125話 祖母の故郷へ……
メルは祖母ナタリアの故郷へと行くことを提案し、仲間達と共に旅を再開する。
しかし、その先に待っていたのは嘗てタリムの王に抵抗する為に設置された罠。
何とか無事切り抜けた物の……祖母の故郷はまだ遠い……。
崖の上に積まれた不安定な岩を警戒しつつ先へと進んだメル達はアルムと呼ばれる村があった場所へと辿り着いた。
そこにはかつて人が住んでいたのであろう廃屋があり、手入れも全くされていないのだろう草花が伸び放題となっていた。
「……ここが、マリーさん達の居た村……」
メルは辺りを見回すが、無事な建物は一切なく……。
「これもタリムの王の所為なんだよね……」
「そうだな、この村とトーナの村には冒険者が偶々通りかかって危険だと知らせて逃げたみたいなんだ」
それはメルも知っていた。
この村とこの先にあるトーナという村の住民の一部はリラーグで生活をしているからだ。
「それでメルちゃん、目的地はこの先にあるのかしら」
「はい、この廃村を抜けて行って……唯一ある森だって聞きました」
「そ、そう、でも森なんてどこにでもありそうだけど――」
ライノは心配そうにメルの言葉に返すが――。
「いや、この先に森は一つだ、トーナの向こう側、タリムの方にあった森は枯れてるからな……」
リアスが代わりにそう答えると、ほっとしたのだろう。
「そういえば、リアスちゃんもその場所知ってたのよね」
「ぅぅ、ごめんなさい曖昧で……」
メルは思わずしゅんとしてしまい、尻尾を垂らす。
するとライノは慌てて首を振り――。
「アタシこそ、ごめんなさい。でも、メルちゃんが謝ることは無いのよ? だって貴女が居ないとその街には入れないんでしょう?」
「そうだな、場所は俺が知ってるんだし……それよりもこの村は気を付けて進もう」
リアスの言葉にライノ以外の三人は首を傾げる。
何度目かになるが辺りを見てみると其処には朽ちた村があり、別に変わった様子などは無い。
「気を付けて進むって……リアスお兄ちゃん、どういう事?」
「そうだ、どういう事だよ?」
「ああ、ここは魔物が巣にしてるんだ、だがタリムやその森に行く以上避けて通れない」
リアスは村を見渡し、溜息をつく――。
「だから、気を付けて進むしかない」
「ま、魔物ってそんな怖いのが居るの?」
メルはおずおずとリアスに尋ねる。
すると彼は頷くとゆっくりと口を動かし始めた。
「ああ、ここに居るのはマタルラガルトだ」
「「マ、ママタルラガルト!?」」
メルとエスイルは揃って声を上げた。
その魔物について多少は知っていたからだ。
「ってなんだ?」
しかし、シュレムは腕を組み考える。
それに対しライノは頭が痛いのか抱え始め――。
「シュレムちゃん、マタルラガルトと言ったら肉食トカゲよ? 危険な魔物、でもなんでこんな所に?」
「昔、奴らの住処が大蛇に荒らされたらしくて、その影響で住処を移動してたらしいんだが、此処に落ち着いてしまったらしい……今は比較的におとなしい時期だ。騒がなければ抜けれるはずだ……」
彼はそう言うとシュレムの方へと目を向け――。
「騒ぐなよ?」
「お、おう……わ、分かってる」
シュレムが口元を押さえそう言うと不安そうに見つめる仲間達。
すると彼女は不満そうな表情を浮かべるがすぐに申し訳なさそうに眉を歪める。
「だ、大丈夫だ」
「ま、まぁシュレムも以前よりは無茶はしないから……」
「そうだな、とにかく急ごう!」
リアスはなるべく辺りが見渡せる場所を選びつつ歩き始めた。
マタルラガルトは元々谷底の様な狭い場所に巣を作る魔物であり、広い場所には狩り以外で出てくることは無い。
その習性を知っているからこそだろう……。
「でも、前にママ達に聞いた時はトーナの近くの山に居たって聞いたのに……」
「あっちは大蛇が出た方だな……恐らく危険だと判断したんだろうな……」
「そっか、近いから……っ!!」
メルは何故この村なのか納得した所でその表情をこわばらせた。
物陰から音がしたのだ。
彼女はすぐにリアスのローブを掴み――。
「メル?」
「何かあそこに居る……」
音の聞こえた物陰へと指を向ける。
するとやけにゆっくりとした動きで大きなトカゲが姿を現し……。
「す、すごい大きいよ? あれ、あんなに大きくなる魔物なの?」
初めて見るその魔物に呆然としたのはエスイルだ。
「ああ、あれぐらいにはなる……まだこっちには気が付いてないシュレム……分かってるな?」
「何度も言わなくても良いだろ……」
シュレムも前回の事があったからだろう声をひそめそう言い返すと魔物へと視線を投げるだけに留めた。
このまま魔物が通り過ぎるのを待つ、一行はそのつもりだったのだが……。
「う、動かないね?」
どこかに行く気配はなく、その場に居続ける魔物を見てメルは言葉を詰まらせつつ仲間達にそう言うと――。
「お、恐らく日光浴に出てきたのね」
「参ったな……」
メル達の目の前に居る魔物は彼女達に気が付くことなく、どこか気持ちよさそうに目を細めている。
それを見てメルはリラーグに居るデゼルトも日光浴が好きだったことを思い出し……。
「よ、良く見るとドラゴンみたいで可愛いかも?」
「「「「……………………」」」」
メルの発言に思わず引いているような表情で彼女を見つめる仲間達にメルは慌て――。
「な、何で皆そんな目で見るの?」
「いえ、だってドラゴンは可愛くないわよ?」
「寧ろメルとユーリさんぐらいだろ? デゼルト可愛いって言うのは……」
「う、うん……僕は怖いと思う……」
仲間からの散々な言われようにメルはがっくりとし、リアスへと目を向けるが――。
「百歩譲って懐いてるリラーグのドラゴンはともかく、あれは魔物だからな? これからどうするか考えよう」
「そ、そうだね……」
だが、彼もまたメルを庇う言葉なく彼女は再び項垂れると不満そうに尻尾を揺らした。




