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119話 再会

 メル達はリラーグから訪れたユーリとナタリアに再会した。

 しかし、褒められるという事は無く……どうやら逆の話があるようだが……?

 アイビーの宿へと戻ったメル達。

 勿論ユーリとナタリアも彼女達について来ており、二人は部屋へと辿り着くなりにっこりと微笑んだ。


「さて、シュレムにも色々と聞きたい事はあるんだが、まずはメル?」

「え、えっと……」


 メルはナタリアに目を向けられ瞳を逸らす。

 いつもはメルに優しいナタリアだが、彼女よりここに来るであろうフィーナの姿が無い事に違和感を感じ、ナタリアが本気で怒っているのだと感じたのだ。


「その……フィーナママは?」

「ドゥルガ達とイアーナに居るよ……それよりもメル、何で相談しなかったの!」


 ユーリの声に思わず耳と尻尾をびくりと動かし、目を閉じるメル。


「ま、まぁ……ユーリさん、メルは冒険者に頼ってはいけないって言われてたんだろ? それでまずは王様に会いに行ったんだよ……」

「それは聞いたが……」


 リアスの言葉に溜息をつくのはナタリアだ。

 彼女は眉をひそめ頭を押さえると――。


「エスイルの様な子供を連れて旅をする……メル達では力不足だろうに……今回の事はシルトへと直談判した。ただでさえ納得していないと言うのにメルへの罰にエスイルが巻き込まれると言うのはな……」

「とにかく、ここまで無事だったのは運が良かったんだ……」

「全くだ……シュレムお前も何も言わずに出て行って……シアとドゥルガが心配していたぞ! 余りにも頭に血が上っていたからイアーナに置いて来たがせめて一言くらい残していけ!」


 ナタリアの言葉に身を縮ませるシュレムは何も言わず……いや、何も言えなかった。


「分っているのか? 今回の事はケルムも怒っていたぞ……ケルムだけじゃないシュカもバルドも皆だ!!」

「ぅぅ……は、はい……十分理解してる」

「ご、ごめんなさぃ……」


 二人の様子に揃ってため息をつくユーリとナタリア。

 誰もが口を出せないかと思われたその空気の中――。


「ちょっと良いかしら?」

「なんだ……?」

「二人が居なかったら首飾りはとっくに取られていたわ、それにリリアちゃんだってメルちゃんが居たから助かった様な物なのよ?」


 ライノの言葉に目を合わせたメルの母と祖母は――。


「助けたことは素直に褒められる。だけど……何かが違ってれば全滅だったのは事実だよ」

「そうね、でもそれは冒険者なら誰でも同じ条件……それに仮に貴女達がエスイルちゃんについて行ってたとしても今回の事は起きたはず。その時、メルちゃん達は身を守れるのかしら?」

「ラ、ライノさん?」


 メルはにこやかな顔を浮かべるライノの雰囲気がいつもと違う事に気が付き、彼の名を呼んだ。


「リラーグには他の冒険者も居る、メルの安全は――」

「絶対に安全とは限らないわよね? アタシと出会ってからメルちゃんは無茶ばっかりをしてるわ……でも、それでも生き残れたのは経験を積んできたからじゃない? さっきから話を聞いてる限りだと相当大事にされているみたいだけどそれだけが教育じゃないと思うのだけど……」

「そうだな、メルが居なかったら俺とエスイルはカロンで捕まってた……いや、毒を盛られてたんだ死んでてもおかしくはない」


 リアスはライノの言葉に続きそう口にする。


「確かにユーリさん達が居れば安全ではある。でも。生憎俺には貴女達を雇う金は無かった……二人がついて来てくれると言ってくれた時には正直不安だったけど、今になって思えばあの時断らなくてよかったと思ってるよ」

