123話 リシェスからの旅立ち
タリムによるまでに街が無い……他に方法はないか……そう問うシュレム。
するとリアスは頷き……聞きなれない地名「幻影の森」の話を切り出すのだった。
三人の様子に驚いたのはリアスではなくライノだ。
「知らないの? この辺りでは有名よ?」
「い、いえ……この辺りの事でそんな名前の森聞いた事無いです……」
自分達が知らないだけか、そう済ませる事にしたメルはパンを手に取り千切ると口へと運ぶ。
若干ぱさぱさしたそれはあまり美味しくはなかったが、今やなれた食事と言っても良いだろう……。
「それで、その森って危ないの?」
今まさにスープをすくって口元へと近づけていたリアスはそれを飲み込むと頷き――。
「ああ、何故かその森に入った場所に出て来るらしい……入った人の話ではいつまで経っても先が見えない森だって事だけど……」
「「「…………………………」」」
リアスのその言葉に思わずメル達は固まってしまっていた。
「そう、強張るのも仕方が無い、まるで幻影魔法がかかっているような森だから『幻影の森』って呼ばれてるんだ。昔はあんなのがあったって聞いた事はないんだけどな」
「そ、そう……なんだ……」
引きつった表情でメルはそう言うと平静を保とうとスープをすくおうとするが手が震え上手くすくえない。
そんな様子を見てかシュレムはメルの近くへと顔をよせ――。
「お、おい、もしかして……」
小声で話し始めるとメルは小さく頷き――。
「もしかしなくても、そうだと思う……」
「三人共どうしたの? 顔色が悪いわよ」
「う、ううん……何でもないよライノお兄ちゃん……」
エスイルもそれを知っているからだろう、メルへと目を向けた。
その顔はやはりどこか引きつっており――。
「何か知ってるのか?」
流石に気が付いたリアスはメル達へと問うと、やがてがっくりと項垂れたメルは周りに客が居ない事を確認するととうとう口を割った。
「そこが、私の案です……」
「……幻影の森が?」
「正しくは其処にある村だな……」
メルが口にしてしまった事で諦めたのだろうシュレムも情報を口にするとライノは頬へ手を当て考えるそぶりを見せる。
「確かに村があったって聞いたわ……でも、そこって確かもうないはずよね? タリムの王襲来以前には滅んだはずよ?」
「滅んでないんだよ……確かメルお姉ちゃんのお婆ちゃんが……」
ライノの疑問にはエスイルが答え、メルは意を決した様に顔を上げると――。
「そこはナタリアの生まれ故郷、幻影の森っていうのは多分結界の事だと思う……」
「ちょっと待て、じゃ……本当にあの先に何かがあるのか?」
リアスの言葉に頷いたメルは――。
「うん、だからまずそこを目指そう? 直接タリムに行くより安全だから……」
仲間達へとそう提案をするのだった。
朝食を済ませたメル達は荷物をまとめリシェスを発つための準備をしていた。
目指すはメルの祖母、ナタリアの故郷である村。
そこへと辿り着くには幻影の森と言う場所を抜けなければならないのだが……。
「さっきも言ったけどあの森は歩いてると外に出てしまうんだ……それをどうやって進むんだ?」
リアスはその方法が気になるのだろう……。
真新しいローブにしまい込んだ武具の一式を確認しつつ問う。
「あの森は方位の魔法を使っても駄目だって聞いたぞ?」
「うん、実はあの森はね、これが無いと絶対に辿り着けないんだよ」
メルは右腕の袖をまくり上げるとそれを見せる。
そこにはメルが魔法を使う為に刻まれた魔紋があり――。
「ま、魔紋が必要なのか? でも他の人だって――」
「あの森はナタリアさんの魔紋に反応してるんだ」
シュレムの言葉にリアスは呆気に取られ――。
「それって村人が外に出たらどうするんだ?」
「ナタリアが言う事には村の人は外に出てもちゃんと戻れるって聞いたよ」
「そ、そうなのか……どういう理屈の魔法なんだ?」
彼の疑問は最もだった……勿論メルもそれは本人に聞いたのだが……。
「なんでも監視の人が居て、その人が門を開いたり出来るんだって……だから村の人は森から出ても戻ることは出来るって言ってたよ」
そう聞くと納得したかのように頷いた彼は装備の確認が終わったのだろう、メルの方へと向き――。
「それはそれで、面倒な魔法だな……」
「う、うん……でもそれのお蔭でひいお婆ちゃんは今も元気みたいだから」
「みたいってメルちゃんはあった事が無いの?」
ライノもまた準備を終えたようでメルの方を向き、首を傾げる。
彼の問いに頷いて答えたメルはどこか嬉しそうな表情を浮かべ――。
「だから、あの村に行けるのが少し嬉しいんだ」
「メルお姉ちゃん、会ってみたいっていってたもんね」
「うん、ママ達はタリムの王を倒した後も言った事があるみたいだけど、私は無かったんだよね」
確認を終えたメルは鞄をしっかりと閉じると立ち上がり、それを背負う。
そして、仲間達へを瞳を向け……。
「よし、私も準備終わったよ!」
「ああ、なら出発しよう!」
リアスの言葉に一同は頷き宿の部屋を後にする。
メルは受付に居るアイビーへと顔を向け。
「アイビーさんお世話になりました」
「こっちこそ、またリシェスに来た時は寄りなよ」
「はいっ! 行ってきます!!」
メルの言葉に小さく笑ったアイビーは片手を上げ答えた。
「行っておいで! 気を付けてね」
メル達は彼女の言葉を受け、宿を出る。
その足で向かうのはリシェスの門――最初の目的地であるタリムももう少しだ。




