168話 タリムの武具店
タリムへと辿り着いたメル達。
そこは酷い有様の村だった。
だが、人は力強く生きており……リアスの知り合いらしき少女に声をかけられたのだった。
しかし、リアスは用があると言いメル達と共にその場を後にした。
メル達はリアスの案内の元、タリムの武具店へと向かう。
「にしてもこんな村にまともな装備が売ってるのか?」
「シュレム!」
辺りを見回しながら声に出してそう言ったシュレムの名を呼ぶメル。
確かにタリムの村はまだ復興の途中であり、規模も大きくない村だ。
かと言って人が多いと言う訳でもなく、彼女の疑問は最もだった。
「リラーグに比べると遥かに質は落ちる。だけど、武器や防具は生命線でもある。粗悪って程ではないさ」
リアスの答えに訝しげな表情を浮かべたシュレムをメルは嗜めるように睨むと――。
「分かったよメル、言い過ぎた……悪かったよ……」
「もう! 駄目だよせっかく助けに来てくれたんだから!」
そう、タリムの住人はわざわざソーリオスまで足を運び、街を守る約束までしてくれたのだ。
メルにとっては祖母やその街の住人の恩人であり、彼らの故郷をこんな村扱いするのは間違っていると考えていた。
確かにボロボロの村だ。
しかし、先程の女性以外は何処か優しい顔でリアスを迎えていた。
そんな中、一人の老人がリアスへと近づいてきた。
「リアス、久しぶりじゃないかその様子だと元気なようだな」
彼はそう言うとメル達の方へと目を向け、皺だらけの顔に笑みを浮かべた。
「そちらのお嬢さん達は仲間かい?」
「ああ、スタッドさんその通りだ」
リアスは老人に答えるとメル達へと向き直る。
「こちらはスタッドさんだ。今日は彼の宿に世話になる予定だ」
「宿屋の主人さんなんですか、私はメアルリース、メルって呼ばれてます」
メルを始めとし宿の主人スタッドへと名を名乗る一行。
すると彼はうんうんと頷く。
「それにしてもリアス、美人さんを二人も連れてどっちか良い子なんじゃないか?」
「い、いや……そう言われてもな……」
「それにそっちのお嬢さんはエルフの使者にそっくりな髪の色だ。お前は見えてなかっただろうが、同じ髪の色で同じ優しそうな瞳だったよ」
間違いなく母の事だ。
メルはその事を察すると顔を思わずほころばせる。
そんな様子を見てリアスも微笑むと……。
「似てるも何も、メルはユーリさん……エルフの使者の娘だ」
「…………な、なんだって?」
宿の主人は目を丸めメルをじっと見つめる。
「それだけじゃない、シュレムはどうやら一緒に来てくれた人の娘らしい」
「おう! 親父は名乗ってないはずだけどな!」
どこか誇らしげな笑みを浮かべた少女を見て老人はますます目を見開き丸くする。
そう、彼は見たことがあったのだ。
シュレムという少女のようにその誇らしげな顔でエルフの使者の事を話す男を……。
「こりゃ、たまげた……他人でここまで似る事はないだろう……後で来るんだろ? 宿代は要らないよ、それよりも御馳走の準備をしなくちゃならないな!」
彼はそう言うと慌ててその場から去ろうとし、メルは慌てて彼を止める。
「い、いえ、良いんです。宿代は払いますし、普通の食事で構いません!」
「そうはいかない。エルフの使者はこの街を救ってくれたんだ。その娘が訪れたんだ村を上げて歓迎しなくちゃならないだろ?」
メルとしても母達に対し、そうするのは構わなかった。
だが、メル達は違う――。
「良いじゃないかメル!」
「駄目だよ! だってこの村の事聞いたでしょ?」
「そうね、メルちゃんの言う通りだわ」
ライノもメルへと賛同しエスイルもまた頷くと――。
「それに、お礼だったら僕達はもう、してもらってるよ?」
「何もしていないよ坊や、これからさ……」
「いや、スタッドさん、先日村の人が何人か旅だっただろ? それメルのお婆ちゃん……ナタリアさんの故郷を守る為なんだ。俺としても歓迎したいとは思うけど……」
「そこまでしてもらったんだから十分です。これ以上その……宿代免除とかは悪いので……」
メルは頬をかきながら困った様に笑う。
宿の主人もまた困ったと腕を組み顔を傾げるのだが――。
「仕方ない、そう言われたら無理に歓迎してもこちらのわがままになってしまうな、分かった」
彼の言葉にホッとしたメル達。
しかし、一人だけ――。
「お、おう……」
納得のいってなさそうな返事を返したのはシュレムだった。
「それじゃスタッドさん、俺達は武具店に用があるからまた後で」
「失礼します、後でお店の方に向かいますので」
メル達は宿屋の主人に別れを告げ、その場から去る。
少し歩いた所でシュレムは複雑そうな表情を浮かべた。
「素直に歓迎されてよかったんじゃないか?」
「そう言っても、タリムを救ったのはママ達で私達じゃないよ。だから、もしお爺ちゃんが言った事をするならママ達が来た時の方が良いと思うの」
幾ら家族でも、私は何もしてないんだから――。
そう考えるメルの言葉にシュレムは溜息をつきながら答えた。
「メルが思うんじゃ否定はできないな……分かった御馳走は諦める」
「……うん」
残念そうな彼女を見てメルは若干悪い事をしたと思いつつも頷き笑みをこぼした。




