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171話 行方不明の少女

 休息を得ていたメル達。

 そんな彼女達はフィオという少女が行方不明になっている事を宿へと来た男から知る。

 どうやらいつもなら持っていく籠が家にあり、本人がそれを忘れる事は決してないという事だが?

 叫び声の様な言葉が宿へと響くとメル達は互いに頷き立ち上がる。

 そんな時、聞こえた声は――。


「い、いや……だが、まだ何かあったっていう訳じゃないだろ? 部屋は荒れてたのか?」

「そ、それは無かった……だけど、だけど……!!」


 焦る彼の様子を見てメル達は彼へと近づく……見慣れない少女達と共にリアスが居ることにホッとした様子を見せる。


「リアスか……っとすると君達がフィオが言っていた子供達か」

「は、はい、一応冒険者見習いです」


 メルが腕輪を見せると彼はすがる様な瞳をメル達に向けた。

 そんな彼に対し宿の主人は溜息をつく。


「籠が置いてあるなら散歩かもしれないだろう? タリムの王が居なくなった今、あの魔物以外に脅威はない。それに魔物が関わっているなら流石に俺達だって気が付く」


 店主はそう言うもメルはそう思わなかった。

 何故ならトーナで透明な魔物を見ていたからだ。


 もし、あれに知能があるのが居たら……。

 私達に付いて来て攫う事は十分考えられる。

 シュレムが気が付いてなかったって事を考えるとついて来てないのかもしれない。

 でも、ここに居ないとは限らないんだっ!!


「あの、ここ最近物が無くなったりとかはありませんでしたか?」

「「物が?」」


 メルはあの魔物が関係しているのではないか? と考え問う。

 しかし、二人は首を傾げるだけだった。


「メル……もしかして、アレが関係してると考えてるなら、多分違う」

「……え?」


 リアスはメルにそう告げる言葉を続ける。


「確かにアレなら、賢い奴が居れば人を攫うのは簡単だ。だけど理由がない、恐らく夜の間に野盗が何かが忍び込んだんじゃないか?」

「や、野盗だって!?」


 その言葉に驚いたのはフィオの父親というフィッツだった。


「で、でもなんで野盗が?」


 野盗……つまり盗みを生業とする彼らは金品や食料を主に狙う。

 そう思っていたメルだったが――。


「そうか、女に飢えてるんだな!!」

「シュレムお姉ちゃんじゃないんだし……」


 シュレムの言葉にエスイルは思わずそう突っ込みを入れる。

 だが、険しい表情を浮かべたライノはメルの肩に手を置くと――。


「案外そうでもないのよ? 彼らは欲しいモノは盗むのお金も、食料も、異性だってね……それにあの子の見た目なら奴隷商に売ることだってできるわ」

「そ、そんな……」


 メルの脳裏に浮かんだのは攫われた時と捕らわれた時のことだ。


 そうか、そういう理由も――ん? でも……。


「若い女の人なら他にもいるんじゃ?」

「勿論だ、だが居なくなったのはうちの娘だけだ」


 そう言い切る理由は分かる訳もなくメルは首を傾げる。

 すると、フィッツはがっくりとうなだれたまま――。


「フィオと仲の良い子があの子を呼びに来たんだ。いつもならあの子が先に出ているのに……その子もタリムじゃ若く可愛いと評判だ。何故かうちの娘だけ」

「人数が少ないのか……確かに多ければそれだけ見つかる可能性も高い、時間をかけて一人一人攫って行くつもりだったのか? だとしてもそれなら魔物の所為に見せかけた方が楽だぞ……」


 リアスは何かを考えるように腕を組む。

 メル達も同様に思考するが答えが出るはずもなく――。


「とにかく、一度家に行って何か情報が無いか探してみよう?」


 メルはそう仲間達に告げる。

 するとフィッツとスタッドは慌てふためき。


「そ、そんな! 冒険者さんの手を煩わせるわけには!!」

「そ、そうだぞ、お嬢ちゃんこれはタリムの問題だ!」


 人が居なくなったというのに何を言ってるのか?

 メルは彼らに憤りを感じつつ口をゆっくりと動かした。


「もし、リアスが言っている通り盗賊野盗が相手なら危険です!」


 そう、タリムの腕利きはソーリオスに居る。

 多少は残っているだろうが、その残った人達まで借り出しては村の守りが薄くなるだろう。


「だ、だけどな?」


 先程までは娘を心配していたフィッツは蒼い顔をし、スタッドは困った様な顔をしていた。

 そんな彼らの様子に納得がいかなかったメルは口をとがらせ、不満そうに尻尾を一回振ると、それを目にしたシュレムは溜息をつき――。


「なぁ、娘さんが大変なんだろ? オレ達これでも強いんだぞ?」

「そ、それはリアスと共にいるんだ……それなりの実力はあるに決まってる……だけど、な?」


 なら何が不満なのか? メルは考え――答えに行きついた。

 そう、メルは腕輪を見せた……自分達が冒険者見習いとも言った。

 つまり、依頼をするにはそれなりの報酬を得る権利がある。

 勿論、メルにその考えはなかった……寧ろこの村で食料等を得るために立ち寄った訳だがそれも対価を支払うつもりだ。


「お、俺の家にはそんな冒険者さんを雇うような……」


 タリムは元々冒険者の街。

 それもメルン地方で冒険者になるならまずここに来るというほどの街だった。

 タリムの王が現れその惨劇の所為もあり、冒険者の街と呼ばれるのはリラーグになってしまったが、彼らにとって冒険者は金を払い雇う者達だというのは変わらないのだろう。


「…………猪」


 心無い冒険者ならそれでも報酬を得ようとする。

 ギルドの冒険者ならそれも多いはずだ。

 だが、メルは――。


「猪?」

「はい! すごく美味しかったです。元々その豪華にしなくて良いですって言ってたんですけど……貴方が獲って来てくれたと聞きました。それが報酬替わりじゃ駄目ですか?」


 報酬を気にするならもう既にもらったと言えば良い。

 無料が駄目ならば本来食べることはなかった昨日の食事だと言い張れば良い。


「だ、だけどな? あれは久しぶりの客だって聞いたから――」

「はい! それでも料金以上の食事をさせてもらいました。皆もそれでいいよね?」


 メルの問いに頷く仲間達に感謝しつつリアスと目が合う。

 すると――。


「今言った通りだ。報酬はもう貰ってる」

「それに女の子が困ってるかもしれないんだろ? それを助けるのが漢だってオレは知ってるぜ」


 この時ばかりはシュレムの言葉に誰も茶々を入れる事無く、メル達はフィッツ達の方へと向き直る。


「…………す、すまない、娘を探してほしい」


 大粒の涙を流しつつフィッツはメル達に向かい頭を下げる。

 そんな彼の様子を見て――。


「はい! 必ず見つけ出して見せますよ」


 メルは依頼を受けるのだった。

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