111話 イーギの情報
メル達はリアス達と合流するため情報屋の元へと訪れた。
そこで出会ったのは優しそうな老人、彼は情報屋イーギの関係者らしく、快く屋敷の中へと迎えてくれるのだった。
「さ、座ってください」
メル達はイーギという男性に座るよう促されリアス達の隣の椅子へと腰を下ろす。
「さて……確か街の外に住んでいる人の事だったよね」
その言葉にメル達は頷く……すると、ジャットという男性はガレットが入った包みをイーギへと手渡し部屋の外へと向かう。
恐らく足りない分を買いに向かったのだろう……。
「それは……さっき言ってた」
リアスはその包みを見てイーギに問うと彼はゆっくりと頷いた。
その事に首を傾げるメルは――。
「さっきって?」
そう質問をするとシュレムが難しい顔をしながら腕を組み答える。
「何か良く分からないが蜂を育てる方法はその男が持って来たらしいんだ」
「それでこの街に蜜が安価に出回るようにまでなったらしいわ」
「つまり、金がある理由は養蜂のお蔭らしい……でもオイラは疑問だよ……」
カルロスの言葉にメルも同意で首を縦に振る。
街に貢献したのならなぜ街の中に居ないのか? ましてや高価であった蜜を街に流通させたのだからそれなりに大きな屋敷に住んでいてもおかしくはない。
だが、これまで聞いた事では男は街の外に居る。
「なんで……外に?」
「ああ、それなんだが……養蜂技術を教えてくれたのは良いんだが……その……要求があまりににも理不尽、でね」
「理不尽?」
繰り返される言葉にイーギは溜息をつきながらも口を動かす。
「まず、売り上げの殆どが彼の元へと行く……勿論、彼がもたらしたものだ。ただとはいかないだろうが彼の要求では損をしてしまう……つまり事実上養蜂が出来ないものになってしまってね」
「それじゃ意味ないだろ」
リアスも呆れた様な声を出すが、メルの隣に座る少年エスイルは「あれ?」っと言い。
「でも、今はガレットがそんなに買えてるよ?」
そこにある包みを指差して疑問を浮かべる。
ガレットは蜜をたっぷり使うお菓子だ。
匂いからして目の前にあるガレットに使われてる蜜が少ないと言う事はないだろう……。
「ああ、街の皆と領主様が彼の要求が飲めないと言ったんだ。……タリムが無くなり養蜂が出来るのがリラーグになってしまって仕入れにもお金がかかる様になってしまったからね」
「なるほど……でもそれじゃ、問題になるだろう」
「そうですよ、リアスの言う通りだと思います……養蜂が進めば蜜は安価で手に入るようになるんですから……」
リアスに続きメルはそう言うがイーギは困った様に笑い。
「安価に手に入るようになるなら彼の独占にも納得が出来ましたし、一時は皆喜びました……ですが変わらなかったんですよ……」
「なんていうか、商売下手過ぎるな……最初は高めでも良いと思うが……仕入れの手間が少なくなる分、今より安くしないと意味が無いオイラならそんな事絶対にしないぞ」
「ええ、それに魔物研究やらをしていまして、気味が悪いと言われるようになり……その領主様に人目につかないようにと言われに外に行ってしまったんです」
そう聞くと相手だけが悪い様には聞こえなかった。
なにせまだ未知の魔物が居るのだから……その研究を止める理由はない。
しかし、気味が悪いというのは間違いではない。
平和に生きている人達は出来るだけ魔物には関わりたくはないだろう。
「でもそれならなんでメルの親……ユーリさんなんだ?」
シュレムは首を傾げ疑問を浮かべる。
「なんで……って」
「いや、話聞いてると街に貢献する人ではあった訳だろ? だったらユーリさんよりまずは街を出る理由になった人達を恨まないか?」
「え? でも……」
相手が送って来た手紙でメル母達を狙っている事はもう分かっている。
だが、シュレムの疑問ももっともだ。
話を聞く限りではそれまでは普通に街に住んでいた様であり、ましてや追い出されたという訳でもない。
ただ、情報屋イーギが言っている事が本当であれば……。
バルドさんよりお金にうるさい人で街が困った……それで追い出されてる。
そう考えると確かになんでユーリママ達が恨まれてるんだろう?
「それは僕にも疑問です……何故その女性が狙われるのか? 話からすると知り合いと言う事でしょうか?」
イーギもその事は分からないのだろう……彼を除くメル達の視線はリリアへと集まるが彼女は首を横に振る。
「何も知らない……言われただけ……」
「でも、ママ達を狙って来たって事はやっぱり何らかの恨みがあるって事だよね……他に何か情報は……」
メルがイーギに問うと彼は「ふむ」と声を漏らし考え込む。
そして、暫くし……。
「そうですね、女性が嫌いみたいでした……」
「はぁ? なんだそれ男同士が良いってのか!? うわぁ……オレは女の方が良いぞ」
「いや、そう言う意味じゃないだろシュレム……」
彼女の発言に呆れるリアスは溜息をつき――。
「だが、女性が嫌いってのはなんだ?」
「その昔、何かあったようでして……その影響で若い女性が苦手……いや、嫌いだと言っていました」
「でも、それだと……」
メルはリリアの方へと目を向け言葉を詰まらせる。
リリアは少女で……宿で襲って来た少女も勿論女性には間違いない。
嫌い苦手というならばそばに置かないのではないか? メルはそう思っていたのだが――。
「………………」
「リリアちゃん?」
服を掴まれたメルは彼女の名前を呼ぶ……良く見なくてもリリアは震えており……。
「ど、どうしたの?」
「あの人……女の人怖い顔で……たた……」
「怖い顔? たたって……殴られたのか!? リリア……もし、良かったら教えてくれないか?」
リアスも彼女の様子に気が付いたのだろう心配を隠すことなく顔に浮かべつつもそう告げ――。
「あの人言ってた……女の所為で……狂ったって……」
「狂った?」
「やはり、過去に何かがあったって事ですね……それも狂ったか……」
リリアの怯えようは尋常じゃなく……メルは武器を持たせたことはやはり間違いだったのかもしれないと思う……
もし、戦う事になったら街に置いて行った方が良いのではないだろうか? だが、それでは狙われた時にリリアは自身を守る術が無い。
その事に不安を感じているとイーギは置いてあった飲み物を煽り――。
「すみません……今得た情報で詳しく調べてみます。勿論なにか分かり次第伝えますよ」
そう告げるのだった……。




