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161話 話し合い

 マリー達はメル達が心配したようにはならなかった。

 凄腕の冒険者に驚きつつ、メル達はタリムからの援軍を待つ。

 暫くしてライノが連れてきたタリムからの使者ボルグの言葉にメルは安堵するのだった。

 その後、すぐに領主はその部屋へと現れメル達を交えた話が始まった。

 それはメル達が話した内容と同じものでソーリオスは野菜などをタリムへと渡し、タリムはソーリオスを守る者達を――。

 イリアから告げられる条件にボルグは首を縦に振りかけるが、少し体を前のめりにするとイリアへと尋ねた。


「領主殿、此方としては食料を分けて頂くのは大変ありがたい。だが、この街にそれほどの蓄えはあるのか? それに――」


 彼はリラーグから来たマリーの方へと目を向ける。


「タリムは血の気の多い者も居る。守ってやっているという意識が生まれる事もあるだろう、そうなったらこの街は搾取される側になってしまうかもしれない。ならばそちらのご婦人の来たリラーグに助けを求めた方がいいのではないか? 勿論、それまでは責任をもって手を貸させて頂こう」

「確かにそうだね、でもそれなら――この街の人間鍛えちまえばいいだけじゃないかい?」


 マリーはそう言うとメルの方へと向く。


「マリーさん?」

「メルの事だからもうシルフに頼んでるんだろ? でもそっちのタリムの奴のように別口で連れてきた連中も居る。と言う事はリラーグには別の事も頼もうとしたんじゃないのかい?」

