153話 師達との戦い
人型には魔法が効かなかった。
このままでは魔法陣が書きをされ結界が戻ってしまう。
それを防ぐには人型を倒すしかないのだが……。
ありえない。
メルの頭に思い浮かんだ言葉はそれだけだった。
何故ならメルの魔力を媒体にしあの光の人型を作る事は可能でも、そこまで強力な防御壁を持つ訳が無いのだ。
魔法で攻撃されることを考えてたと言っても……幾らナタリアでもこれは無理――できるとしたら……。
「ユーリママ? でもユーリママがこの結界を作ったって聞いてない……それに――」
この魔法陣の癖、これは間違いなくナタリアの物。
じゃぁ一体……。
「そう言えば結界を作る時にユーリちゃんの魔力を使ったはずですよ、それは何か関係があるのでしょうか?」
「魔力だけじゃ……」
魔力だけ?
メルは呟いた後に今まさに結界を直そうとする人型へと目を向ける。
そうか! 魔力さえあれば魔法はナタリアが作れば良い……だからここまで……ユーリママの魔法ならあの人型がシュレムの攻撃を耐えれたのは納得できる。
だけど、強力な魔法にする理由は? これじゃ全く歯が立たないよっ! それに魔力だけで効果がある方法なんて……もし、そうだとしてもユーリママの魔力を結界や人型の防御壁に使ってるとしたら――。
結界を解く事は出来ない? そんなはずはないよね……魔法なら効果があるって言うのが間違いなのかも……だとすると、シュレムの攻撃を防ぐのは魔法の所為じゃない? それなら――。
「……シュレム!」
「まだ、大丈夫だ……!」
メルとしてはリアスにも魔法をかけ、シュレムと共に戦ってほしいと思いはしたが、これ以上魔法が使えない事に変わりはなく――。
「メルちゃん、さっきのシュレムちゃんの盾に使った魔法の前の魔法は駄目なの?」
「無理です、あれは魔力を使うのが少し多くてそう何度も使えないんです……だから――」
友として、家族として、姉として……一緒に育ってきたシュレムへと目を向けたままのメル。
それに応えるかのように笑みを見せたシュレムは人型へと向き直り――。
「それで、オレは何をすればいい? 叩いても駄目なら俺には思いつかないぞ!」
「大丈夫、それだけでいいから――相手はこっちを傷つける気なんてない、だけどもし私が考えてることが正しければシュレムなら何とかなるはず! それに結界を直されたらナタリア以外には解けなくなるかもしれない」
その言葉にシュレムは頷き――人型に向かい再び盾を振るう。
「なら良い! オレが出来る事なら嫁さんの為だぁぁぁぁああああ!!」
「だからなんでそうなるの!?」
次はメルでは結界が解けなくなる、そんな言葉で緊張が走る中――シュレムの叫び声で思わず一同はがくりと身体を揺らす。
だが、当の本人は真面目なのだろう――有り余る力を使い人型に殴りかかる。
「チッ!!」
しかし、やはり彼女の攻撃は人型には通じず――。
「メル! 俺にもシュレムと同じ魔法を頼む――」
「駄目! リアスにはやって欲しい事があるの!」
リアスの懇願を断ったメル。
その答えに首を傾げつつもリアスはメルの傍へと寄り、彼女の声に耳を傾けた。
魔法なら効果があると言う事が間違い。
メルはそう思い当たった理由をリアスへと告げる。
「……そうか、なら――魔法は意味が無いって事か?」
「うん、多分……魔法は関係が無い、シュレムなら何とかできる、でもシュレムじゃ見つからない」
人型へと目を向けたメル。
そこには果敢に挑むも見えない壁に阻まれるようにして攻撃をあしらわれるシュレムの姿がうつった。
「…………」
魔法の力を付与してその上でのシュレムの攻撃……それを防がれている訳じゃないとしたら……。
メルはただじっとその時を待つ――。
「クソ!!」
その待っていた事は間もなく起きた。
シュレムの盾を包んでいた魔法が消えたのだ。
しかし――。
「――な!?」
「ふ、防がれた?」
それに驚いたシュレムとエスイル。
「魔法以外でも防ぐみたいね……」
魔法が切れた盾で繰り出された打撃は先程と同じように防がれたのだ……そう、人型は魔法だから防いでいた訳ではなく……。
それを見てメルは確信を得た。
リアスの攻撃はあの人型にとって脅威ではなく、逆にシュレムの攻撃は脅威だったのだ。
「シュレムの盾での攻撃は体の大部分に当たる……だから何かを守ってる……やっぱりあの人型を形成する何かがあるんだ……!」
そして、それは――。
「シュレムが殴って防いだ場所のどこかにあるって事か――でも、それだと――」
リアスは人型をじっと見つめる。
その人型はナタリアを模しているため女性としては長身だ。
しかし、シュレムの持つ盾もまた大きなものであり――。
「シュレム!! そのまま攻撃を続けて! 出来ればいろんな場所を狙って欲しいの!!」
メルは人型の弱点を見つけるべく姉にそう頼んだ。
「任せろ!!」
そう答えた姉はメルの願い通り、盾を振るう――左腕、両足、頭と……その度に避けられたり防がれるのだが、メルとリアスは何かに気が付いたのだろう目を合わせ頷いた。
「左腕を守る時、若干避けるのが遅かったな……」
「うん、きっと守るべき場所からは離れてるんだよ」
そして、シュレムが人型の右腕を狙った時――。
「あそこか……!!」
リアスは走り棒を振り上げる。
「シュレム! もう一度右腕を狙って!!」
多分あれは単純に攻撃するだけじゃ駄目――何か条件があるはず。
正確に弱点だけを狙うって事はまずありえない……防がれて終わる。なによりナタリアがそんな簡単な方法を選ぶはずだないんだ!
だから――。
「もう一度だな!! ぉぉぉぉおおおおお!!」
きっと――。
「右腕――魔紋のような物があるあの場所か!!」
同時に別方向から狙えば――壊せるはず――。
メルは自身の予想が当たっている事を願い、祈る様に二人を見守った。




