162話 廃村トーナへ
ソーリオスにはタリムとリラーグの強者が集まった。
話し合いも済みこれでもう大丈夫だろう。
メル達は旅を続ける為、曾祖母イリアに見送られ街を去るのだった。
ソーリオスを後にしたメル達は森を抜ける。
途中魔物に襲われはしたが、例の羊の魔物は現れなかった。
「あの魔物大丈夫かな?」
昨夜の食事の時にメルはマリーへと羊の魔物の事を伝えたら、彼女は大丈夫だと笑っていたが心配な物は心配だ。
そう思っていると――。
「マリーさんが居るんだぜ? 魔物の方が逃げていくって」
シュレムはそう言うとぶるりと身体を震わせた。
「考えただけで怖い」
「シュレム、マリーさんは優しいよ?」
メルは苦笑いしつつそう伝えると、エスイルも頷く――。
しかし、シュレムはそう思わないのだろう左右に首を振って否定をした。
「あらあら、あのご婦人が苦手なのね」
「苦手って特に怒ったりする人じゃなさそうだぞ?」
そんなシュレムの態度にライノは笑い、リアスは疑問を浮かべる。
すると、彼女は――。
「いや、怖いのなんのって! オレとエロ師匠が何度追い掛け回された事か!!」
追い掛け回されるとはどういう状況だろうか? メルは疑問に思いつつ彼女に問う。
すると、シュレムは何故か腕を組み、誇らしげに胸を張る。
年相応……よりも大きく育っているその胸を見せつけられた様でメルは少し不満に思いつつも彼女の言葉を待っていると――。
「若いねぇちゃんに声をかける修行だ!」
「それ修行って言わないよね!?」
ただの迷惑行為だよ! メルは喉まで出かかった声を押さつつもそれだけは口にしてしまう。
すると、何故かまだ誇らしげなシュレムは――。
「因みに師匠よりオレの方が勝率がある!」
「それただ単にシュレムお姉ちゃんが女の子だったからじゃ……」
男性に突然声を掛けられるよりは女性に声を掛けられる方が警戒も薄いだろう。
エスイルはその事を的確に告げる。
「言っておくがエロ師匠の言う事には紳士的に! 引き際を間違えたらいけないんだぜ? いいか? あくまで紳士的、しつこくなっちゃいけない」
「いや、紳士的と言われてもそれ以前にメルが言った通り修業でも何でもないって……」
始めから呆れていた様子のリアスだったが、耐え切れなかったのだろう……。
何処か疲れた声でそう口にすると、ライノは笑みを浮かべたままシュレムへと告げた。
「いい? シュレムちゃん、この旅ではそんな事しないでね?」
「なんでだ? 情報収集に役立つぞ!」
確かにそうだけどっとメル達は知らず知らずの内に同じ事を考える。
だが、それはあくまで役立つだけで情報収集が目的ではなさそうだと言う事も分かり、そもそも自分達は見習いとはいえ龍に抱かれる太陽の冒険者だと考えたメルは酒場に泥を塗る訳にもいかないと思い。
「シュレムお姉ちゃん、その……情報収集は酒場とかでも出来るから、ね?」
シュレムへとそう伝えた。
「仕方ないな、メルがそう言うなら」
納得いかないようでも約束してくれたことにメルは安堵した。
そんな話をしながらメル達はタリムへと向かう為、山道を進む……。
その先には昔トーナと言う村があったはずだった。
しかし、その村は遠い昔タリムの王によって滅ぼされた……同じ末路を送ったのがマタルラガルドの住処になっていたアルムだ。
「ね、ねぇ……リアス」
マリーの住んでいた村でもあったアルムの惨状を目にしたメルは不安を覚えリアスの服の裾を弱々しく引っ張る。
すると、首を傾げつつリアスはメルの方へと向いた。
「どうした?」
「トーナには魔物、住み着いてるのかな?」
「そう言えば飛んで行った時には何も見えなかったけど、どうなのかしら?」
ライノもその事が気になったのだろう、リアスの答えを待つ。
「いや、魔物が住み込んでるなんて話は聞いてないな、もしそうなったらタリムが危ないからな」
「タリムがって……確かタリムとその何とかって村の間には森があるんだろ? ナタリアさん達が小さい頃言ってたぞ!」
メルはシュレムの言葉でその事を思い出した。
これからその街を横切る必要があるメル達とは違い、森があるならそこに住む魔物を恐れたりするかもしれないからだ。
事実、タリムとトーナの間の森にはドレイクバードと呼ばれる魔物が生息しているらしく、ドレイクバードは群れをなすと恐ろしい。
いやドレイクバードに限らず群れと言うのは怖いものだ。
「森ならタリムの王が焼き払ったよ……より効率的に闇の魔物を放つためにな、だから今は何も無い」
「そんな……」
今は亡き暴君は何を考えていたのだろうか?
精霊の住処でもある森を焼き払えば当然それだけ世界を傷つける。
「ごめん、なさい……」
「――? メルが謝る必要はないだろ?」
「……ぁ……うん」
思わず出た言葉にリアスは笑って答える。
それに頷いたメルだったが――。
謝る、必要は……あるよね。
だって、タリムの王はユーリママの家族だって言ってた。
だから、怒りに行くって……それってつまり、私にもその血が流れてるって事だよね……。
母達がタリムへと旅だった日に告げられたその言葉を思い出しつつ、メルは尻尾を丸める。
いや、思い出したと言うには違うだろう、考えない様にしてたのだ。
「ほら、そろそろトーナが見えてくる。それに下り坂だから、しっかり前を見ておいた方が良い」
リアスに促されメルはようやく顔を上げる。
しかし――。
なんで、ユーリママはあんなに優しいのに……。
タリムの王と呼ばれた人はあんなひどい事が出来たんだろう?
そんな疑問を感じつつ、悲しげな表情を隠す事が出来なかったのだった。




