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118話 帰還

 精霊の首飾りを使った精霊の救助は成功した。

 しかし、まだ問題は残っている……。

 アルたちの処罰はどうなるのだろうか?

「お騒がせした様ですみません」


 メルの命令通り、母達や首飾りの事は忘れたのだろう男はメル達へと頭を下げる。

 その笑みは不気味なほど自然であり、リリアはメルの服の裾を掴んだ。


「…………」


 それに気が付いたメルは何も言う事は無くただ彼女の頭を撫でるだけだ。

 いや、何も言えなかったのだ……。

 憎むべき呪いを使った。

 しかし、それしか彼らが平和に暮らすことは出来ないだろうと思ってしまったのだ。

 事実恨み憎しみに捉えられた彼は何もの人々を犠牲にしてきた。

 許されざる罪だ。


「では憲兵に話は通しておきますので」


 イーギがそう言うと青年の方も頭を下げ――。


「すみませんでした実験動物が手を離れてしまい街に多大な被害を……」


 彼については男の方の命令で記憶を操作されてはいるが、それもまたメルの望んだ事だ……。


 これで……良かったのかな?

 私がした事もこの人達と同じ事……酷い事をしてるのに皆は何も――。


「メルちゃん……」

「ライノさん?」


 だが、不安に思うメルに微笑みかけたライノは――。


「メルちゃんは彼らを確かに操ってるわ……でも憎しみだけで生きるのは悲しいわよ?」

「そうだけど……」


 もっと方法があったんじゃ? でも今は何も思いつかない。

 ママ達が生かすと決めた人を私が殺せるわけがない……許せない、絶対に許したくない。

 だけど、だからこそこの人を殺すことは出来ない……それじゃこの人と同じだ。


 メルはそう思い、黙り込む。


「お嬢ちゃん達にも世話をかけたね」

「いえ……」


 言葉を掛けられたメルはそれだけを答えると、腕の無い男は優し気な笑みを見せ――。


「なんだか分からないけど、懐かしい気がするよ……それに憑き物が落ちた気がする。おかしいよね……研究が一つ駄目になったって言うのにね」

「…………そう、ですね……」


 一部の記憶を失った彼ら……その笑顔は作り物だ。

 しかし……。


 これが私の選んだことだ……今更無かったことにはできない。


「私達は街に戻りますので……」


 メル達が街で憲兵に放せば彼らはミミズの事で罪に問われ牢に入れられるだろう……。

 しかし、イーギが情報操作をしてくれるらしく極刑は免れるだろうとの事だ。

 牢から出れば彼らは此処で平和に暮らす事になる。

 何も知らずに例え思い出してもその瞳からは光を失う事になる。


「…………行こう皆」


 メルは自身の選択を迷うのを止め、仲間達へ街へと戻るように促した。





 リシェスの街へと戻ったメル達はその足で憲兵の所まで赴いた。

 勿論、あの男達の事を報告するためであり――。


「そう言う事があったんです……」

「……なるほどな、分かった今日中にも向かう事にしよう」


 メルがイーギとの打ち合わせで作ったこれまでの経緯を説明すると憲兵は頷き答える。

 そして彼らはメル達に礼をし――。


「この度はこの街の冒険者ではない貴女達には大変お世話になった」

「い、いえ……私達はこれで……」


 感謝をされた事に何故か違和感を感じたメルはそう言い詰め所を出ると溜息をつく――。


「では、店へと戻るよジャッドも心配しているだろうからね」


 外に出た所でイーギはそう口にし、メルは頷く。


「あ、はい……そうだ、ジャッドさんなら酒場に――」

「そうか、寄ってみるよ。それと今回の事で渡したい物がある明日取りに来てくれるかい?」

「渡したい物? なんだよそれ……」


 シュレムは何も思いつかなかったのだろうが、メルにはそれが分かり慌てて両手を前にするとぶんぶんと振り始める。


「いえ、お、お礼とかは良いですから! 元はと言えば私の家の問題ですし!」

「そうは言っても命を救われたんだ……いや、命に関わらずとももう少し遅かったら……あのミミズを入れられていた」

「でも……」


 確かに彼を助けには行った……。

 しかし、メルは自身でも言った通り自分の家の問題でもある。

 更に言えば冒険者ではない彼女は依頼を受けてもいないのに何かを受け取るのに躊躇したのだ。

 

「冒険者じゃ……ないですし……」

「……助けてもらって相手が冒険者じゃないから礼を渡さないと言う方が失礼だと思うよ?」


 だが、イーギは微笑みつつそう言うと――。


「いや、寧ろ冒険者じゃないからという理由で礼を断られるとは思わなかった……明日来ないのならばこちらから出向く、受け取ってもらわないとこっちが気が済まないんでね」


 笑みを決して崩すことなくイーギはそう言うと頭を下げて去って行く……。

 これ以上の拒否は受け付けないと言う意味だろう、メルは困り果てたのか尻尾から力を抜くが――。


 でも、そうすると依頼を受けてお礼をもらう冒険者って……なんだろう?


 そんな疑問を浮かべる……。


「おーい! メルーー!!」


そんな時、イーギの去って行った方向からメルの名を呼ぶ声が聞こえた。


「ん? あの声って……」

「カルロスお兄ちゃん?」


 メルは彼の声に気が付きゆっくりと顔をそちらへと向ける……すると――。


「ひっ!?」

「ど、どうした? メルゥゥ!?」


 メルの小さな悲鳴に釣られシュレムも同じ方へと目を向ける。

 するとそこに居た者達を見てやはり悲鳴のような声を上げ――。


「やっと見つけた……」

「メル……なんで小さな子が増えているんだ?」


 笑顔が張り付いたままのメルの()と祖母がそこに居たのだった……。

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