「リ、リアス……」


 彼の言葉に頬を綻ばせたメルは嬉しさを押さえられないのだろう尻尾も揺らし「えへへ」と笑う。


「お金なんて……世界の危機なら状況を話してくれればそれどころの話じゃないよ……とにかく皆無事でよかった……此処からは僕達が行くからメル達は家に――」

「で、でもそれじゃ酒場はどうなるの? だって……」


 遠慮がちにリアスの方へと目を向けるメル……この旅を通し、やはり路銀が大事である事は十分に理解していた。

 母達となればそれも解決できるのかも知れない、しかしメルはこの旅についてきた理由を忘れたことは無かったのだ。

 そう……彼が、リアスが自分の見えない所で命を落とすのではないかという不安。

 それは今も同じ、いや……以前よりもその恐怖は重くのしかかる。


「メル……心配なのは分かるが、ユーリには傷を治す手段がある。クルムから聞いたが、状況が状況だここは私達に任せて置け」

「そ、それは……」


 十分に理解していた。

 死んでさえいなければ治すことの出来る魔法……。


「メル……話は後でちゃんと聞いてあげるから、それよりも目の事を聞いて来たよね? 誰か失明でもしたの? 傷とかだったら治せるはずだよ」


 もう説教は終わりと言う事なのだろうか? 優しい声にメルは思わずリリアの方へと向く……すると――。


「その子だね?」


 頷くと立ち上がりリリアへと近づくユーリ、その手をリリアの目元へと向ける。

 だが、リリアはその手の平から逃れる様に動く……その様子にユーリは驚き、瞬きをした。

 しかし、彼女はすぐに同じように手を向けるのだが、やはりリリアはそれから逃れてしまい……。


「リ、リリアちゃん? 大丈夫だよ? 怖くないから……」


 メルはリリアが不安がっていると思い、そう告げるのだが彼女は首を左右に振るとメルの元へ走り抱きつくと顔をメルへと押し当てた。


「リリア……折角ちゃんと治るんだ。少し我慢を……」

「や……」


 兄の言葉にもそう小さく返すリリア……。

 何故そこまで拒否するのか分からずメルは困り果ててしまうのだが――。


「メ、メル? その子見えてるよね?」


 ユーリはメルの名を呼び、首を傾げていた。

 それも当然だろう、メルが聞いて来たのは瞳がどうやって物体を捕らえているか……それを聞く理由は視力を失ったか著しく低下したかのどちらかだろう。

 しかし、リリアはユーリの手を避け、迷うことなくメルに向かって行った。

 何らかの方法である事も考えられたがユーリはすぐにその少女が目が見えていると判断を下したようだ……。

 何故すぐに分かったのか? それは簡単な理由だったユーリはナタリアの方へと目を向けその驚いた顔を見ていたのだ。


「メル、何をした? その子はお前が助けてくれたと考えているぞ?」


 そう、ナタリアの思考を読み取るという力、それを知っているユーリは彼女の顔を見て普通では治らない瞳が治っているのではないか? と考えたのだ。


「え、えっと……その……」

「メルちゃんが治したのよ? アタシの背中の傷も、自分自身の傷もリリアちゃんの瞳だって魔法で治したの」

「な、治したってだってメルが使えるのは――」


 ユーリは驚きを隠さず声を上げる。

 それもそのはずだ、ヒーリングという魔法は彼女が作ったもので元は誰もが使える回復魔法と考えた物だった……。

 しかし、それは理想からかけ離れた物でとても使い物にならない……。

 彼女はそう考えていたからだ。


「嘘、はない……先ほども言ったが確かにその少女はメルが治してくれたと思っている……それにしてもメルその子は……」

「犠牲者だよ……私達の家の……」


 メルはそれだけを告げると口を閉ざす。


 ナタリアはまた心を読んだみたいだけどリリアちゃんは悪くない。

 だから、それ以上は何も言わせない。


「そうか、リアスの妹か……」

「確かに似てるけど……それよりもメル!! ヒールは使えないのにどうやって……」


 精霊ソティルを継承することが出来なかったメルにはヒールと言うユーリの魔法は使えない。

 当然母に詰め寄られたメルは――。


「え、えっとヒーリングの式をちょっと変えました……」


 魔法の式に手を出した事を怒られるのではないか? そんな不安を感じつつ正直に告げたのだった……。 

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