131話 街の異変
門兵が警戒する理由。
それはソーリオスに起こっている異変の所為だった。
ライラはその事を語ると悲しそうな表情を浮かべる……彼女と何か関係があるのだろうか?
重苦しくなった空気の部屋で運ばれて来たお茶を飲みながらメル達は領主イリアを待つ。
ライラさん、さっきから悲しそうな顔してる。
そう言えばナタリアが羨ましいって言ってたよね? もしかして、魔物を倒しに向かった人ってまさか……家族?
メルがそう考えていると扉が開き、先程この部屋まで案内をしてくれた男性が入って来る。
そして、彼は扉が閉じないように支えると優しそうな顔の女性が部屋へと訪れ、メルへとその暖かな視線を向けるとより一層微笑み――。
「私がソーリオスの領主イリア・リュミレイユです、貴女がメアルリースちゃんですね?」
「は、はい……」
初めて会う曾祖母にメルは委縮し、小さな声で答えると女性は笑みを浮かべたままメルへと近づき――。
「小さい頃のディーネ……ナタリアを思い出します。ユーリちゃんの時はその姿を見れなかったのが残念ですが……きっと今のあなたの様な可愛らしい姿だったのでしょうね」
「…………」
「それにしても、遥々こんな所へどうしたの?」
優しく語り掛けられたメルは思わず言葉を失っていたが、リアスに肩を叩かれハッとすると慌てた様に答える。
自分達が旅の途中である事、エスイルという少年を遠いルーフ地方にある村まで送らなければならない事。
そして、タリムに向かう為ここに数日泊まらせてほしいとの事を――。
すると小さく頷きメルの話を聞いていた曾祖母イリアは……。
「ええ、勿論です、ですが……あの子達は知っているの? その、最近この村に近づかない様に……と手紙を出していたのだけど」
「…………え?」
メルは信じられない言葉を聞き、イリアの顔へと目を向ける。
そこには申し訳なさそうな顔を浮かべた女性が居り――。
「この村……いえ、もう街と言った方が良いですね。魔物が現れるようになりました……そこに居るライラの息子は魔物を倒すと言って外に出て行ったきり戻ってきていません」
「……………………っ!」
イリアの言葉を聞き、一同は息を飲む。
いや、メル以外も薄々は気が付いていたのだ……彼女の家族ではないか? とまでは……。
「ですがディーネの結界が破られたとういう報告は聞いていません、当然あの子達の仕業だと騒ぐ者も居るのです」
「そんな!! だってナタリア達は!!」
メルの叫びにその場に居るイリア、ライラ、そして執事らしき男性は深く頷く――。
「当然、私達はディーネお嬢様が……その家族や仲間がそんな事をするはずが無いと申しました。ですが、ライラ様の御子息の件以降、若い者にそう言う話が多いのです」
「……じゃぁ、門兵の奴らはメルを見てユーリさんや親父達に関係があると思ってあんな風に――!?」
「あの子達は息子に懐いてはいたけど、そんな子達じゃない……今この街は混乱にある。そんな時に人が紛れ込んで来たら悪人にされる可能性だってある……だから頑なに追い返そうとしてたの」
ライラはそう言うと一呼吸置き、メルへと目を向ける――。
「何より、ディーネの孫が来たんだから、ね……」
「…………」
そう言われてみると今考えて見れば妙だった。
ライラやイリアは一目見てメルがディーネ……つまりナタリアの孫だと言う事に気が付いたのだ。
メルとしては嬉しい言葉であったが、メルが二人の血縁では無いと思われる理由はフィーナにある。
フィーナは女性であり、尚且つ魔族ではなく森族だ。
メルとエスイルが居る以上、混血が生まれないという訳ではない、だが普通女性同士の間に子供が出来るとは思わないだろう。
それを可能としたのは変化という魔法のお蔭であり、それを見た目が全く変わらない様に使えるユーリの才能のお蔭なのだから……。
しかし、最初からそれを伝えられていればおのずと何処かに二人の血縁である証拠に気が付くだろう……。
つまり、メル達は――いや、メルは――。
「私はユーリママの娘って気付かれてて……だから、あんな目で?」
メルがそう尋ねるとライラが頷き――。
「恐らく……ね……ディーネ達が原因だって思ってる人にだけではなく、そう思ってない人にも災いの種と思わてる」
「ど、どういうことだ?」
「恐らく……メルの肉親に原因があると思っている連中が、メルを見て何かをするんじゃないか……そして、もしメルに何かがあった時はそれこそ報復に来るんじゃないか? って思ってるんだろう」
リアスの予想にシュレムは「はぁ!?」っと怒りをあらわにする。
「ぼ、僕はナタリアさん達がそんな事をするなんて思えないよ?」
「そうだぞ! エスイルの言う通りだ!!」
二人はそう言うが、メルはそう思えなかった。
ナタリアやユーリ、フィーナを始めとする者達は確かに憤りを見せるだろう。
だが、別の解決方法を見つけようとするはずだ……。
しかし、他の冒険者……龍に抱かれる太陽に住まう者達はどうだろうか? お人好しで優しい彼らと言えど自身達が世話になる酒場の娘に何かがあったと聞いたらそれこそ剣を掲げ刃を向けるだろう。
そうなれば多少の違いはあれど住民達の心配した通りになってしまうだろう。
それはまずいよ……でも、この状況……何もしないのも良くない。
どうにかしたい……どうにかして、助けないと!!
「その魔物って何処に居るの?」
「な、何を言っているのですかメアルリースちゃん」
「私達がユーリママ達の代わりに魔物と戦う」
彼女がそう言うと口元を押さえ驚いたイリアとライラ。
執事は眉をピクリと上げそのまま固まった事から彼もメルの言葉に驚いたのだろう……。
「し、しかしですね、メアルリースお嬢様……相手は魔物、貴女様が向かうぐらいならば危険を承知でディーネ様やユーリ様に連絡をした方が……」
「そ、そうです、何もメアルリースちゃんが戦う必要なんて……」
「あら、此処に泊まらせてもらうのにそこの住人達が困ってる魔物を倒すのは当然じゃないかしら? それに……メルちゃんは一人じゃないわよ?」
ライノはメルの言葉に賛成したのだろうそう言葉にし、リアスを始めとする他の仲間達も頷く。
「皆……」
「それでどんな魔物なんだ? メルとオレ達なら朝飯前だ!」
「で、ですが……」
イリアは心配なのだろう、慌てた様にメルの元へと駆け寄り――。
「今からじゃ、冒険者を雇うにもママ達を呼ぶにも時間が掛かるよ? だから、曾お婆ちゃん……私達がなんとかするから」
メルは曾祖母を安心させるため、笑顔でそう伝えた。




