135話 エイシェントツリー
森の中で魔物エイシェントツリーを見つけることが出来たメル達。
早速退治を始めるのだが、その魔物は思いのほか強く……苦戦を強いられる。
だが、メルは策を練り、立ち向かい……仲間と共に魔物達と戦う……。
リアスが注意を引き、シュレムが守り、ライノが指示を――。
そして、エスイルの呼んだ精霊ドリアードとメルの二人で魔物を倒す。
見事な連携で次々と魔物を倒してくメル達は最後の一体へと岩を叩きこむとようやく一息を付いた。
「こ、これで終わりかな?」
メルは辺りを見渡し魔物が居ないか確かめる。
目に見える範囲にはなにも居ない様に見え、音も匂いも違和感を感じる所はない様だ。
「この辺りには居ない様ね」
「みたいだな……一応魔物が残っていないか辺りを歩いて確認しよう」
リアスの言葉に頷き、メル達は魔物を探し森の中を歩き始めた。
暫く歩き続けたメル達だったが……。
「結構歩き回ったが、魔物はあれで最後だったのか?」
「そうみたいだな――メル、今日はもう陽が落ちる戻ろう」
「え、でも――」
まだ森全域を歩いたわけではないよ……メルはその言葉を飲み込んだ。
不意に袖を引っ張られたからだ……何事かと目を向けると其処にはエスイルがメルの袖を掴む姿があり、どうやら躓いてしまった様だ。
その顔には疲れが現れており――。
「旅を始めて数日間、まともに休める日が殆ど無かったんだ……数日は此処で止まって休養しよう、その間に魔物が出るようならまた探せば良い」
「ごめん、メルお姉ちゃん……」
エスイルは自身の所為で探索が続けられないと思い込んだのだろう、表情を暗くする。
そんな弟に、メルは首を振る。
「エスイル、大丈夫だよ? リアスの言っていた通りだから……さ、街に戻ろう?」
メルはエスイルの手をしっかりと握り、リアスへと目を向ける。
「行こう」
「ああ、帰りに魔物が出るかもしれない……警戒だけはするぞ?」
「言われなくても」
「ええ」
メル達はソーリオスへと向け足を動かし、夕暮れ時に街へと着く――。
すると、先程の門兵たちは顔を出し、慌てた様に引っ込むと門はゆっくりと空けられた。
「お前達! また来たのか!!」
「魔物は!?」
メル達が無事である事にホッとした様子の門兵達はすぐにその事を聞いてくるが、メルは頷き笑みを浮かべ答えた。
「取りあえず、見つけられた魔物は倒したよ」
「そ、そうか……ん?」
その答えにホッとした女性はメルへと近づき、匂いを嗅ぐ――。
「この匂い、出る時はしてなかった……」
「えへへ……良い匂いでしょ?」
メルが袖を女性の方へと差し出すと、彼女は眉を歪め――。
「香木? はぁ、魔物を倒しに行くのに――必要も無い物を」
「それは魔除けの薬よ? 撒くより身に着けて歩いた方が効率が良いと思ったの、もし気に入ったなら少し分けてあげるわよ? 香木の代わりに出来そうだしね」
香木とは燻し、服やその身に匂いをつける。
高級なもので一般の者達がそう簡単に手にいれる事の無い物だ……しかし、サンクの花は違う。
魔除けの花とも呼ばれるそれは広く知れ渡る程には有名で、また街の中の花畑ではよく栽培されているのだ。
「魔物避けじゃなくて、香木の代わりに売るつもりなの?」
「ええ、メルちゃんのお蔭で意外な使い方が分かったのだし、安価で使えるとなればこれは良い商品になりそうね」
メルの問いに笑顔で答えたライノは小瓶を門兵の女性へと手渡しながら考える……。
「そうね、香木の代わり……それも液体だから香水とでも名付けましょうか」
「え? いやなんで私はこれを?」
手渡されたそれに驚く女性だったが、ライノは――。
「あら? 良い匂いなのは分かったでしょ? それに本来は魔物避け、無駄にはならないわ」
「そ、そうだな……魔物避けは必要だ……」
彼女はそう言うと少し顔を赤らめ腰に着けた鞄へとしまい込む。
「じゃ、俺達は領主へ話をしてくる……心配してるだろうからな、通っても良いだろ?」
「あ、ああ……」
門兵が頷くのを確認するとメル達はその場を去り、領主の館を目指すのだった。
館へと戻ったメル達は先程通された部屋ではなく長いテーブルのある部屋へと招かれる。
「メルちゃん怪我はない? どこか痛い所とかないの?」
食事が運ばれるのを待つ間、イリアはメルへとそのような質問を投げる。
「メルちゃんだけじゃありません、皆さんも怪我は?」
イリアは其処に居るメルの仲間達へもその心配そうな表情の中にある優しい瞳を向ける。
勿論、メル達には目立った外傷はなく、あったとしても今はメルが完成させた魔法ヒーリングの力があるのだ。
生きているならば傷はすぐに治すことが出来るだろう。
「もし怪我なんかしたら私は――」
しかし、その事を彼女は知らず。
もし、知っていたとしても心配は変わる事が無い。
「だ、大丈夫だよ……」
でも、魔物と戦う以上怪我は避けられない。
やっぱり、ヒーリングを完成させたのは良かったかも――。
もしもの時の手段が増えたことに安堵したメルはほっと息をつく、そんな彼女の安心しきった顔を見た祖母は眉をひそめた。
「気の緩みが怪我につながるのよ?」
「そうだな、それはオレ達もメルも分かってる――とにかく、何日か泊まって魔物の残りが居ないかを調べた方が良いんだよな?」
「ああ、そうしよう……だけどまずは休養だ」
シュレムとリアスの会話にイリアは顔を青くする。
そして、机に手を付くと――。
「ま、まだ魔物と戦うつもりなのですか!?」
「戦うと言うか、魔物が残ってたら戦うだけよ、その方が安全でしょ?」
「それは、そうですが……」
メルはイリアの心配する様子を見て母達のは彼女から遺伝でもしたのだろうか? などと考えつつも――。
でも、私達がここで魔物を倒したからって絶対安全とは限らない。
魔物は自然に生まれる可能性だってあるし、今回のはそれだと思う……だとしたら、なにか方法を考えないとまた同じ事になるよね?
その時たまたまママ達が来れるとは限らないし……。
「うーん……」
「メルお姉ちゃん、どうしたの?」
「うん、どうにかしてこの街が安全になる方法はないかなって……」
メルがそう口にし考えるとエスイルは首を傾げ問う。
「龍に抱かれる太陽の誰かがここに来て守ったり、剣術とかを教えるじゃ駄目なの?」
「――え?」
弟の言葉にメルは目を見開き驚きつつ、何故、そんな簡単な事に気が付かなかったのか? と感心した。
確かにそれならば不安は拭えるのだ。
「なら、ママ達に連絡を取ってみないと!」
メルがそう呟くと同時に目の前には食事が運ばれて来て、部屋の中には良い匂いがするのだった。




