142話 街の中の魔物
街の中に現れた魔物エイシェントツリー……。
それは森で見かけたものよりも大きく、普通に戦ったのでは被害が出てしまう。
その事に気が付いたライノの策にメル達は乗るのだった。
武器を持ち魔物を翻弄するメルとリアス。
二人を見てシュレムは首を傾げた。
「お、おい! メル!!」
「この大きさだと周りに被害が出ちゃう……だから――」
メルはシュレムの疑問へと答え、再び魔物へと向かう。
魔物も新たに表れた二人に気が付いたのだろう……。
そして、シュレム相手には自身の攻撃が届かないと気づいていたのだろう、標的を二人へと変える。
「マ、マズイ! 二人じゃ当たったら怪我済まないぞ!!」
シュレムは叫びその場からメルの元へと駆け寄ろうとする。
しかし――。
「動くな! 俺達より子供の方を守れ!」
「いや、お前じゃないっての!!」
リアスの言葉にそう怒鳴り返すシュレムだったが、すぐに後ろへと向き直る。
そこにはエスイルは勿論、先程転んでしまった子供もいるのだ。
彼女は歯を擦り合わせ再び魔物へと目を向けた。
「クソっ!!」
そう口にし盾を構えるシュレムの姿を見てメルはほっとしつつ、迫りくる枝を避ける。
大丈夫、大きいせいか森で見たのより遅い。
これなら……。
華麗に避けるリアス、攻撃を耐えるシュレムとは違い、メルは避ける事も耐える事も特化しているとは言えない。
しかし、目の前の魔物は注意さえしていれば決して避けられないと言う事は無く――。
「きゃ!? い、今のかす、掠った!?」
血の気が引くような時はある物の魔物の攻撃を避ける。
た、確かに遅い……けど、これって……私苦手かも……?
「メル! この魔物は動きが遅い分、デカいから思ったより届くんだ! ギリギリ避けるんじゃなく余裕を持て!」
「う、うん!」
答えたメルは再び迫る枝に気付き大地を蹴る。
リアスの指摘通り、先程よりも大きく飛ぶと――。
「こ、今度はちゃんと避けれた!!」
「メルちゃん!!」
ほっとしたのも束の間、ライノの声が聞こえ、そちらへと目を向けると彼はすでに魔物の樹上に白い羽を羽ばたかせ佇む。
「だ、旦那!? 何をやってるんだよ! 危ないぞ!!」
ライノはシュレムの方へと顔を向けると微笑む。
「調合は終わったわ……お願いね、メルちゃん」
「はい! 具現せよ強固なる壁――アースウォール!」
メルの魔法は巨木の周りを土で囲みそれに気が付いた魔物は当然のように暴れる。
しかし――。
「いつもより、魔力を込めたから暫くは耐えれるはず――ライノさん!!」
メルの言葉通り、土の壁……いや、石の壁と化したそれはすぐに壊れる事が無く――。
「エスイルちゃん! シルフちゃんにお願いして薬がまかれない様に風を吹かせて頂戴!」
「う、うん!」
エスイルはライノの言葉に従い、ドリアードの実体化を解除する。
それと同時に魔物の拘束も溶け石の壁の中で魔物が暴れる音が激しくなる。
「風の精霊よ我が前に姿を現せ……シルフ!」
そして、メルの相棒でもある精霊を呼びだすと先ほどライノが言った通り伝え――。
『分かった! 任せて!』
シルフはすぐにライノの所へと飛ぶと風を吹かせ。
それを待ってからライノは手に持っていた薬を魔物へと振りまいた。
薬を浴びた魔物は苦しいのかさらに暴れ始め、石の壁は大きく揺れる。
「だ、大丈夫かな?」
その暴れように魔法の壁が壊れないか心配になったメル。
しかし、魔物はメルの不安を煽る様に暴れ……それが目に見えぬ彼女達は一様に青い顔をする。
そんな時、辺りにより大きな音が鳴り響くと同時にメルの作った石の壁にヒビが入った。
「ひ!?」
「メ、メル……一応子供を抱えて走る準備だけはしておこう」
小さな悲鳴を上げたメルにそう提案したリアス。
メルは何度も頷きつつ、壁を見つめるのだが――先程の壁にヒビを入れる程の音からは段々と音は小さくなって行き……。
やがて魔物は大人しくなった。
倒せたのだろうか? メルは疑問を感じつつ空に佇む仲間ライノへと目を向ける。
彼はメルの視線に気づくと――。
「もう、大丈夫よ」
彼はそう言いつつメル達の元へと降り立った。
メルが魔法を解くと其処には枯れた大木が一本……先程まで魔物だった物だ。
「でも、何でこんなに大きな魔物が?」
事情を知るであろうエスイルとシュレムへと目を向けるのだが――。
「分からないんだ……急に動きだして……」
「ああ、流石に俺もびっくりしたぜ」
ビ、ビックリってそれはしない方がおかしいよ……でも、何か原因があるはず。
「あの木は多分何かの影響を受けて魔物になったんだと思うのエイシェントウィローは木々を傷つけて、そこから魔力を注入枯らして新しい魔物を生み出すの」
「でもあの魔物は自然発症した魔物なんだろ?」
シュレムの言葉に頷くメルは再び口を開き――。
「うん、多分そうだと思う……だけど、魔力を得るような事が無ければ自然に生まれることは無いの、街の中は結界維持の為に魔力を使ってるはずだから中で生まれるって事は稀だよ、しかもあんな大きな木を動かすほどの魔力何てそうそう……」
そこまで口にしてメルは思考する。
自分の言った言葉は間違いではない。
だが、何かがおかしい……自然に生まれると言うと若干違う植物の魔物。
それは外的要因があり、魔力を得たら自然と魔物になると言う事だ……だが、魔物も生き物であり、その身体を動かすにはそれ相応の魔力が必要なのだ。
あれだけの魔力が自然に集まったって言うのはおかしい……なにか、なにか見落としてることがあるのかな?
でも……一体、なにを?
「メ、メルお姉ちゃん! それよりフェンが怪我をしちゃってるんだ!」
「え? あ、うん! すぐに治すよ」
メルはエスイルの言葉を聞き、少年へと近づく――。
「ぼ、僕……」
「もう大丈夫だからね」
涙目の少年に優しく声を掛けた少女は傷口へと手のひらを向ける。
「怪我はすぐに治るからね」
そう言うメルに対し少年は首をぶんぶんと横に振る。
そして……。
「僕……見た事あるんだ小さな木が夜に街を歩いてるの……」
「え……?」
小さい声で……しかしはっきりとメルへその事を告げた。




