが、その姉は倒れとてもじゃないが魔法を使える状況じゃない事を知った。


「――――!!」


 直後、男が肩を押さえ何かを叫ぶのが分かったエスイルは慌てて彼が振り返った方へと目を向けた。

 そこに居たのは――。


「な、なに?」


 今まで見たことが無い表情のウンディーネの姿。

 そして、彼女は――。


『首飾りを置いて去りなさい……この場の誰も傷つけることは許しません』


 それはエスイルが精霊からは聞いたことの無い声だった……そう、彼女は怒っているのがエスイルには分かったのだ。

 しかし、相手は魔族(ヒューマ)、メルの母ユーリならともかく精霊の言葉が通じるはずもなく、男の騎士は女の騎士の支えを借りその場から去って行く……。

 幾度となく、ウンディーネの作り出した水の剣を向けられつつも、彼女達はその姿を消したのだった。

 その場に残ったのは……倒れた仲間と巨大な精霊ウンディーネ。

 何が起きたのか理解が出来ないエスイルはただ騎士が去って行った方へと呆然としつつ目を向けていた。

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