117話 精霊を助けよう
見事片腕の男を無力化させたメル達。
しかし、戦いの中、思わぬものが傷ついていた……それは精霊達だ。
彼女達を救うため、首飾りの力を使う事にしたメル達だったが?
「く、首飾りとは……なにかな?」
そう尋ねてきたのはイーギだ。
彼の問いにメルは困ったような笑みを浮かべリアスの方を向くと彼は頷き――。
「此処で内緒にする訳には行かない、それに拘って精霊を見捨てる訳にはいかない……俺達の旅の目的は精霊を救う事だ」
リアスの言葉を聞き、メルは頬を緩ませる。
「首飾りは精霊を生み出すためのものなんです……」
「精霊を……? そうか、そう言えば聞いた事がある……精霊が少なくなると砂漠が広がったり海の生き物が死に絶えたりすると……確か数年前もメルンの精霊達が力を失いエルフの使者がそれを助けたんだったか……」
実の親の事を言われると嬉しい反面、やはりどうにかして冒険者と認めてもらいたいと言う気持ちになるメル。
だが、今はただ頷き――。
「はい、でもそれでは新たに精霊を生み出すことが出来ないんです……だから今いる精霊達の命は一つしか無くて……」
「一つって確か精霊は思考を共有するんだろ? 旅を急ぐのは分かる、だが……見捨てるとは……」
「ああもう、うるせぇな!! とにかく精霊が今死にかけてるんだよ! どうにかして助けないとさっきのあの黒いのの所為でここら辺が枯れるかもしれないんだぞ!!」
シュレムの叫びにイーギは身を引き――。
「すまない、職業病みたいな物でね……」
「準備は進めてるんだ……シュレムは落ち着いてくれ、イーギさんすまない」
リアスは首飾りをエスイルへと手渡し終わった所で二人にそう告げる。
するとイーギは「気にしないでくれ」と返し、シュレムは何処か納得がいかないような表情を浮かべた。
「これ……どうやれば……」
「残念だが、使い方は聞く前に亡くなってしまったんだ……だけど――」
「マジックアイテムもアーティファクトも魔力を込めてつかう物……でもエスイルは魔力が無いから……」
そう、少年が持つ首飾りはアーティファクトの一つだろう……。
しかし、メルが言った通りエスイルはメルと同じ混血ではあるものの魔法が使えない。
先程彼女が言った通り、魔力が無いからだ……。
でも、エルフが人に託したって事はそれは森族にしか使えない道具のはず。
アクアリムと同じアーティファクトって言ってもその使い方は根本的に違うってことは無いはずだよね?
要は魔力か精霊力かの違い……それに魔力って言うのは精霊力を自身の体の中で使いやすい形にした物……と言う事は――。
「精霊力を込めて、皆が元気になる様に想像するんじゃないかな?」
「メルちゃん何か根拠はあるの?」
「うん! だって魔法は元々森族の精霊魔法を真似た物……精霊に力を借りないって言う違いはあるけど、火をおこしたり、風を吹かせたりできるでしょ? ならエルフの作ったそれは精霊力で動くかもしれない!」
「……そうだな、試してみる価値はありそうだ。エスイルできそうか?」
リアスの言葉にエスイルは力強く頷き首飾りを身に付ける。
そして、目を閉じ祈る様に両手を合わせた。
それを見守る一同の中、メルは三人の精霊を抱えたままエスイルと同じように瞳を閉じ――。
お願い……この子達を皆を助けてっ!!
そう強く願った……すると――。
「綺麗……」
リリアの感動を含んだ声が聞こえ、メルはゆっくりと瞼を持ち上げる。
「わぁ……」
それを見てメルは表情に明るさを取り戻した。
首飾りが光っているのだ……それもただ光っているのではない。
母ユーリが放つ、傷を癒すあの暖かな光と全く同じだったのだ……。
それを見てメルは精霊達へと目を向ける――そこには徐々にだが顔色が変わっていく精霊達の姿があり……。
『メル……?』
うっすらと目を開けたシルフはぐったりはしている物のどうやら窮地を脱したようだ。
メルは抱きかかえた精霊達を更に強く抱きしめると涙を流した。
「良かったぁ……」
ただそれだけ、たった一言ではあったがそれはメルの心から出た言葉だった。
「メル終わったぞ」
メルが精霊の様子を見守る中、シュレムは彼女へと声を掛け横に座る。
「精霊達は大丈夫か?」
「うん、まだちょっと元気はないけど……これなら大丈夫そう」
メルはそう言うとシュレムには見えないが、確かに自分にしがみつく精霊達を見下ろした。
「連れて行くか?」
心配そうに一点を見つめるメルを見てシュレムは其処に精霊が居ると悟ったのだろう……。
メルにそう提案するが、メルはその言葉に首を振る。
「街より、こっちの方が精霊にとって住みやすいはずだから療養するならここの方が良いよ」
精霊は敵となる存在が居ない。
獣に襲われることもなく、魔物も同等だ。
だが……。
「人間……魔族が精霊の天敵だったなんて、知らなかった……」
「…………」
ユーリママは特別なんだ……。
そして魔族の血を引く私も……ナタリアも……ううん、酒場の人達はママのお蔭で精霊に信じられてた。
「でも、ほら……もう大丈夫だ! リアス達があの黒い魔法の研究日誌? を見つけてさ、燃やしてくれたぜ?」
「ありがとう……そうだね、もう……あんな魔法使える人なんかいないよね」
メルはそう言うと呆然としている男へと目を向ける。
彼は先程メル自身がミミズを使い呪った……今は安全の為そこに座らせているが、去る時には何もかも忘れて青年を息子と思い静かに暮らさせる予定だ。
青年の方は男にそう操る様に伝え、それ以降は一切手を出さない様にと告げてある。
万が一の可能性はあるが、イーギと街が連携をし彼らを監視する手はずになっているのだ。
「…………でも、あの人は何処でこの魔法を?」
禁術と言われている魔法、それをどこで学んだのか?
メルとユーリが使う混合魔法も禁術と同等だとナタリアに言われた事があったのだが、精霊に対しては無害だ。
もし何かあるとすればメルが、いや母フィーナが気が付くだろう……。
だが、あの黒い魔法は母ユーリが混合魔法を作る前にすでに存在しており、長い時を禁術とされていたはずだ。
そう言えばナタリアが言ってた……タリムの王は禁術を使ってたって……ていう事はやっぱりこの人は王の部下……。
でも、こんな危険な魔法……フィーナママが何で気が付かないの?
「メル、精霊が大丈夫そうならそろそろ戻ろう!」
リアスの声に振り向いたメルは頷きつつ、先程浮かべた疑問の答えを考えるも思いつかないのだった。




