130話 ソーリオス
祖母の故郷へと辿り着いたメル達。
しかし、歓迎とは到底言えない待遇に戸惑う。
そんな中、メルの祖母をディーネと呼ぶ女性のお蔭で無事街の中に入る事は出来たのだが?
ライラが屋敷の扉を叩くと暫くしてその中から男性が顔を見せる。
「これはライラ殿……何用でしょうか?」
「ディーネの孫を連れてきた。イリア様に会わせたいんだけど……今お暇は?」
彼女がそう言うと男性はメル達の方へと目を向け、小さく頷くと――。
「残念ながら今は執務でお忙しい……しかし、そう言う事であれば、暇が出来るまで屋敷の中で待ってもらいましょう」
彼は扉の中へと手を差し出し――。
「では、お嬢様方どうぞ屋敷の中へ」
余りにもあっさりと屋敷の中へと招き入れられたメル達は内心驚きつつ屋敷の中へと足を踏み入れる。
そんなメル達、いやメルを見て男性は目を細めるつつ、優しそうな笑みを浮かべる。
「いや、その瞳の色ユーリ様にそっくりですね」
「……え?」
「初めて聞いた時は私も奥様も驚かされましたが、すくすくと成長している様で何よりですよ……では部屋にご案内いたします」
この街に来てライラ以外から初めて聞いた母とのつながり……それを聞いたメルは思わずその表情を和らげた。
何処から見てもフィーナの娘、そう言われるのは当然嬉しかった。しかし、ユーリの娘でもある彼女はその事を否定されるのが辛かったのだ。
だから彼女はこの屋敷でも否定をされるのではないかと心配をしていた。
でも、それは余計な心配だったのかも……。
メルはそう考えつつ、案内された部屋へとメル達が入ると、ここまで案内をしてきた男性は頭を下げ――。
「では、すぐに飲み物を運んできます。奥様も執務が終わり次第こちらへと足を向けて下さると思いますので少々お待ちください」
部屋にはメル達とライラだけが残され、椅子へと腰を下ろす。
するとライラは申し訳なさそうな表情を浮かべ――。
「門では本当にごめんなさい」
「え、えっと……大丈夫ですよ、その……ちゃんと街の中に入れてもらえましたし」
彼女の謝罪にメルはそう答えるも、内心はあの門兵達を快くは思っていなかった。
だからといって、ライラさんは悪くはないよね……。
「所で一つ気になったんだけど……なんであいつらあんなに警戒してたんだ?」
リアスが浮かべた疑問、それを聞きメル達は首を傾げた。
「どういう意味だ?」
「この街には人が滅多に寄り付かないだろう? 森族や天族なら入れるって言ってもタリム近辺に好き好んでくる人は少ない」
彼はそう言うとライラへと瞳を向ける。
「魔物を警戒するって理由があるなら分かる、だがメルの説明では魔物も寄りつけない……とはいえ門兵が居るのはもしもの為にと理解できる。だがあそこまで警戒する必要はあるのか?」
「…………」
「ど、どういうこと? 警戒するような何かが起きてるの? 例えば悪人が街に入ったとか、魔物が近くに居るとか?」
メルはリアスの言葉が、彼が何を考えてそれを聞いたのかに気が付いたのだろう……リアスに向けて訊ねるも当然彼は部外者……ただの客人だ。
「俺達には分からない、だが予想としてはそうだな」
「お、おいおい、ナタリアさんの結界だぞ!? そうそう簡単に破れる訳が無い!」
メル自身もそれは考えもしたし、祖母の魔法が破られたとは思えなかった。
だが、ライラが嘘を言っている様には思えず……。
「それで、一体なにがあったんですか?」
何故平和なはずのこの街で一体なにが起きていると言うのか……。
「……魔物よ」
「ま、魔物? でもメルお姉ちゃんが……」
エスイルはメルの様子を窺うように見るが、メルは考えるようなしぐさを取る。
確かに魔物が入り込むことは出来ない、でも――。
「「ありえなくはないよ」」
メルの言葉はライノと重なった。
二人の言葉に驚いた声を発するのはその場に居る者達だ。
「どういう事だ? メル、ライノさん……」
予想としてはと言ってはいたが、リアスもの結界が壊されたというのは信じられなかったのだろう……。
だが、メルもライノも別の理由が思い浮かんでいたのだ。
「殆どの魔物には魔族と同じように魔力があるの」
「ええ、魔力だけではなく理性と知性を得たのが魔族……そして――」
メルの言葉に続きそう説明をしたライノ……それに頷いたメルが彼の言葉に続き……。
「その理性がななく、動物としての本能だけが残っているのが魔物……つまり、魔力さえ得るような事があれば魔物は生まれる……それこそ動物たちが進化するのと同じように……」
「じゃ、じゃぁ今この街に居る魔物は新しく生まれた魔物だってことなの?」
ライラは驚いた様に瞳を丸める。
「見て見ないと分からないですけど、この街はナタリアの結界がありますから」
でも、魔物が生まれたとしても一体なにが?
今いる魔物達と同じ? それとも全く別の物? そもそも魔物が生まれる条件って魔力だとは言ったけど、他に何かあるのかな?
「ただ、分からないのはどんな魔物が生まれてどんな害を与えるかって事ね……」
メルがライノへとすがるような視線を向けると、彼は眼鏡を元の位置に戻しつつそう呟いた。
「旦那、なにか分からないか?」
「今メルちゃんが言った通りよ。見て見ないと分からない、そもそも魔物なのか猛獣なのかもね」
「でも、此処の人達は魔物を倒そうとしなかったの?」
エスイルの質問にライラは眉をひそめ首を振る。
「街一番の腕利きが倒しに向かったけど、残ってたのは血塗れの折れた剣一本……他の人達は皆平和に慣れてしまっていてね……とてもじゃないけど門兵のあの子達でさえ怖がっているの」
「…………」
その表情は辛く悲しそうな物で――。
「街の人達は誰かが森に魔物を放ったって言っているんだ、だけど退治できるだろうディーネ達との連絡が取れなくてね……後でイリア様からちゃんと話があると思うよ」
「そう、だったんですか……」
メルはそう答えつつ、仲間達と視線を通わせた。




