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110話 情報屋へ

 メル達は運もあり、襲撃者から逃れることが出来た。

 しかし、憲兵に詳しい話を求められ、メルはそれを承諾したのだが……。

 メル達は憲兵に事情を話しながら、リアス達が向かった情報屋まで向かっていた。


「なるほど、つまり君たちは冒険者の試験でその子を守る為に……」

「はい、そうなんです」


 その間、憲兵に色々と聞かれてしまったメルは彼にこう説明をした。

 リラーグのそれも龍に抱かれる太陽……そこに所属する親を持つメル、そしてその仲間達は他と差別化をするために厳しい試練を受けていた。

 その最中、リリアと出会い彼女が何者かに操られており何とか助けたもののこの先何が起きるか分からない。

 そこである程度の実力を持つメル達とメルの母達は二手に分かれ情報を探している所であり……その後合流する予定だと言う事だ。

 また、リリアを守る事も冒険者になる条件だと言いつけられたっと伝え、彼はその話に納得をしてくれたようだ。


「それにしても、よっぽど親御さんには信頼されているんだね、流石は一度宿の女将を助けただけはある」

「え、えっとそうなのかな? えへへ……」


 ど、どうしよう……咄嗟についた嘘だけど……ママ達が来てこの人がこの話をする機会があったら……。

 ばれるよね? でもこう言っておかないと子供が多いと不安だって言われて今後動き辛そうだし……。


 彼女がそう考えた理由。

 それは其処に居る憲兵にあった……彼は親切にもメル達を護衛する者を手配すると言い出したのだ。

 だが、それでは当然メル達の行動は制限されてしまう……。


 そうなると下手に手を出せなくなった私達より直接ママ達を狙うかもしれない。

 ママ達ならそれもどうにかしちゃうんだろうけど……それでも、そんなのは絶対に嫌……。


 母達の危機、そう思い浮かべるとメルの脳裏にいつも浮かぶのは血塗れのユーリの姿だ。

 それでも勝って生きているなら良い……母達なら強い、そうなるだろう……だが、万が一と言う事はある。

 彼女はそれを生まれ故郷であるリラーグで学んだ。

 母達が守る平和な街……そこには大きな犯罪も無く、不自由を知らずに暮らしていける。

 そう思い込んでいた……だが、実際には人攫いが居り、街から出なければデゼルトにも見つかる事が無いと好き放題をしていたのだ。

 そして、その毒牙にメル自身も被害に遭った。

 抗う術と偶々冒険者が紛れ込んでいたという運があったから他の少女とは違っただけだ。

 それでも何かが間違っていればメルは未だにあそこに居たのかもしれない。

 いや、例え脱出できたとしても今頃は別の男達に奴隷として売られていたのかもしれないのだから……。


「メアルリースさん? どうかしたんですか?」

「え……?」


 急に名前を呼ばれたメルは呆けた声を出しつつ憲兵の方へと目を向ける。

 すると彼は笑みを浮かべ――。


「いえ、難しい顔をしていたので……それと尻尾もなぜか垂れ下がっていましたよ?」

「あ……ぅ……」


 ぅぅ……顔に出ない様にって思ってたのに……。

 というか尻尾にも出てたんだ……気が付かなかった。


「えっとお姉ちゃんは心配なだけだよ」

「そうだね、早く情報を集めて合流をした方が良い……どうやらついた様だ……あそこがこの街で一番の情報屋だよ」


 憲兵はそう言うと一つの建物へ指を向ける。


「ありがとうございます」


 メルは憲兵に頭を下げ、お礼を告げると――。


「じゃ、気を付けて……もし何かあったら詰所に来ると良い、私達は喜んで手を貸すよ」


 爽やかな笑みを浮かべ去って行く青年の憲兵の背中を見送ったメル達は――。


「行こう?」


 歩き始めるのだが――。


「お姉ちゃんそっち……違うよ?」

「ぅ、ぁ……えっとさっきあの人が指さした所に居た犬が……」

「い、生き物を目印にしない方が良いよ……メルお姉ちゃん……」


 ぅぅ、エスイルに呆れられちゃったよ。

 でも、他に目印何て……。


 メルはがっくりとしつつもリリアとエスイルに連れられる形で情報屋へと向かうのだった。








 情報屋へと足を踏み込むと其処には受付らしき場所があり、リアス達は見当たらない事にメルは不安を感じきょろきょろと見回す。


「何かようかい?」

「「「きゃぁ!?(うわぁ!?)」」」


 すると突然、背後から声を掛けられメル達は声を揃えて悲鳴を上げ、そろりと後ろへと振り返った。

 そこに居たのは老人でその身体は鍛えているのだろうか? 程よく筋肉がついているのが服越しでも分かる。


「あ、あのここに三人の男性と一人の女の子が来ませんでしたか?」


 メルはすぐにこの店の者だと思い、そう尋ねると彼は頷き――。


「ああ、来たよ今も店に居るはずだ。いや悪いねびっくりさせてしまった様で」

「い、いえ……でも、何で外に?」


 メルは怯えたままの二人を自身の背に隠し、失礼かとは思いはしたのだがそう尋ねる。


「ああ、丁度買い出しに行っていてね、いや……接客中の札を出し忘れていたみたいだすまないね」


 彼はそう言うと木札を手に取り頭をかく……

 メルはそれを見てほっとすると鼻孔をくすぐる匂いに気が付いた。


「これ……ガレット?」


 それはメルの母フィーナが良く作ってくれたお菓子の匂いがしたのだ。

 だが、それを作るには蜜が必要だ。

 リラーグには偶々蜜を比較的簡単に得る方法を知っていた母達が居たからよく食べることが出来たのだが、リシェスにその様な技術があるとは聞いた事が無い。

 そもそも蜜があったとしても養蜂が出来ない限り高価になってしまいリラーグの様に安価で食べると言う事は出来ないだろう……。


「ああ、そうだよお嬢ちゃんはガレットを知ってるのか……いやね、此処リシェスでも養蜂がようやく出来る様になってきてね……タリムにあったコイツを再現してるのさ」

「甘い匂い……」


 リリアはそれに釣られたのだろうふらふらと老人へと近づき、彼が手に持っている包みに釘づけになっている。


「リ、リリアちゃん!?」

「あっと……お客さんに連れが居るって聞いたけど、すぐに来るとは思ってなかった……」


 だが、老人は困ったように笑い。


「数が足りんな…………すぐに買って来るよっとその前に部屋へ案内をしよう」


 彼はそう言うとメル達を手招きし奥の部屋へと向かう。

 メル達は彼の後をついて行くと案内された部屋にはリアス達が居り――。


「メル……良かったここで待ってて正解だったな」

「メル! 良かった無事だったか! 怪我はないか? 不安だったろオレに抱きつくか?」

「抱きつかないよ!?」


 シュレムの言葉に思わず突っ込みを入れたメルだったが、彼女達のやり取りに笑い声を漏らした男の方へと目を向ける。


「この人が?」

「ああ、自分で言うのも恥ずかしいけど僕が現在この街の情報屋の中では評判のイーギだ。君達を案内してくれたのは僕の護衛でもあるジャッド……可愛らしいお嬢さん以後宜しく頼むよ」


 イーギと名乗った男性は立ち上がると微笑みながら手を差し出し、メルはその手を取り……。


「は、はい……」


 なんか悪い人じゃなさそうだけど……苦手……かも?


 イーギという男性に対しそう思うのだった……。

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