112話 得られた情報……
メル達はイーギに老人の事を聞く。
しかし、得られた情報は養蜂の関係で街を追い出されてしまったという事と、なぜか女性を恨んでいるという事だった。
狂ったのは一体なんのだろうか?
「あ、最後に聞きたい事があるんです」
メルは先程酒場で得た情報を思い出し、イーギに尋ねる事にした。
「なんですか?」
「アルって言う情報屋さんが居たそうですが彼はなんで……」
そう尋ねるとイーギはその表情を変え――。
「ええ、確かにこの街に居ました……質の良い情報を持っていたり、場合によっては情報操作なんかもやっていましたね」
彼はそこまで言うと一息を付き再び語り始める。
「ですが、十数年前に姿を消しまって……それ以降帰ってきていないんですよ……噂では情報操作で恨みを買い、殺されたと言われています……そう言えばあの男性は確かアルさんの知り合いだとか聞きましたね」
「そうだったのか……そんな情報屋が居たんだな……」
感心するリアスだったがすぐにその顔を残念そうな物へと変える。
「でも、その人はもういないのか……」
彼が残念そうにしたのは情報操作と聞いてだろうか? などとメルは考えつつもイーギの機嫌を損ねていないか気になり彼の方へと向く。
すると彼は変わらない笑顔で――。
「気にしないでください、僕は元々アルさんに憧れて情報屋になったものですから師を褒められている様で嬉しいですよ」
「そ、そうですか……」
本当に嬉しいのか若干弾んだ声のイーギに驚いたメルだったが、すぐにほっとし――。
「では、私達の方も調べてみますので……」
「ええ、アルさんの事も含めてこちらでも調べます……もしなにか分かったらすぐにお知らせいたしますので」
先程と同じ言葉を繰り返すイーギに感謝しつつ、メル達は揃って情報屋を後にしようとした時――。
「おや……もう帰ってしまうのかい?」
扉が開き、そこから顔をのぞかせたのは先程去って行ったジャッドという男性だ。
彼はまたもや手に包みを持っていてそこからメルの鼻孔をくすぐる匂いがし……。
「すっかり忘れていた……すまないジャッド皆さんはお帰りのようだから、そのガレットは今お渡ししてくれるかな?」
「畏まりました」
ジャッドはメルへ包みを差し出し――。
「先に持ってきた物は冷めてしまっているので新たに人数分買っておいたよ……」
「あ、ありがとうございます」
それを受け取りメルは思わずその顔を綻ばせる。
甘い香りに懐かしさを感じたからだ。
フィーナママの作るガレット美味しいんだよね……。
もし、ここまで来てくれるなら作ってもらいたいなぁ……。
彼女はそんな事を考えつつ、頭を下げると仲間達と共に今度こそ情報屋を後にした。
宿へと戻ったメル達はガレットをかじりつつお互いの情報を教えあう……とは言ってもリアス達の情報はほぼイーギから聞いた物だ。
「でも、街の外に居る理由の一つがこれか……」
リアスは首を傾げつつ食べかけのガレットを見つめる。
それに釣られてメル達もそれぞれ自分達が持つそれを見るのだが……。
「確かに蜜は需要が高いし……養蜂が安定するまで高いみたいだけど、魔物の研究って言うのも気になるね?」
「もう一つ気になる事あるな」
メルの言葉に頷きつつそう続けるのはカルロスだ。
「もう一つってなにかしら?」
「他に何かあったか?」
揃ってそう言う二人に溜息をつくカルロス……。
彼はがっくりと肩を落とし――。
「シュレムはともかくライノさん、ふざけなくても良いんじゃないか?」
「あらあら……酷い言われようね? でも他に気になった事ってなに?」
「……あの情報屋が師と仰いでるアルって人だよ……そんな情報屋が居たってのは初めて聞いた」
カルロスはそう言うとメルの方へと目を向け――。
「メルはリラーグの冒険者の娘なんだろ? 聞いた事はないのか?」
「……ううん、私は知らないよ? リラーグではクロネコさんが酒場専属って言っても良いし……それにリシェスには旅の途中で寄る事はあったとは聞いたけど……」
あれ? でもユーリママと会う前からフィーナママは凄腕の冒険者で何度も遠征に行ってたって……。
それならリシェスに来てもおかしくはないよね? そんな時、ママが情報屋を頼らない事ってあるのかな?
ううん、それは無いよね……だってクロネコさんとは仲が良いって言いきれる訳ではないのに互いにその腕は認め合ってるし、情報屋は冒険者にとってかけ街の無い存在だって皆も言ってた。
それなのにママが情報も無しに何かをする訳が無いよ……。
「……フィーナママはリシェスに来た時にどうやって……」
「情報なしでも大丈夫だったとか、そもそもリシェスに来た事が無いんじゃないかな?」
エスイルの言葉にメルは首を振る。
それが違う事は先ほど考えた理由からも確かと言っても良いだろう。
「冒険者にとって、いや旅をする者にとって情報は生命線だ……それを怠る様な冒険者が生き残ってるわけがない……」
「わたしもそう思う……」
リアスとリリアの言葉に首を縦に振るメルはゆっくりと尻尾を揺らし手を顎へと当てる。
どう考えても妙だ……ましてやリアス達は現在評判の情報屋の元へ向かった。
その情報屋が以前の話に出されても不機嫌にならないと言う事は彼がすでに買われているか、もしくは彼が言った通り師と思っていると言う事、そして最早いたとしても自身が一番だという自信がメルとしては考え付く。
「……なんか変だよ……」
メルはそう結論を出すと何時もの定位置に居る精霊に声を掛けた。
「シルフ……何度もごめんね、お願いがあるの……」
『何? メル」
シルフはメルの言葉を聞くと嬉しそうに空を舞いメルの目の前まで移動をする。
「ありがとう、シルフ……アルって人の事聞いてもらえるかな?」
メルはそんな彼女に感謝しつつ願いを伝えるのだった……。




