132話 討伐へ
ソーリオスは魔物の恐怖に襲われている!?
外部からの悪意を受け付けない街に起きた事件……。
それは内部での魔物の発生だった。
メルの話を聞いても心配な物は心配なのだろう……。
イリア達三人は困り果てた様な表情を浮かべる。
だが、メル達に引く気はなく――。
「まだ、日が落ちるには時間があるし――早速森に入ろう」
仲間達にそう提案をすると彼らは一斉に頷いた。
「ええ、そうね」
「魔物というからには見た目で分かるはずだ……手分けをするより、固まって行った方が安全だ」
「ああ、そうだな……さっさとぶっ飛ばして誤解を解いちまおう!」
「うん、ぼ、僕も頑張るよ!」
そんなやり取りを終えたメル達はすぐに立ち上がるのだが――。
「ま、待ってくださいメアルリースちゃん!」
「待てないよ、だって犠牲が出てるんだよ? だから、私達がすぐに倒してくるから――」
メルは曾祖母の顔を見ずそう告げる。
そして、再び笑みを浮かべ振り返る。
「あと、私は皆にメルって呼ばれてるから、お婆ちゃんにもそう呼んでほしいな」
屈託の無い笑みを曾祖母へと向けたメルは仲間達と共に部屋を後にしようと扉へと手をかける。
そんな彼女達にイリアはなおも心配そうな表情で……ライラもただただ見送るだけだった。
しかし――。
「魔物は木に擬態しており、我々はエイシェントツリーと呼んでおります……お嬢様方、どうかお気をつけて……」
ただ一人執事は慌てた様子もなく、冷静に情報を提供してくれ、メル達はその顔に笑みを浮かべる。
「へへ……分かった! オレに任せておきな!! メルは必ず守る!!」
「いや、シュレムに任せるのは不安なんだが、頼むからエスイルも護ってくれよ?」
「わ、分かった!」
リアスは呆れ気味にそう言うと不満そうに眉をひそめるシュレム。
だが、以前とは違い、シュレムもリアスの間に亀裂が入ることは無く――。
「うるせぇな……言われなくても分かってるよ……」
「そうか、それなら良い……頼んだぞ」
二人の様子を見てくすくすと笑うライノは心配そうに見守るメルへと片目を瞑り合図をする。
それにホッとしたのか――。
「じゃ、じゃぁ改めて出発しよう?」
「そ、そうだね……行こうメルお姉ちゃん」
屋敷を出たメル達は街人から視線を浴びつつ門へと急ぐ……そんな中、若い男性達が彼女達の目の前で立ち止まった。
「お前ら、ナタリアとかいう魔法使いの仲間だろ?」
手にはナイフを持ち、穏やかとは言えない雰囲気の彼らはメルを睨む。
「よくも魔物を放ってくれたな?」
メルは周りへと目を向けるが、これ以上の厄介ごとには首を突っ込みたくないのだろう……住人達はメルと目が合うとすぐに逸らしてしまった。
「おい! ガキ!! こっちを向けよ!!」
「仮にこの子がそうだとして、そのナタリアって人が魔物を放つ理由が何であるんだ?」
「リ、リアス……」
彼はメルの言葉と共に彼女の目の前へと立つ……
「ぁあ? ほ、他に居ないだろうが!!」
「話は聞いたが、この結界は本来タリムの王の配下を寄せ付けないためのものだ。それなのに魔物を呼ぶ理由はない。そもそも魔物は自然発生するらしい……その話をしたのはこの子だ」
「そんな話でたらめだ!!」
そう叫ぶ彼の言う事も可能性としては考えられることは間違いが無い。
だからこそメルは――。
「メ、メル!?」
リアスの前へと出ると男性へと詰め寄り――。
「な、なんだよ?」
「ナタリアはそんな事しない、それに魔物は私達が倒しに行く――報酬目当てなんかじゃない! ひいお婆ちゃんの為に私達がなんとかするから」
「は、はぁ!? お前達みたいなガキに何が出来るんだよ!! どうせバレタから逃げるつもりなんだろうが!!」
その言葉にメルはムッとするが、肩を叩かれた感触に振り返ると――笑みを浮かべたライノの姿があり……。
「放って置いて行きましょう? 早く魔物を倒して帰ってくれば何よりの証拠になるわ」
「そう……だよね。うん! 行こう!!」
「テメェ!! 何無視して逃げようとしようとしてるんだ!!」
メルへと怒号を投げる青年、その声に思わずびくりと身体を震わせる。
それを目にしたリアスは――。
「お前が俺達を疑う事に関しては何も言えないが……魔物を倒すって言ってるんだ、邪魔をするなよ」
「なっ!? だからそれが信じられないって――!!」
「っせぇーな……だったらお前が倒すのか?」
苛立った様子のシュレムがそう口にすると言葉を無くす青年。
それは誰から見ても無理だろう……青年が強がっていた理由はメル達はライノ以外子供だからだろう。
「シュレムちゃん、リアスちゃんも……メルちゃんを虐められて怒ってるのは分かるけど、早く行きましょう……どうせ魔物を倒してさえしまえばすぐに分かるのだから」
しかし、彼女達はただの子供ではない。
実力ある剣士であり、魔法使い……冒険者見習いだ。
ソーリオスに起きた問題を解決できるとしたらいつ来るか分からないユーリ達以外には今この場に居る彼女達しかいない。
「だからテメェらは信用が――!」
だからだろう――。
「な、なんだよ!?」
子供に頼る事しか出来ない事を情けなく思いつつもようやく動いたナタリアを信じる住人達は青年を押さえるように囲み――。
「お、おい! あいつらが、ナタリアの知り合いなのは間違いないだろ!! この街を知ってるんだからな!!」
「イリア様のお子様は村を思って結界を張ってくれたんだ……それに、俺達には魔物は倒せない。情けないがこの子供達に頼るしかないんだ」
なだめるように一人の男性がそう口にすると、住人達は同じ様に青年へと声を掛ける。
そうしている中、一人の若い女性がメル達の元へと寄り――。
「気を付けてください、でも……出来ればあの人の仇を……」
悲しげな瞳からは涙をこぼし、メル達へとすがる。
それを見て、メルは先程聞いた話を思い出し――。
「分かりました。絶対に魔物は倒してきますから」
強い決意と共にそう口にした。
それは彼女が見習いとはいえ、冒険者として初めて受けた依頼になったのだった。




