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116話 メルの怒り

 片腕の無い男はやはり、母達を狙う者だった。

 だが、そんな彼はイーギを攫い痛めつけるだけではなく、禁術を使い精霊達も傷つけていた。

 その事を知り、メルはその小さな身体を震わせ……怒りを感じるのだった。

「ふ、ふざけるな! お前はフィーナの娘だろ! 血の繋がっていないお前がアイツと同じ目をするはずが――!!」


 男は叫ぶが、メルにとってはどうでも良い事だった。

 メルの身体には確かにユーリとナタリアの血が流れており、それを知る仲間や家族が居る。

 目の前の男が嘘だなんだと叫ぼうにも、それは変わらない事実……それよりもメルは――。


 許さない……この人を許しちゃいけない……。

 このままじゃママ達や人間だけじゃない、精霊が……皆が殺される!!


「はは、ははははは図星だろ? 図星だから黙ったんだ!!」

「……リアス、私の剣を……」


 メルはリアスからアクアリムを受け取ると、その刃を抜き放つ――。

 祖母より受け継いだその剣は古い柄からは想像が出来ない程刃が美しく……。

 その剣を目にした男は目を見開いた。


「お、お前、それは……ナタリアの……」


 メルは驚く男の言葉を聞きつつも青年の方へと目を向ける。

 彼はリアスの毒でぐったりとしており……。


「その人をお願い」

「ああ……ってメル何をするつもりだ!?」

「まさか一人で戦うとか言わないよな?」


 リアスとシュレムは驚いているが、メルは二人に向け微笑むと――。


「大丈夫、一人じゃないから……それに危なくなったらリアスとシュレムが助けてくれるでしょ?」


 メルの言葉にホッとした様子の二人から目を離し男へと目を向けると彼は先程までの強張った表情を崩し――。


「結局お前たちは仲間か! 仲間に頼って何になるんだ! 一人の方が良い、足を引っ張られず出来るからな」

「あの人は貴方の子供で仲間じゃないの?」


 彼の言葉にメルは問うが男は大声で笑い始め、暫くその笑い声が続いたかと思うと急に静かになり――。


「あいつは子供ではない……だが最高傑作だよ。俺を裏切らず、父と慕う様に作った最高の武器だ」

「……作った?」


 生き物を作ったって事? でもどうやって?


「その顔知りたいか?」


 彼の笑みを見てメルはぞっとした……。

 相手は人だ、だが……メルが出会って来た悪人、奴隷商人やリアス達を攫った男そして……老人とは違う恐怖を感じたのだ。

 そしてその理由は――すぐに分かった。


「子供だよ! まだ幼い奴らを攫い実験をした……分かるか? お前らが殺した三人は人だ……お前らは無害な人を殺した訳だ」

「――ッ!?」


 メルは思わず目を見開き――彼に対し畏怖と同時に怒りに音が鳴るほど歯を噛みしめる。


「俺達が殺した? お前が――!!」


 リアスは堪らず叫ぶがメルは手で制する。


「メ、メル?」

「人殺しは貴方だよ……それに、貴方は人の形をした魔物だ!!」

「はははは、よく言われたものだ……だが、ガキがそう吠えた所で何が出来る? 現に先ほどから一回も仕掛けて来ていないだろ」


 確かにメルは剣を抜いただけだ。

 だが、それで気が付いてしまったのだ。


「剣を見ただけで一瞬怯えたよね? 子供相手に何も出来ないのは貴方だ……予想外だったんでしょ? 最高傑作が負けたのが……だからあの夜の後は戦えないカルロスさんの所へ現れただけだった」

「――っ!」

「その男の人が動けない今、貴方を守れるものはその禁術しかない!! それも自分の命を削る様な使いたく無い物を!!」


 メルの言葉に思わず後ろへと一歩下がる男――。

 だが、メルは剣を構えると男へと向かって走り――。


「クッ!! 無抵抗な人間を狙うのか!? お、お前の母は俺を許したぞ!!」


 その言葉にメルが止まると思ったのだろう……。

 しかし、メルの足は止まらず彼女はその刃を振り下ろす――だが――。


「ひっ!?」

「…………」


 メルはその首を切りつける寸での所で刃を止めた。

 そして、男を睨みつけたまま――


「子供でも貴方なんて簡単に殺せる……ママ達が貴方生かしたなら、そうする……だけど、今後悪い事をして私以外の人が来たら――貴方はあっけなく死ぬよ。ここでもう止めるか、それとも続けるかどっちにする?」

