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120話 説得

 再会したメルの祖母と母は旅を止めるように告げる。

 当然の言葉ではあったが、ライノは味方をしてくれユーリ達と話をした。

 しかし、意見を変えない双方。

 そんな中ユーリはリリアの瞳を治そうとするのだが、もうすでに治っている事に気が付いた。

 その理由はメルの行動によるものだったのだが……?

「「式を変えたあああああ!?」」


 メルの答えに聞こえてきたのは母と祖母の声。


「メ、メルどうやって式を!? だって僕は……」


 そこまで口にしたユーリははっとし、もう一人の女性の方へと目を向ける。

 だが、そこには居るはずの女性はおらず……ゆっくりと部屋の入口へと向かっており……。


「ナタリア?」


 彼女は師でもあり、親友でもあり、母でもある女性の名を呼んだ。

 すると、身体をびくりと震わせた女性は立て付けの悪い扉のような音が鳴りそうな動きで首を動かし……。


「し、しかしだな? 魔法を知ると言う事は式を知っておいた方が良い、ユ、ユーリだって魔法の式に手を出し――」

「最初の時はナタリアが実際に確認をしてくれたよね? メルが自分の魔法を作ったなんて僕聞いてないけど?」


 その顔を見たメルはすぐにうつむいた。


 ゆ、ユーリママすごく怒ってるよ!? 笑顔だけどあれは……絶対に……。


「し、ししし、ししかしだな? ユ、ユユユーリ? その笑顔で迫るのは辞めてくれ!? わ、私はメルの為を思ってだな?」

「前にも言ったけど……魔法が危険な物だって僕に教えたのは誰だっけ?」


 ユーリのその言葉に恐らく祖母は震えているのだろう。

 だが、メルもおいそれと口を出す気にはなれず……垂れている耳を更に垂らし、尻尾には力が全く入らない。

 もし、怒りがメルに対して向けられているのなら尻尾は丸まっていてもおかしくない位には母に畏怖を覚えていた。


「わ、私だ……」


 そんなメルの頭の中を読んだのか、それとも読んでいないのかそれは分からなかったがナタリアがそう告げると――。


「それでメルに勝手に魔法を教えて危うく大怪我をするところだったのは覚えてるよね?」


 その事はメル自身も覚えていた。

 初めて浮遊の魔法(エアリアルムーブ)を使った時だ。

 魔法に失敗したメルは屋根まで飛んで行ってしまい、そこで驚いた彼女は魔法が解いてしまった。

 運良く屋根にしがみつけたのだが、そこからが大変だったのだ。

 余りの事にどうしたら良いのかメルは思いつかず魔法を唱えるも混乱の所為か魔法は使えず……。

 ついには泣き出してしまったのだ。

 下には困り果てるシュレムとシウス……だが、二人には魔法が使えずどうする事も出来ない。

 そんな中、助けに来てくれたのが母ユーリだった。

 無事救出された彼女は母と共に部屋の中へと戻り……こっそり魔法を教えていたナタリアはユーリ達に怒られていたのだが……。


「そ、それは……覚えている……」


 メルがそっと目を向けるとナタリアはユーリからその瞳を逸らし明後日の方向へと視線を彷徨わせている。

 たまにこの光景を見るのだが、いつもは強気なナタリアはこの時だけは母達に負けているのだ。


「合流したらフィーと一緒に話があるからね」

「ま、待て!? フィーにも言うのか!? フィーはメルの事となると……その……」

「だからだよ?」


 ユーリの言葉にがっくりと項垂れたナタリアが――。


「フィーの口調で言わんで欲しいんだが……」


 と口にした所で、ユーリはその瞳をメルへと向け――。

 メルは全身の毛が逆立つような感覚と悪寒を覚える。


「メル?」

「は、はい……」


 すっかり縮こまってしまったメルを見たからなのか溜息をついたユーリ。


「ヒーリングは回復の魔法だ。失敗しても他の魔法ほど危険ではないかもしれない、でも……何が起きるか分からないんだから」

「わ、分かってるよ……だから式を変えたって言っても言葉を入れ替えるような事はしてないよ?」


 そもそも、あの魔法は完成していたんだから……その必要はなかった。

 問題は短縮化された時に選ぶ言葉が違ってただけ……。


「え?」

「だから、その……ユーリママの作った魔法であってたの、でも略された詠唱が違ってて……それで本来の効果が出なかった……みたい……」


 そうは言ってもメルは言葉を徐々に小さくしていく……。

 いくら完成していたとはいえ、選ぶ言葉が違えば全く別の魔法になっていたかもしれないのだ。

 その事を考えてなかったが故にリリアは色を失った……。


「でも、少し失敗してたみたいで……そのリリアちゃん色が見えないって……」

「……だからなんだ?」


 その言葉は先程までユーリに怯えていた女性ナタリアの物で……。


「だからって……」

「私は元々太陽の下に何の対策も無しに出ることは出来ん、正直に言えばタリムの王が作った世界の方が過ごしやすいだろう……しかし、太陽が嫌いという訳ではない。ユーリが解いてはくれたが呪いにかかった時はそれなりに落ち込んだ物だ」


