144話 魔物の穴
巨大な木の魔物を倒すことに成功したメル達。
しかし、子供から告げられた言葉は信じられない事だった。
小さな魔物が居る……そして、その魔物は何処からか街に出入りしているという事だ……。
このままでは街は危険なまま……メル達は子供に頼み、その場所へと案内してもらうのだった。
「ここだよ!」
少年達に案内された先には確かに小さな穴がある。
獣も通れないような細く小さな穴だが――メルは近くにいる精霊ドリアードなら何か知っているのでは? と思い彼女を探し見つけるとその傍へとしゃがむと声を掛ける。
「ドリアード、此処からなにか出入りしてる?」
メルに気が付いた精霊は笑みを浮かべ彼女の周りを飛び回る。
そして彼女の質問に答えようと考え込み……。
『何かが通る気配はあるよ?』
「じゃぁ、こっちに入って来たのは何時か分かるかな?」
『うん! 昨日の夜に入ってきたみたいだよ……その後は分からない』
メルは頷くと精霊ドリアードへとお礼を言い。
今聞いた事を仲間達へと伝える。
「なら、まだ街の中に居る可能性が高いな……急いで探そう!」
「だがよ、この穴どうするんだ? 埋めねぇとまた出たり入ったりだろ!」
「メルのお姉ちゃんの魔法で取りあえず塞ぐのは駄目なの?」
「今はそれしかないね」
メルはその場で魔法を唱え、穴を埋める。
そして、その瞳を少年達へと向ける。
「ここの他に穴ってある?」
「ううん、ここだけ」
少年がそう答えると同時だろうか?
街の中から悲鳴が聞こえる。
メル達は互いに瞳を合わせると頷き合い――。
「悲鳴の方に急ごう! まだ小さい木が居るかもしれないよ!」
「ええ、そうね……それと坊やたちにはちょっとお願いがあるわ」
ライノの言葉に首を傾げるメル。
するとライノは森の中で使った薬液を取り出し……それを少年達へと振りかける。
「これで魔物には襲われないはずよ、坊や達は兵士さんの所に行って報告をしてくれるかしら?」
「「う、うん!」」
頷き走り出した二人を見送ったメル達は悲鳴の方へと駆けて行く、その先には再びあの魔物が居るのだろう。
そう思うと気持ちは焦ってしまう。
「お願い間に合って!」
「メル違うだろ!」
「……え?」
「間に合ってじゃなくて間に合わせる! ユーリさんならそう言うぞ?」
シュレムの言葉に一瞬戸惑うメルだったが、すぐにくすりと小さな笑みをこぼすと――。
「うん、そうだね!」
そう答え、前をしっかりと見据え仲間と共に街の中を駆け抜けるのだった。
そうだ、絶対に間に合わせるんだ!
ママ達が……冒険者も戦える人も少ないこの街を守れるのは私達だけなんだから!
誰も死なせない!
そんな決意と共に……メルは駆け、目の前に魔物を捕らえるとアクアリムを鞘から滑らせその刃を陽光の元へと晒す。
「ライノさん! 薬はまだありますか?」
「ええ、勿論よ」
「ならさっきと同じ手段で行くぞ! シュレム、街の人は任せた!」
「おう! ってなんでお前に言われないといけないんだよ!!」
「あ、はは……シュレムお姉ちゃん……怒る所じゃないよ……」
緊張感の無いシュレムと突っ込みを入れるエスイルに何処か感謝しつつもメルは魔物を睨む――。
これの元凶がどこかに居る……早く捕まえないと!
駆けつけた先で見事に魔物を退治するメル達。
歓声が上がる中、メル達は辺りを見回すのだが……。
「居ない……」
原因である小さな魔物が見つからない。
「おい! 誰か小さい魔物を見てないか!!」
「見た目は今の魔物と似てるはずだ!」
リアスとシュレムがそう言うも人々は顔を合わせるだけで答える物は無く……。
「その小さな魔物がさっきの魔物を作ってるんだ!」
エスイルがそう声を上げると青い顔をし始める街の者達。
その様子からはどうやら知らないのだろうか?
「これじゃ、埒が明かないよ……」
メルはそう言うと最後の手段とばかりに精霊シルフへと瞳を向ける。
目を借りれば……見つかるかもしれない。
だが、それはメル自身に負担がかかる手段だ。
しかし、そんな事を言っている時間はない、こうしている間にも魔物は新しい魔物を生み出しているかもしれないのだから……。
「シルフ!!」
メルは決意をすると精霊の名前を呼ぶ……すると、相棒である精霊は彼女の意図に気が付いたのだろう、頷いた――その時だ。
「お、俺見たぞ……」
「本当? その魔物は何処に行ったか分かるかしら?」
名乗り出た男性に問うライノ。
メルも取りあえず情報が出たことにホッとしつつも彼の言葉に耳を傾ける。
「あ、ああ……実際にはその、何かが通り過ぎたってだけだ。はっきり見た訳じゃない……だが、俺達が逃げてる時に魔物の向こう側……」
彼はそう言うと指で方向を記す。
「そうだ、確かあっちの方へと向かって行ったんだ」
「あっち? あっちって……」
メル達は彼の指した方向へと瞳を向ける。
この時、メルにはその先に何があるのか分からなかった。
しかし、仲間達は違った様で……。
「おいおい……確か、あっちの方って……」
「ああ、間違いない……」
「メ、メルお姉ちゃん! 急がないと!!」
慌てる四人の様子にメルは首を傾げつつ問う。
「そんなに木がある方なの?」
「そうじゃないわよ! あっちはメルちゃんのお婆ちゃんが居る屋敷がある方よ!」
「え…………っ!! シルフ!!」
ようやく、その先に何があるのか理解したメルはその顔を青くし、シルフの名を呼び、走る。
「お、おい! メル!!」
彼女の名を呼ぶリアスの声が聞こえるが、それどころでは無く……彼女は人混みをかき分けて進もうとするが、それももどかしく感じ――。
「我らに天かける翼を!! エアリアルムーブ!!」
魔法を唱えると空へと浮き、彼女は屋敷へと急ぐ――。
お願い、どうか……間に合って……!!




