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113話 伝言

 メル達は集めた情報の中にアルという情報屋がかつて居た事を知り、その話を母達から聞くためにシルフへと伝言を頼む事にした。

 母達が特に地方に言っていたらしいフィーナが知らないはずがないそう思ってはいたのだが?

「ちょっと待って」


 シルフへの頼み事をした時に止めたのはライノだ。


「ま、待ってって何でですか?」

『?』


 メルは彼の言葉に疑問を感じ、シルフも彼の言葉は分からずともメルの言葉で気が付いたのだろう……。

 青年へと目を向ける。


「メルちゃんはこの事を解決したかったみたいだけど、お母さんたちに伝えていいの? その方が得策だとは思うけど……」

「……あ」


 その事に気が付きメルは一言を発するがすぐに首を縦に振る。


「ママ達もなんとかしようって動いてる……なら情報は共有した方が良いよ。でも、もし戦うなって言われても私は戦う……ママ達を狙われてのんびり見てるだけ何て出来ないから」

「……そう、なら伝えた方が良いわね」


 メルはその言葉に頷くと仲間達も頷く……。

 そして彼女はゆっくりとシルフへと目を向け――。


「シルフお願い……」

『うん! すぐに行ってくるね!』


 今度こそシルフは飛び立ち、ユーリ達の元へと向かう。

 それを見送ったメルはリリア、そしてカルロスへと目を向けた。

 先程の戦闘の事から察しリリアは戦えないだろう……武器を持たせるだけより不安にさせてしまったかもしれないと反省をし……。

 同時に戦う術の無いカルロスに不安を覚えたのだ。

 エスイルにしてもまだ不安は残るが精霊召喚を行えると言うのは強みだ。

 だからこそカルロスとリリアの二人が心配になったのだが……。


「オイラ足手まといだよな……」


 カルロスのその言葉にはメルだけでなく、彼とリリアを除いた皆が首を横に振る。


「ち、違うのか?」

「違うよ……だってここまで連れて来てもらったんだし……カルロスさんは足手まといなんかじゃない」

「そうだな……カルロスが居なければ俺達はここまで来れなかった……」


 メルとリアスの言葉に続き、何故か溜息をついたシュレムは――。


「それ位ならオレにも分かる! 第一旅に馬車は必要だろ? それにカルロスのお蔭で金もなんとかなったんだしな!」


 そう言い切った彼女は笑い声を上げ――それに続きライノもくすりと笑う。


「そうね、お蔭でアタシの薬も売れたんだから、足手まとい何てそんな訳が無いわ」

「ほ、本当か?」

「うん! だってカルロスお兄ちゃんのお蔭で僕達助かってるんだから!」


 エスイルの屈託のない笑みにカルロスはほっとしたのかやっと笑顔を取り戻すが、リリアはその表情を曇らせたままであり……。


「ごめん……なさい……」

「リリアちゃん……リリアちゃんはもう謝るの止めようね?」


 メルの言葉にリリアは目を逸らすがメルは彼女の傍に座り、彼女を抱きしめた。


「リリアちゃんのお蔭でママ達が危ないのが分かったんだから、それにリリアちゃんも助けることが出来たんだから」


 何でこの子を攫い、洗脳してママ達を狙ったのかは気になる……だけど、そのお陰でリリアちゃんは助けられた。

 だから、リリアちゃんが謝る理由なんてない……本当に悪いのはその人なんだ。


 メルはリリアの頭を撫でつつそう考えるとすぐにその瞳を仲間達へと向ける。


 ママ達になんて言われても私があの人達を許せない。

 それに……今は私一人じゃない……だから――きっと……。


 仲間達と力を合わせれば出来るはずだ。

 メルはそう信じ、母達の言葉を待つ事にした……。







 それから暫くして……。

 メル達はこれからの事を話していると外が慌ただしくなり、警戒した彼女達は武器を構える。

 勿論メルはリリアを背に隠し扉を睨んでいると――。


「ちょ、ちょっといきなり! 何の要件かぐらい言ってもらわないと困るよ!」

「すみません! ですが事が事なんです!」


 女性と男性の声が聞こえ――メルは聞き覚えのある声に首を傾げた。

 片方はこの宿の主アイビー……そしてもう一人は先程あった男性で――。


 あれ? あの人……確か、名前は――。


「ジャッドさん?」

「え? ジャッドって誰だっけ?」


 シュレムの言葉に一同は思わずがっくりとするが、ライノが溜息をつきながら答える。


「あのね、シュレムちゃん……さっき会った」

「情報屋のおっちゃんか!」

「ああ、あってるようであってない……全く……だけど、一体どうしたんだ? 情報を掴むして早いし、何処か慌ててる様だ……」


 それは先程から聞こえるやり取りでメルは理解していた。

 勿論エスイルも同様なのだろう、不安そうな顔をメルに向け――。


「イーギさんは一緒じゃないみたい何かあったのかな?」


 メルは警戒しつつも扉を開き声の聞こえる方へとその顔をのぞかせる。

 すると彼女に気が付いたジャッドは――。


「おお! お嬢ちゃん大変なんだ! 旦那様が……」

「イ、イーギさんがどうかしたんですか?」


 彼らと別れてからはそれほど時間が経っていない。

 しかし、ジャッドの慌てようはただ事じゃなく……。


「ええ、早速出かけようとした所……変な男に襲われてね、君達にこの手紙を渡せと……」


 そう言って彼は紙をメルへと手渡す。

 そこには大きく「また人を巻き込むのか?」と書かれており……。


「またってこの前の夜の事なのかな?」

「それは知っているが、幸いけが人は出なかったと聞いている……だから何の事か聞いたんだが――」


 その男は答えずに去ったのだろう……ジャッドは言葉を詰まらせ――。


「イーギさんはその人に?」

「ええ、攫われてしまって……余りの手際の良さに成す術が無かった」


 唇を噛み悔しがる彼の言葉を聞きメルは呆然とした。


 まさか、男ってあのお兄さん? だとしたら私達と別れた後につけられてた!?

 そんな、臭いも音も聞こえてなかったのに……。


「メル……どうするんだ?」

「どうするって……」


 そんなの一つしか……。


 メルがそう口にしようとした時――シルフが戻って来て彼女の目の前で舞うと――。


『メル! ユーリがそのままそこで待っててって言ってたよ』

「……」


 母の判断は正しいのだろう……だが――。


「シルフ……伝えて、早く来てって……ジャッドさん、その男の詳しい話をお願いします」


 シルフに再び伝言を頼むとジャッドへとそう告げるメルの瞳はゆらゆらと揺れており……。

 それはまるで小さな火が生まれた様にも見える物だった……。

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