「!! うん! 実はお願いしたい事があるのっ!」


 メルはマリーの言葉に笑顔で答えると戦える者を育てて欲しいと告げる。

 シルフが伝える前に人が来てしまった事には驚いたのだが、マリーが来てくれたことは幸運だった。

 何故なら彼女は母フィーナの師でもある。

 人を育てるにはこの上ない人だろうとメルは考えたのだが――。


「いや、マリーさんは止めた方が良くないか?」

「何で?」


 シュレムに反対されメルは不機嫌そうに頬を膨らませつつ問う。

 すると、頭をかいたシュレムは恐る恐る口を開き――。


「だって、メルは聞いた事無いか? フィーナさん武器だけ貰って放置されたとか聞いたぞ!?」

「もしもの時の為に近くには居たさ、それにあの子は追われる身だった……悠長に育ててる暇なんて無かったんだよ。あたしもゼルも勿論ナタリアもね」


 当時の事を思い出していたのだろうか、遠い目をするマリーに声をかけたのはボルグだった。

 彼は聞き覚えのある名前に反応し――。


「ゼル? ゼルだって!? もしかして月夜の花のゼルの事か!?」

「ん? ああそうだよ」


 口元を歪ませ笑うマリー、嘗てタリムにあった月夜の花と言う酒場。

 そこの店主であるゼルはメルの祖母であるナタリアとここに居るマリーそしてゼルの弟であるゼファーと組んでいた冒険者だった。

 だが、タリム崩壊の時ゼルは仲間であるナタリアから避難するように手紙で言われたのだが、それを聞かず命を散らした……。

 そのお陰もあってメルの母ユーリと祖母ナタリアはタリムへと侵入する手段を得たのだが――。


「全く、あの馬鹿話を聞かないだろうって思ったけど、本当に残るとはね」


 その言葉に眉を吊り上げたボルグだったが、すぐにその表情を崩した。

 それもそうだろう、マリーは笑う事無く唯々悲し気な顔でそう言っていたのだ。


「湿っぽくなっちまったね! とにかく戦力の強化をしてほしいって事だね、魔物と戦う為に」

「う、うん」


 メルは頷くが、マリーの事が心配なのだろうじっと彼女を見つめると――。


「こらメル! そんな顔をするんじゃないよ! 大丈夫、そこのタリムの奴もゼルの事を知ってるんだ。なら話が早い」


 彼女は恐らくメルの視線の意味に気が付いているはずだ。

 しかし、いつもと変わらない笑みを浮かべた女性は――。


「ここはナタリアの故郷、ゼルの仲間の故郷だ……タリム救った切っ掛けになった男の仲間のね」


 マリーはメルの頭に手を乗せ、撫で始めるとメルは気持ちよさそうに目を細め尻尾を揺らす。


「だから、何か起こすようならこの場にいるあたし達が取っちめてやるよ! メル、アンタ達はやることあるんだろ? しっかりやりなっ!」

「うん! ありがとうマリーさん!!」


 心強い言葉にメルは嬉しく思い、声を弾ませる。

 そんなやり取りを見ていた他の者達だが、一人ゆっくりと頷くと……。


「そうか、此処はナタリア殿の故郷だったか……そういう事なら、有事の際には私も強気に行こう、友の友人であり恩人の故郷を守るのは当然だ」


 ボルグは同口にした後、立ち上がるとイリアの元へと向かう。

 そして彼女の前で腰に身に着けた剣を外し、片膝をつくと――。


「領主イリア殿、私からもお願いしたい、ぜひ手を貸させてくれ」

「そんな、お立ちになってください。こちらは守っていただく、私達は食料の提供を……お互いに対等な立場なのですから」


 こうしてタリムとソ―リアスとの同盟は成された事にメル達はほっと息をついた。

 そんな彼女達にイリアは視線を向け――。


「メルちゃん、それに皆さんもありがとうございます。ゆっくりしていってください」


 メル達は彼女の好意に甘え、その日は屋敷で休ませてもらう事にし翌日タリムへと向かう事にした。







 そして、旅立ちの朝はあっという間に訪れた。

 メル達の新たな旅立ちの日にイリアやライラ、そしてマリー達にタリムから来たボルグ達も門の前で見送ってくれる為に集まっていた。


「最初の旅立ちの時は何も言えなかったからね、気を付けていくんだよ」

「この街はきっと守り切ってみよう、恩人達に恩を返す機会をくれた事に感謝するよメアルリースさん」

「いえ、こっちこそ、ありがとうございますっ! 街をお婆ちゃんをお願いします」


 メルは頭を下げ彼に頼み込む。


「何やかったい別れやなぁ……頼んだで! だけでええんとちゃうんか? まっ! マリーの姉さん、ワシらにこいつらがおるんや、大船に乗った気ぃで大丈夫や」


 ゼッキの言葉は相変わらずよく理解が出来なかったのだが、恐らくは自分達が居るんだから大丈夫だと言っているのだと言う事は理解出来たメルは頷く。

 そんな中、リアスはメルにそっと耳打ちをしはじめた。


「な、なぁメル……昨日も思ったが何か特徴的な喋り方する人だな?」


 ゼッキの事が気になったのだろう、それもそうだ、彼の喋り方は特殊な喋り方なのだ。

 どうやら母ユーリとナタリアの知り合いだったと言うのだが……。


「聞こえとるで……ま、これも個性やそれもワシ一人しかおらんのやし……まさに特別、やろ?」


 赤い鬼はニヤリと笑うと最早慣れているのだろうかマリー、カッツそしてユニは笑い始めた。


「それよりも、気ぃ付けて行けやお嬢ちゃん、他の奴らもやこんな所で死んだらいけん、必ず帰って来るんやで」

「良く分からないが、分かった! (メル)はちゃんと守る」


 なんか私の名前を呼んだ時に別の意味が入ってたような気がするけど……。


「と、とにかく怪我だけはしないでね?」

「そうですよ、ユーリさんが傍に居る訳じゃないんですから、エスイルは特に小さいんだ」

「ぼ、僕だってもう役に立てるんだ! でも、分かった怪我はしない様にする」


 メルもライノも居る、以前よりは怪我をしても対処が出来る。

 だが、危険が無いわけではない。

 その事を理解しているのだろうからこそ、エスイルはそう口にした。


 メルはそんな弟の頭を撫でつつ、その場に居る皆へと再び目を向ける。


「ディーネに心配させたら駄目だよ」

「ライラさん?」

「小さな怪我でも何が起きるのか分からないからね」


 ライラの悲しげな瞳の意味を知るメル達は返す言葉も無く、同じように目を伏せる。

 ゼッキも何かを感じたのだろう、何も言わなかった……しかし――。


「メルちゃん」


 イリアはメルへと近づき、ゆっくりと抱擁する。


「またこの街に足を運んでください、無事で元気な姿をもう一度――」

「もう一度じゃなくて何度でも顔を見せに来るよお婆ちゃん」


 少し、寂しいと感じる言葉を耳にしたメルはそう返す。

 暫く続いた抱擁だったが、やがてイリアはメルの身体から手を放し――。


「行ってらっしゃい、メルちゃん」

「うん! 行ってきます!」


 曾祖母へと別れを告げたメルは仲間達へと向き直る。


「行こう、皆」


 そして、彼女の言葉に頷いた仲間達と共にタリムへ向け森の中へと入るのだった。

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