「ふ、ふざけるな! あの女を殺すまで俺の復讐は終わらないんだよ!!」


 その瞳は暗く……まるで何も捕らえていない様だった……。

 そんな彼を哀れに感じたメルの目に映ったのは彼の懐にあるあの筒だ。

 メルは刃を突きつけたまま、それを手に取ると――。


「これって意のままに操れるようになるんだよね?」

「な!? だから何だって言うんだよ!!」

「詳しく教えて? じゃないと――」


 刃を押し付けるメルに恐怖を感じたのだろう男は慌てて――。


「温かい所を好むからな、耳に近づけると相手の身体に入り込む呪いだ! もしミミズが外に出た時間違っても俺を狙わない様に視力を奪える」

「視力を本当に?」

「…………」

「本当に奪うことが出来るの?」


 そう言うメルは自分でも驚くほど低い声だった……。

 男はメルの問いに頷き――。


「……ああ、ミミズが出るような事を……例えば命令違反や衝撃を与えれば視力を奪える。そう言う風に作った……それにそいつは生物だ呪いの道具の副作用もない!」

「そうなんだ……」


 呪いを使うのには抵抗があった……。

 だが、メルはこの男を生かした母達と同じで殺すと言う選択肢は出せなかったのだ。


「や、やめ!?」

「そうやってリリアちゃん達も操ってきたんでしょ?」


 メルの言葉の後に続いたのは男の悲鳴――。

 ぐったりとする彼を目にし、メルはアクアリムを鞘へと戻すと――。


「メ、メル……いくらなんでも甘すぎるぞ、目が見えなくなっても悪さをするかもしれないんだからな」


 駆け寄ってきたリアスは男を睨むがメルは首を横に振った。


「そんな事無いよ……一生操られてあの人と暮らすか、一生光を見ずに生きるかしか選択肢はないよ……だってあの人は子供に脅されてやめろって懇願するほど弱いんだから……」


 そう……この人は私に操られてあの男の人と此処で暮らす。

 もし、ミミズが出る事があっても彼の視覚は無くなり、何も見る事も出来ない。

 でも、仕方が無いって言ってもやっぱり呪い何て使いたくなかったよ……。


「それより、イーギさんは無事だよね?」

「ああ、なんとかね……君達のお蔭で助かったみたいだ……」


 イーギは目を覚ましたようで答えてくれ、メルはほっとしつつも――。


精霊達()は?」


 その顔にメルは悲しげな表情を浮かべそう告げた。

 慌てて目を向けた所には苦し気にしており、今にも倒れそうな精霊達が見え……。


「精霊に何かあったのか!?」


 リアスの言葉に呆然としている男へと目を向けたメルは頷き答える。


「あの魔法……精霊の命も奪ってた……どうしよう、ユーリママが居ればすぐに助けられるのに……」


 メルは慌ててシルフを抱き寄せるが、やはり元気はなく……自身では何も出来ない事を歯痒く感じた。


「何とかできないかな……」

「……何とかって」


 リアスはメルの期待に応えようと何かを考え――。


「つってもユーリさん以外にそんな魔法」


 シュレムはそう言うと唇を噛む、しかしリアスは何かを思いついたのだろう。


「首飾りだ! エスイルに精霊の首飾りを使ってもらう……精霊を生み出すほどの力が本当にあるなら、助けることが出来るかもしれない!」


 彼はそう言って荷物の中から首飾りを取り出す。

 メルは頷き、エスイル達のいる方へと目を向けると――。


「エスイル、リリアちゃん、ライノさん! 早くこっちに!」


 三人を呼び寄せるのだった……。

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