133話 ソーリオスの門
メル達は魔物を退治することを決め、門へと向かう。
途中彼女達を良く思わない青年に敵意を向けられるもメルは魔物を倒すと告げる。
だが、それを信じない青年……彼は苛立ちを見せ、メル達に襲い掛かろうとするも街の住人達に抑えられる。
メル達は彼らにも魔物退治を託されるのだった……。
ソーリオスの門へと辿り着いた一行は門兵達と鉢合わせする。
相変わらず彼らはメル達を睨んでくるが、ライラの話を聞いた後では嫌な気分よりも二人の演技力に驚かされていた。
「出ていくのか?」
「ならさっさとして」
二人はそっけなくそう言うがメルは静かに首を横に振り――。
「魔物を退治しに行きます……門を開けてもらえますか?」
そう言うと二人は目を合わせ、慌てた様にメル達へと振り向く。
「ま、魔物って森の魔物をか?」
メル達は頷き、門の前に立つ。
彼女達を知らない二人の門兵から見たら子供が何を無謀な事をと思うだろう……。
いや、事実そう思っているはずだ。
同時にここまで来た実力はあるのは分かっているはず……だが――。
「あ、あのな、危険なんだぞ? べ、別にあんた達を心配してるわけじゃないけど!」
女性の方は明らかに心配そうな顔で口にするが、恐らく本心はメル達に何かがあってからでは遅いと言う事を考えてくれているのだろう……。
しかし、メルは――。
「魔物は恐らく森の中で生まれました、もしかしたらこの街にも来る可能性だってあります。そうなった時――戦える人はこの街に何人いるの?」
「そ、それは……」
言い淀む門兵に溜息をついたリアスは一歩前へと出ると二人へと目を向け――。
「お前達が守るってのか?」
「そ、そうだ! 私達が街を――」
「んで、魔物と戦った事は? あんのかよ?」
少女の方が声を上げるとすぐに割り込む声があり、その正体はシュレムだった……。
彼女の言葉に黙り込む二人の門兵。
「ま、魔物ぐらい――」
「魔物ぐらいって言うけど、実際に戦うとなると思っているのと違う物よ?」
ライノの言葉は優しいもので、二人を気遣う物でもあった。
しかし、門兵達は少年へと指を向け――。
「そっちだって子供がいるじゃないか!!」
「そうだ、あんなに小さい子共が!!」
だが、その子供である少年は――。
「エスイルは強いよ……捕まっても自分で逃げ出せたし……この年で精霊召喚も操れる。それに直接戦いはしなくても魔物との戦いは目の前で見て来たんだから」
メルは二人へとそう告げる。
「私に何かがあったらママ達が復讐に来てしまうかもしれない、そう言う心配があるって聞いたけど……私達は魔物なんかに負けないから、それに――このままだと安心して眠れないからね」
先程の言葉に続きメルはそう口にすると微笑む。
そう、誰かの為になる事をする。
それがメルの夢であり、理想の冒険者。
彼女はその事をずっと想い――そして、今まさにそうなろうとしている。
だが――。
もっと他に、何かが出来るんじゃないかな?
そんな気持ちも同時に芽生えつつもメルは二人の門兵を見つめ――。
「門を開けてください」
もう一度、開門を望む。
すると二人の門兵は渋々と言った様子を隠すことなく扉を開く。
「怪我とか死ぬのだけは勘弁してくれよ? 街に報復されても困る」
「大丈夫、倒して帰ってくるから」
門兵の言葉にそれだけ返すとメル達は門をくぐる。
潜り終えると後方に門が閉じる音が響き――メル達は再び森の中へと入って行った。
暫く歩いた所でリアスはメルの方へと向き。
「それで木に化けている魔物をどうやって探す?」
「え、えっと……」
メルは周りを見てみるが其処には特に変わった様子等なく……。
「どうしようか?」
「手当たり次第に殴るか?」
「そ、それだと時間かかると思うよシュレムお姉ちゃん……」
エスイルは苦笑いでそう口にし、リアスもまた笑みを引きつらせる。
「メ、メル……精霊は何か知らないのか?」
そう言われメルはドリアードへと目を向ける。
しかしドリアード達に変わった様子は無く……。
「ドリアード何か変わった事は無いかな?」
『ううん、特に変わったことは無いよ?』
「どうだ?」
リアスに目を向けたメルは目を伏せ首を振る。
ドリアード達が変わった事が無いと言う以上、彼女達精霊に脅威はない。
つまり、この森に居る魔物は動物とそう変わらない……精霊達はそう考えていると言う事が分かったのだ。
「なら、魔物をあぶりだすしかないわね」
「あぶり……だす? って火を使うの!?」
ライノの発言にメルは瞳を丸くする。
しかし、ライノは微笑むと懐から小瓶を取り出し――。
「まさか、そんな危ない事しないわよ、この中に入っている液体はね、大抵の魔物が嫌がる匂いを発するの……これが利けばいいのだけど」
彼は小瓶の蓋を取るとその中身を辺りへと撒く――その際にメルの尾行をくすぐるのは――。
「良い匂い……これは何の匂いなの?」
「これはね魔除けの花って呼ばれてるサンクから抽出した物よ」
笑みを浮かべるライノの言葉を聞きつつメルは尚も鼻を利かせる。
まるでシンティアさんが作る石鹸みたいな匂い……そうだ!
「ラ、ライノさん……それちょっと残ってますか?」
「ん? ええ、まだ残ってるけど?」
まだ数滴残っているソレを受け取ったメルは袖へとそれを垂らし、匂いを嗅ぐ――。
きつい匂いではなく、ほのかに香るそれはまるで……。
「メル……香木じゃないんだからな?」
「え、えへへ……で、でも良い匂いだよ?」
リアスに自分のした事に気が付かれ頬を朱色に染めるメル。
だが、これを見ていたライノは――。
「そうね、それが良いかもしれないわ!」
「……え?」
「この薬は撒いた所にしか効果が無い、でも沢山ある訳でもないの……実際に匂いを身に着けて歩けば……一々撒かないでも済むわ」
ライノはもう一つの小瓶を取り出し、メルと同じように袖へと匂いをつける。
「ほら、皆も――」
そして、仲間達へとその小瓶を渡すのだった。