 ナタリアは笑みを浮かべそう口にし、立ち上がるとメルの頭の上へと手を乗せ――。


「見えていた物が見えなくなる、その不安は大きいだろう、だが見えなくなっていた物が見えた……本来ならばユーリ以外に治せなかっただろう……」

「でも……」

「勝手に魔法を変えたのはあまり褒められた事ではないと思うけど……大本を変えてないのは良い判断だよ」


 しゅんとするメルに告げるのはユーリ。

 彼女はまだ怒ってはいるのだろうが――。


「ちゃんと効果があったなら、ソティルの魔法でも治せるか分からない……」

「え?」

「ヒーリングを作った時、ソティルの協力もあったんだ……僕とナタリア、ソティルでなるべく似せる様にって考えてた……でも……その時にソティルは言ってたんだ『全く同じと言う風にはならないけど、ヒーリングで治せかけた物はヒールでは治せる』って」


 ユーリはそう言うとリリアの顔を覗き込むようにするが、リリアはぷいっと彼女から顔を逸らす。


「あ、あれ?」

「嫌わているみたいだな」


 ナタリアの言葉にメルは困ったように笑い、リリアの頭を撫でる。

 するとリリアは更に強くメルに抱きつき……。


「リリアちゃん、ちゃんと治るかもしれないんだよ?」

「いい……お姉ちゃんを虐める人嫌い……」


 そう口にし――。


「い、虐めては……」


 メルはそう返すのだがリリアは顔を押し付けたままいやいやと首を振る。


「ぅぅ……虐めてないのに……と、とにかくメル……その子は落ち着くまで待つとして旅は僕達が引き継ぐよ」

「でも、それじゃ……リラーグが……」


 母達が離れても冒険者は居る。

 しかし、リラーグには母達に依頼を頼みたくわざわざ足を運ぶ者達も少なくはないのだ。

 それに、メルにはこの旅を続けたいと言う思いもあった……。


「危険な旅になるんだぞ、それはメル……これまでの事を考えても分かるはずだ」

「………………」


 十分に理解していた。

 まだ十二といえどメルはこの数日間で普通に過ごしていれば体験しないであろう事をその身で感じ――。

 そして、仲間と共にここまでたどり着いたのだ。

 勿論、母や祖母が言っている事は正しいとも分かっていた。

 ここで旅を辞めリラーグへと戻る……それが一番安全だと言う事も、だが――。


「私は……旅を続けたい……」

「はぁ……だからね、ナタリアも言ってるけど――」

「だって皆が……精霊が苦しそうにしてるんだよ!? もしかしたら私達の知らない所で黒い魔法……禁術が広がってて所為で精霊が苦しんでるかもしれない! それなのに私は何もしないなんて出来ないよ!!」


 片腕の無い男が使った魔法、それを直接目にし……精霊の危機を感じたメルは声を張る。

 彼女にとって精霊は友であり、掛け替えのない家族同然だ。


「どういう事だ? 首飾りの事は聞いたが、それとは違うのか? 禁術の所為で精霊が苦しむ?」

「……実はね……」


 ナタリアの疑問にメルは答える。

 片腕の無い男、彼が使った魔法が精霊を苦しめている……死に至らせる原因ではないか? と……。

 そして、かつてのタリムの王もそれを使った。

 今もどこかで禁術は広がり続け……それがまだ幼いエスイルが必要とされた理由ではないか……と言う事を……。


「私は精霊()に支えられてきた……何時だって一緒だった……だから、助けたいの……」


 メルは母達から決して目を逸らさない様に告げる。


「今は一人じゃない、皆が居る……シュレムもリアスもライノさんも……エスイルだって手伝ってくれる……お願いユーリママ、ナタリア……私に皆を助けさせて……」


 その言葉を聞き、ユーリは泣きそうな顔を浮かべ……ナタリアは呆れた表情へと変わる。


「し、しかしだな!……本当に――」

「ナタリア……フィーが言ってた通りだ。これ以上言ってもメルが不機嫌になるだけだよ……」

「フィ、フィーナママが?」


 メルがその名を呼ぶとユーリは頷き――。


「フィーはメルが何も言ってこないのは旅を辞めさせられるとどこかで思ってるからだって言っててね……もう誰が言っても意志を変えないとも言ってたんだ……」

「あら、その人は良く分かってるのね……駄目だって言ってもメルちゃんは無茶するからね」

「ラ、ライノさん!?」


 ライノはふふふと笑い、リアスは半眼でメルを見つめる。

 更にはエスイルは頷き、カルロスやシュレムさえも困ったような表情を浮かべいるのがメルの瞳に移り――。


「ぅぅ……ご、ごめんなさい……」


 メルは仲間達に謝罪をする。

 するとユーリはメルの頭に手を乗せ優しくなで始める。


「だけど、無理だと思ったら引く事、シルフに頼んでフィーに……僕達に助けを求める事、良いね?」

「うん!」


 メルは母の優しい言葉に頷き、笑みを浮かべた。

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