170話 タリムでの食事
タリムへと着いたメル達。
早速シュレムの武器を探すのだが、彼女にあった物は無かった。
しかし、直すことはできると知り、メル達は武具店の店主に頼むのだった。
宿へと辿り着いたメル達は先程の店主にお金を渡し、あらかじめ用意してくれていたと言う部屋へと向かう。
「あ、ちょっと待ってくれリアス達!」
そんな中、店主は笑みを浮かべメル達に近づくと――。
「さっき、フィッツの奴が猪を獲って来てな。夕飯それで良いか?」
「良いかも何も、さっきも言ったけど贅沢品は……」
「い、猪?」
確かに猪は食料としても有名だが、メルは口にしたことは無かった。
しかし、高級品や贅沢品という訳ではない。
だが、それはリラーグにおいてだ。
リラーグ近郊にはオークの住む森があり、そこでは猪が生息している。
しかし、このタリムおいてはリアスの言う通り贅沢品なのだろう。
メル達が通ってきた道には少なくとも猪がいなかったのだから……。
「メルが折角断ったんだから、普通の食事で良い」
シュレムはその味が気になるのだろう表情を崩しながらもそう口にした。
すると店主は――。
「いや、エルフの使者様の事は避けて久しぶりの客だと言ったら多めに貰っちまってね、とても一人じゃ食える量じゃない。手伝うと思って食ってはくれないか?」
リアスはその様子を思い浮かべたのだろうか? 笑みをこぼし――。
「あの人らしいな……そういう事なら俺は構わないよ。メル達は良いか?」
「う、うん……そうだね、そういう事でしたらいただきます」
断ろうにも折角の食材が勿体無い。
メルはそう考え答えると店主はほっとした様子で――。
「助かるよお嬢ちゃん!」
歯をむき出し豪快に笑い声を上げた。
その日の夜、出て来た料理にメルは驚いた。
彼女の予想としては肉だけが出てくると思っていた。
しかし、用意された物の中には野菜のスープやパン、果物もあり、下手をすれば他の街よりも良い物ではないか? と思える食事だ。
「うわぁぁ!」
出てきた料理に歓喜の悲鳴を上げたのはエスイルだ。
「お、おじさん?」
「豪勢ね……」
メルとしては歓迎されるのは嬉しくも、タリムの現状を知っているため引きつった笑みを浮かべてしまう。
しかし、その食事の良い匂いには逆らえなかったのだろう、彼女の尻尾は左右に揺れていた。
「いやぁ……皆久しぶりの客が嬉しかったんだろうな……あの後も色々な」
「は、はは、ははは……」
リアスもこれは予想外だったのだろうか? 乾いた笑い声を上げた。
「腐らせるのは勿体ないだろ? 全部を出したらとんでもない量になりそうだったからなこれでも抑えたんだが」
「それはそうだろうが、この量……食べきれるのか?」
目の前にある料理を見て最初は歓迎されても良いのではないか? と口にしていたシュレムも呆然としつつそう言葉を紡ぐ。
「若いんだ! これ位食べられるだろう」
無理だよ! 一行の心の中での叫び声は同じ言葉が思い浮かぶが――まさか下げてくれとは言えず。
互いに視線を通わせた。
「さ、冷める前に食べてくれ」
もうすでに作られてしまった料理を前にメル達は椅子へと腰掛ける。
「い、いただきます」
そう言ってメルは猪肉のステーキにナイフを入れると、そこからは肉汁と共に香草の良い匂いが鼻をくすぐる。
「うわぁぁ……」
多少の臭みがあると聞いていた彼女はその匂いに驚きつつも肉を一切れ口へと運ぶと――噛むたびに肉汁が溢れるだけではなく、丁度良い歯ごたえである事に驚いた。
「どうだ? 若い猪だったから肉が柔らかいだろう?」
メルが驚いている事に気が付いたのだろう、宿の店主であるスタッドは笑みを浮かべつつ尋ね。
「はい! 少し硬いと思ってました」
そう答えたメルは再び肉を口へと運んだ。
食事を済ませたメル達は満腹感からか眠気を覚え、部屋へと向かう。
その日はもう休むことにし、眠りへとついたのだった。
翌日、メル達は目を覚まし朝食を食べようと合流するとやはりそこには豪華と言っても良い食事が並べられており……
メルは申し訳ないと思いつつもその食事で腹を満たす。
丁度、食事が終わった時だろうか、宿の扉が開け放たれる音に気が付いたメル達は入口へと目を向ける。
「なんだフィッツ? 扉が壊れるじゃないか!」
息を切らし、駆け込んできた男性はフィッツと言うらしく彼は息を整える間もなく主人の元へと歩み寄る。
「娘が……フィオの奴が居ないんだ!」
その名前にメルとリアスはピクリと反応した。
確か昨日……村の入口で会った女の人だよね?
そう思いつつメルはリアスの方へと目を向けると彼は目を向けつつもコップの中身を飲み干した。
焦った様子もない彼の態度に首を傾げていると――
「お前……居ないってこの時間は薬草だの野草を採りに行ってるだろう? いつもの事だ……何度俺に言いに来れば気が済むんだ」
呆れた様に溜息をつきつつ主人がフィッツと言う男性にそう告げる。
すると、リアスも溜息をつき――。
「もしかして、いつもなの?」
「ああ、大体な……」
日常の事か、とメルが安堵したその時――。
「だけど、だけどな! いつもならない籠が家にある……道具もだ!! しっかりしてるアイツがそれを忘れるはずが無いんだ!!」
娘を心配する父の悲痛な叫びは宿の中へと響いた。




