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158話 防衛戦は続く

 魔力不足により魔法を使うことが出来ないメル。

 彼女に代わり、リアスが戦う……見事に魔物を追い返す事には成功した。

 だが、当然疲労は蓄積していく果たして応援が来るまで持つのだろうか?

 メル達がソーリオスの門の前へと立って早数刻は過ぎた。

 その間に押し寄せてきた魔物達は数知れず……。


「嘘だろ……」

「あれが……外の人?」


 そんな声はメル達の頭上から聞こえた。

 それはこの街ソーリオスの門兵の物だった。


「驚いてるけど……」


 メルは疑問を浮かべた。

 襲ってくる魔物はあの二足歩行の山羊以外は脅威的な魔物がいなかったのだ……とはいえ、格下の相手に負けて死ぬこともある。

 旅をしている以上その事はメル達は十分に理解している。

 だからこそ、前で戦うリアス達は弱い魔物ですら手を抜かずに戦っていたのだが――。


「あれが実力の差か……」


 その一部始終を見ていた二人の門番は自分達との差に驚いた様子だった。


「メル、エスイル、魔物は来そうか?」


 そんな中、リアスに問われメルは首を振る。


 臭い……はもう駄目、打撃だから血はそこまで出てないけど死体を焼いた臭いでもう分からない。

 音はエスイルの方が聞き取りやすいけど……。


「エスイルはどう?」


 そう考えたメルは弟に目を向け尋ねる。


「うん、こっちに向かって来るような音は聞こえないよ」


 エスイルは耳を立てつつそう答え、リアスは腰を下ろした。


「一先ずは安心って所か……シュレム、少し休もう」

「ああ……」


 シュレムは森を睨みながらその場で座り込む。

 メルはそんな姉を見て頼もしいと感じつつ、リアスへと目を向ける。


「タリムの人は後どれぐらいで来るんだろう……」

「……昔、トーナって村があった時にはその村までは日が落ちる前に行けたらしいからな……今日中にはついてくれるとは思うが……」


 後もう少しって事かな? 私も魔力さえ戻ればまともに体が動くのに……。


 メルは戦えない事を歯痒く感じつつも耳を利かせる。

 エスイル程ではなくとも少しは役に立とうと考えての物だ。

 その時――。


「ん?」


 メルの耳に何かが聞こえ、それは当然エスイルにははっきりと聞えたのだろう。


「何か来る……」


 少年の言葉にリアスとシュレムは立ち上がると武器を構える。


「メル! エスイル! 魔物か!?」


 シュレムは森を睨んだまま訊ねる。


「分からないでも……」


 足音が少ない? 今まではもっと大きな群れで来てたのに……。


 メルは瞳を閉じ、集中する。

 魔物にしては歩みがゆっくりなのだ。


 二足歩行……でも山羊の魔物より大きな音じゃないずっと小さい。

 でも、この足音……魔物や動物じゃない? これって……もしかして!!


「人だ……タリムの人が来てくれたんだ!」

「タリムの人だって!?」


 喜ぶメルに対し、リアスは明らかに訝しむ。


「何だよリアス、何でそんな顔してるんだ?」

「いや……早すぎる……」


 メル達には分からなかったがリアスの言う通り、早すぎるのだ。

 いくらライノが空を飛んでいったとしても、帰りは歩きだ。

 それなりの時間がかかる。

 しかし、メル達の呼んだ龍に抱かれる太陽の冒険者でもないだろう……もし、そうであれば空の様に蒼い鱗と雲の様な白い膜が張られた龍、デゼルトが来るはずだ。

 つまりここに迫っている足音はそのどちらでもなく――。


「今まで結界に覆われてた街だ……一体誰が……」


 リアスは緊張をした様子で森を睨む。


「タリムの人じゃないのだってリラーグの冒険者は違うよ! ……こんなに早く着くはずが……」


 ――ない。


 メルがそう言葉を続けようとした時――。


「それがそうでもないんや、お嬢ちゃん」

「……え?」


 メルは聞き覚えのある変な言葉遣いに反応した。

 まさか――っと彼女が森の奥へと目を向けると其処には赤い鬼がのそりと顔を出し、メル達全員へ視線を向け笑う。


「しっかしまぁ! ようガキだけで守り通したなぁ! (あね)さんも見習いなんて言わずにいっぱしの冒険者を名乗らせたらええんや!!」


 彼はそう言うと豪快に笑いだし、そんな彼に指を向けたリアスは……。


「メル達の知り合いか?」

「いや、オレは知らねぇ……誰だ? このおっさん」

「シュ、シュレム!? 失礼だよ! その人は――!」


 メルは慌ててシュレムへと注意すると赤い鬼はその笑い声を更に大きくした。


「ええ、ええ気にせんでええ……ワシの名前はゼッキ、お嬢ちゃんとこの酒場に世話なってる冒険者や」

「なんだって……!?」


 シュレムは初耳だったのか、驚いた声を上げた。

 一方メルは足音が複数あったのに彼だけ来た事を疑問に思い、訪ねようとしたところ。


「こらゼッキ! 仲間を置いて行くんじゃないよ!」

「その声……」

「げ……」


 聞こえた声にメルは声を弾ませるが、シュレムはあからさまに嫌そうな表情を浮かべた。

 そして、ゼッキは笑みを張り付けたまま後方へと振り返り――。


「せやかて、何か焦げた臭いしとったろ? そりゃ姉さんに頼まれた街なんや! 心配になって駆けつけるのは当たり前やろ?」

「喜々として魔物かもしれないって走って行っていましたよね……」

「あはは、ゼルさんが聞いたら笑いそうだけど、ナタリアさんじゃ怒るよ? きっと……」


 ゼッキに続き現れたのは大きな斧を持つ恰幅の良い女性。

 そしてまだ若い男女だった。


「そう言われるとそのゼルっておっさんには是非とも一回は会って見たかったのう……」

「よしてくれ、止めるのはアタシとナタリアなんだ」


 溜息交じりの女性はその瞳をメルへと向けるとすぐに少女の元へと駆け寄り優しそうな顔を浮かべ抱きしめる。


「メル、こんな所に居たんだね、それにしても良かった! どうやら元気みたいだね」

「マリーさんも!」


 彼女の名はマリー、嘗てメルの祖母ナタリアと共に冒険し、母フィーナの師でもある人だ。

 一度は引退したものの今はその実力を買われ、龍に抱かれる太陽の冒険者としても活躍している。

 そんな彼女は昔のナタリア、フィーナ……そしてユーリの面影がある少女メルの事を大事にしてくれる一人でもあり――。


「で、アンタはなんで黙って出て行ったんだいシュレム?」

「あ、いや……その……」

「まったく! なんであの真面目なドゥルガとシアの間に生まれてこう突発的なのかね? シウスの方は大真面目だっていうのに!」


 会う度に説教をされる羽目になるシュレムはどうも苦手な人物だった。


「ま、まぁマリーさん、俺達がここに入れたのも彼女達のお蔭かもしれませんし」

「そ、そうだよ! それにシュレムちゃんの事だからメルちゃんを心配してだから、ね?」


 そうフォローを入れるのは嘗て月夜の花に在籍していた冒険者で今はマリーやゼッキ達と同じように龍に抱かれる太陽に在籍している者。


「カッツもユニも甘い! 例えそうだとしてもちゃんと両親に話を通さなければ家出と同じだよ!!」

「「あはは……」」


 正論を叩きつけられ最早笑うしかないと悟った二人は同じような引きつった笑みを浮かべた。

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