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179話 騎士との戦い

 二人の研究者と対峙するメル。

 だが、彼らは何処かおかしい。

 マントの裏には隠すように装飾がしてあり、振るう剣には変な癖があった。

 それを見たリアスは彼らを本当に騎士だと思うのだが?

「き、騎士……?」


 メルはリアスの言葉を繰り返しながら、二人へと目を向けた。

 当の二人はその場で止まったまま笑みを浮かべた。


「何故そう思う?」

「騎士が人攫いなんて笑えない冗談に思えるけど?」


 敵の言葉ではあったが、メルはそれに頷いた。

 騎士が人攫いなんて事をするはずがないのだ……とはいえ、メルが知る騎士と言うのは本の中の物語か、リラーグに居た者達だけだが……。

 それでも騎士という人達を現すには十分すぎるだろう。


「その剣、変な癖があるな? さっきも言ったが、まるで誰かに見せる為の舞だ……どこかの国ではそういった剣を王に見せると聞いた事がある」


 先程、気になっていた剣術をリアスもやはり見抜いていた事に感心しつつメルは彼の話へと耳を傾ける。


「そして、そのマント裏表だな? その華美な装飾でも隠してるのか?」

「「………………」」


 その言葉を受けてもなお余裕の笑みを浮かべている二人は――たがいに瞳を合わせると頷き合う。


「この大陸では騎士は少ないからな……目立つまいと思ってはいたが」

「仕方ない、どうする? 実験優先か?」


 優先? それに実験って……否定しないって事は騎士が人を攫った上にあんなひどい実験をしてたの!?


 メルは目の前で起きている事を信じたくは無かったが、相手が否定しない以上騎士である事は本当なのだろう。

 そして、彼らが言う優先という言葉にも不安を感じた。


「それは何処でも出来る。自国以外ならどこでもな……」


 男はメルの不安を煽るかのように視線をエスイルへと向けた。

 そして、少年の方へと歩み寄りはじめ――。


「エスイル!?」


 慌てて駆け寄るメルへと女性は剣を振り下ろす――が――。

 その刃はメルへと届くことはなかった。


「嫌な予感がする! 急げ!!」


 リアスが防いでくれたのだ。

 彼に感謝しつつメルは急ぎ少年の元へと向かう。

 それに気が付いた騎士ケルスは走り出し――その手で少年を掴もうとするも……。


「てめぇ……何しやがる!!」

「子供を狙うなんて嫌な大人ね……」


 シュレムとライノ、そしてシルフの助けによりその手は阻まれたかに見えた。


「――邪魔だ」


 しかし、二人を鞘で殴り、ケルスはエスイルへと確実に近づいて行った。

 このままでは間に合わない。

 メルはそう悟り――この弟を守るべく状況を変える一手となる者の名を叫んだ。


「シルフ!!」


 幼き頃からのメルの相棒は名を呼ばれるとともに頷き突風を巻き起こす。

 先程と同じようにエスイルに近づけさせないためだ。


 これで大丈夫……。


 メルはそう考えほっと息をついた。

 しかし、ケルスは姿勢を低く保つとそのまま走っていくではないか……。


「嘘!?」


 シルフが生み出した風は常人では立っているのもやっとのはずだ。

 慌ててケルスを追おうとするメルだったが、突風が仇となり前へと進めず。


「メルお姉ちゃん!!」

「エスイル!!」


 弟の名を叫んだ。


 何故、エスイルを執拗に狙っているのかその理由も分からなかった。

 いや……正しくは何時こうなってもおかしくないというのにならなかった事で安心しきっていたという事があったのかもしれない。


「――グッ!?」


 突然後ろから聞こえた声にメルはびくりと身体を反応させ振り向く――。


「……リアス?」


 いやな予感がした。

 まさか、リアスが殺されでもしたのだろうか? そう考えたのだ。

 そして……メルの目に映った光景は地に伏せるリアスの姿と……手に見覚えのある首飾りを持つアシェリーの姿。


「……え?」

「安心しろ命までは奪わない」

「メル!!」


 そして、シュレムの声が聞こえたと同時にエスイルに名を呼ばれた気がした彼女は慌てて振り返る。

 突風は既に止み、エスイルを抱きかかえる騎士の男。

 その近くでは申し訳なさそうにしているシルフの姿があった。

 シュレムは気を失ってはいないもののどこかを痛めたのだろうか? 立ち上がることはできない様だ。


「なん……で……?」


 今までエスイルを狙う者は居なかったのに……。


「何故と言われてもな、精霊の首飾り、そしてその力を扱う者……お前達はこれの意味を知ってるのか?」


 そう言われ、メルは口を閉ざす。

 知っているも何も精霊を救う旅、それがメル達の目的だ。

 他に何かある訳ではない……そう思いつつメルはエスイルを救おうと駆け始めた。

 しかし、アシェリーにその道を阻まれ――。


「退いて!!」


 メルはアクアリムを握り振るうが……呆気なく弾かれてしまった。


「恐らくは精霊を救うと考えているのだろうが、それは違う……普通に儀式を行うだけでは……精霊が増えればエルフの力が増す……この世界はずっとエルフに支配されたままなのだぞ?」

「エルフの力? それに支配って! そんなの関係ない! 首飾りとエスイルを返して!!」


 男の言葉は理解が出来なかった。

 元よりこの世界はエルフが作ったものだ、なら最初からエルフの支配を受けていることになる。

 しかし、エルフは必要以上に干渉はしない、人が生きる上で何の問題もないのだ。


「小娘、お前達に一つ良い案がある。子供ながらに鍛えられているお前達にな……」

「おい、ケルス……」


 面倒そうな表情でケルスを見るアシェリーだったが、構わないと言った風に首を振りケルスは言葉を続けた。


「このまま我が国へと共に帰り、王を守る剣となる事を誓うというのはどうだ? お前は魔物同然の種族森族(フォーレ)ではあるが、見込みはある……この少年も一緒に行けるぞ?」

「……え?」


 予想もしなかった言葉にメルは驚き……その場で立ち止まる。

 辺りを見れば立っているのはもうメルだけだ。

 先程まで起きていたシュレムも倒れ、エスイルも気を失っている。


「…………」


 メルはどうしたら良いのか分からず、ただその場を見回すだけだった。

 そして――。


「…………!」


 表情を引き締め、口を大きく動かした。

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