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159話 龍に抱かれる太陽の冒険者

 溜まっていく疲労。

 そんなメル達の元に何かが近づいてくる足音が聞こえる。

 魔物ではない、そう判断したメルはそれが人の足音だと気付く。

 そして、彼女達の目の前に現れたのはメルの実家でもある酒場「龍に抱かれる太陽」の冒険者だった。

 リラーグから来た四人の冒険者達。

 頼もしい仲間にメル達は喜んだのも束の間……。


「メル達は街の中に入ってな」


 マリーはメル達にそう告げた。


「でも!」

「でも、やないで……確かにここまで街を守ったのは褒められる……せやけど、お嬢ちゃんは顔色悪いし、坊ちゃん達は疲れた顔しとる。しっかり休んどき」


 確かにメルの目から見てもリアス達は警戒と戦闘により、その顔に疲労が目に見えていた。

 しかし、だからと言ってこの場を離れる訳にはいかなかった。


「ここは俺達に任せてください」


 カッツの言葉に笑みを浮かべ頷いたユニ。


「ほら、皆こう言ってるんだから、休んで置いた方が良いよ?」

「……ぅぅユニさんまで……わ、分かった」


 メルはおずおずと頷き尻尾を垂らす。

 そんな彼女を見てだろう、シュレムは喰いかかる様に一歩前へと踏み出した。


「でもよ! 俺達も――」

「何か言ったかい?」


 シュレムの答えに鋭い視線を向けたマリー、そんな彼女にシュレムは言葉を失い。


「何でもない、何でもない!」


 慌てて出た言葉と共に首を左右に振った。

 マリーはそれを見て満足そうな顔を浮かべ――。


「そうかい、それなら良いんだ」


 そう言った後、メルに向き直ると急かすように門の方へと押す。


「ほら、街の中に入ってな」


 当然そこには閉じた門がある訳だが、彼女達のやり取りの一部始終を見ていたのだろう門兵はソーリオスの門を開き、メル達を受け入れる。


「マ、マリーさん! ちゃんと入るから押さないで!?」


 メルは転びそうになり、そう言うがマリーは心配からかそれを聞き入れる事無くメル達を次々に街の中へと導いた。


「マリーさん!」


 閉じかける門に気が付いたメルは振り返った彼女はマリーの名を呼ぶ。


「なんだい?」

「気を付けてくださいね!」


 そんなメルの言葉に笑い声を上げた女性は――。


「まだまだ、メルに心配されるような歳でもないよ!」

「いや、マリー姐さんは結構な――」

「何か言ったかい?」


 ゼッキはマリーに睨まれると豪快に笑い。


「言った言った、歳重ねた良い女や! ってなぁ!」

「調子の良い……」


 マリーは呆れたように溜息をついた後に微笑むと――。


「危なくなったら呼ぶよ、だからそれまで休んでおきな」


 そんな優しい言葉にメルは頷いた。


「お言葉に甘えさせていただきます」


 リアスの丁寧な言葉と共に門は閉じた。


「魔物が近づいて来た気配はないから……マリーさん達もすぐに戦うって事はないと思う、だけど危険なのは変わりがないし、言われた通り休もうか?」


 メルはそう言うとその場に座り込むのだった。






 どの位の時間が経ったのか、メル達がようやく回復してきた頃……門の向こうから、マリー達が魔物達と刃を交える音が聞こえる。

 すると門の上から、慌てて駆けて来た二人は息を切らしながら――。


「お、おい! あの人達はなんなんだ!」

「凄い奴らだぞ!?」


 なんなんだと言われようがメル達には知り合いの冒険者としか、言いようが無く首を傾げつつ門の上へと向かう。

 そこで見た物は……。


「うわぁ……」


 引きつった笑みを浮かべたエスイルの顔が物語る様にメル達の瞳に映ったのは冒険者達の勇敢な姿でもあり、一方的な虐殺でもあった。


「凄い……」


 メルも実際に冒険者達が戦う様は見たことがある。しかし、マリー、カッツにユニは歴戦の冒険者ではあるが、それについて行くのは新人ゼッキだ。

 彼もまた三人に負けず劣らずの実力の持ち主だった。


 やっぱり、あの時は手加減をしてくれてたんだ……。


 初めて出会った時を思い出し、もしあの時本気を出されていたらと思いつつも今は心強い仲間である事に感謝する。

 攻めて来ていた魔物達をあっという間に殲滅した彼らはメル達の視線に気が付くと手を上げ笑みを浮かべた。


「はは、ははは……どうやら俺達が戦う必要はなさそうだな」

「そ、そうみたいだね」


 流石はマリーさん達だよ……やっぱり本物の冒険者を目指すならあれぐらいじゃなきゃダメだよね。

 だけど、何て言ったら良いんだろう、皆危ない様な……。


 冒険者達の戦う様を見てメルは不安を感じた。

 恐らくはいつもはユーリが居るからなのか怪我を恐れる様子が無いのだ。

 下手をすれば死ぬかもしれない、その危険を全く考えていないのでは? メルの頭に浮かんだ言葉はそれだった。


「リアス、その……お願いがあるの」

「……どうした?」

「メルの願いだったらオレが聞くのになんでリアスなんだよ!」


 シュレムは少し怒ってはいたが、メルは小さく笑みをこぼすと言い直す。


「ごめん、リアスもシュレムもエスイルも皆にお願いがあるの」

「僕にも?」


 首を傾げる少年の頭を撫でメルは頷いた。


「私の魔力が戻ったら、マリーさん達と交代したい……多分、ユーリママと一緒に仕事をし続けてたから無茶が普通になってるんだ……」

「そうか? そんなに気になる戦い方じゃ無いぞ?」

「いや、確かに戦い方が強引だ……あれじゃ事故が起きてもおかしくはない」


 リアスはそう言うとメルの肩へと手を置く。


「回復したら向かおう、だけど無理はしないでくれよ?」

「分ってる、ありがとうリアス!」


 彼に対しメルは笑みを浮かべた。

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