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163話 爪痕の残る村

 ソーリオスから旅立ったメル達。

 向かう先はタリムと言う村だ。

 その前にはかつてタリムの王が滅ぼしたトーナと言う村がある。

 魔物の住処になってるのでは? とメルは心配するが果たしてその村は今はどうなっているのだろうか?

 メルの様子を心配しつつ進む一行。

 彼女達の目の前には先程の話に出てきたトーナ村跡地が見えてきた。


「メル……」

「な、なに?」


 先程の話からメルの様子を特に気にかけていたシュレムは彼女の肩に手を置き――。


「もう、終わってるんだ。責任はユーリさん達が取った……」

「分ってる……」


 小声で伝えられた事はメル自身分かっていた事だ。

 しかし、無関係ではない……タリムの王……彼の所為で傷ついたどころか亡くなってしまった人も居るのだから。


「……もしかして、メル」

「ど、どうしたの!?」


 リアスに声を掛けられ彼女はびくりと身体を震わせる。

 今の話を聞かれたのだろうか? そう警戒する彼女だったが……。


「ユーリさん達が助けに来るのが遅かったと思ってるなら、それは違う……」

「え?」

「タリムの王は死体を操ってたんだ、あんなの何の対策も無しに戦える訳が無い」


 リアスに話が聞かれていなかったことにホッとしたメル。


「でも――」

「それに感謝こそしても恨むやつは居ない、エルフの使者とまで言われる人なんだからな」


 彼はそう言うが、メルは母達が不死者と呼ぶ魔物に対しては対策は出来ていたらしい事は聞いていた。

 しかし、タリムの王の対抗策は無く、その為タリムに向かうのに時間がかかったと言うのも知っている。

 だが、メルが落ち込んでいる理由は別にあるのだが――。


「それよりもトーナ跡地だ。魔物が居るとは聞いてないが……」

「ええ、警戒はしていきましょう? エスイルちゃんもちゃんと気を付けるのよ?」

「うん!」


 そんなメルの意識を切り替えさせるためだろう、仲間達は目の前の廃村へと意識を向ける。


「メル! 魔力は十分か?」

「あ、うん……」


 シュレムの言葉に頷いた彼女はようやく顔を上げる。


「この先何があるか分からない、魔力は温存してくれ」

「分かった」


 今度はリアスに注意を促され、再び頷いたメル。

 その瞳が映すのは嘗て母が救ったと言うノルドの故郷だ。


「……これが、トーナ村……」


 タリムの王と呼ばれた人はこの世界を全部こうしようとしてたの?

 もし、そうだとしたら……本当になんでユーリママの家族が……こんなひどい事を考えられるの?


 岩に刻まれた爪の後、雨風にさらされ腐る前からへし折れていたであろう古木。

 アルムも酷かったが……トーナは当時の惨状が見て取れるのだ。


「ボロボロだ……それに何かの骨? があるよ?」


 エスイルが指を向けた先には何かの骨がある。

 それを見てメルは不安そうにリアスへと瞳を向けるのだが――


「あれは昔からあるんだ……ずっと残ってるから不思議ではあるが、何の魔物かまでは分かってない。もしかしたらタリムの王の配下だったかもしれないとは聞いた事がある」

「あ、あんな大きな魔物が人に従ってたって事?」


 エスイルは驚きの声を上げるが無理はない。

 リラーグの龍デゼルトはユーリが実際に戦い負けを認めさせた事で従った。

 しかし、それはドラゴンと言う魔物が賢いからこそ出来た事だ。


「タリムの王は自分で魔物を作っていたって聞いたよ、だからこそ自由に操れたんだと思う」


 だが、メルは聞いていた。

 母から……タリムの王は合成魔獣と呼ばれるキメラと言う魔物を生み出していた事を……。

 そして、その材料として人を使っていた可能性があると言う事も……。


「とにかく、魔物は居なさそうだよね?」


 メルは大きな骨に怯えつつも辺りの様子を探る。


「僕も何も聞こえないよ……でも――」


 エスイルは不安そうに呟いた。


「大丈夫だ、メルも居ないって言ってるんだから、な?」


 リアスは不安そうな少年にそう告げる。

 だが、メルも不安を……いや、疑問を感じていた。


 魔物が居ないのは確か、だけど……。

 それにしては何も居なさすぎるような? 建物が壊れて小さな隙間とかあるし、そう言うのが好きな動物ぐらいなら居ても良いはず。

 なのに、何も……聞こえない、でも……。


『メル! 何か居るよ!!』


 シルフは何かが居る……そう口にしたのだ。

 しかし、メルとエスイルには何も聞こえないし匂いもしない……精霊であるシルフが嘘を言っているはずがない……一体なにが起きているのか? そんなメルの疑問……その理由はすぐに明らかになった。


 メル達が魔物の骨を横切った時――その陰からなにかが飛び出して来たのだ。

 気配も無く、精霊も気が付かない理由は分からなかったがその何かはメルを狙ったのだろう――。


「キャア!?」


 彼女は短い悲鳴を上げ、衝撃を感じた右腕を擦る……。


「え? え……?」


 だが、そこにはなにも居ない。

 そう何も見えないのだ。


「メル! どうした!?」


 リアスは彼女があげた悲鳴に驚き、すぐに駆けつける。

 そんな彼にメルは慌てた様に声を張り上げた。


「何か居る! 魔法で透明になってる!」


 一瞬戸惑っていた彼女だったが、すぐにそれが魔法クリアトランスの影響だと判断し叫んだ。


「そんな事よりメルは大丈夫なのか!?」


 シュレムが盾を構えつつそう口にするとメルは頷いた。


「大丈夫! それよりも――」


 今は相手の姿を……魔法を解かないと!!


 メルは状況を打破するため、詠唱を口にし始めるのだった。

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