108話 空き家
得られた情報はただ一つ。
彼が出入りしている家の情報だけであり……メル達はその家へと向かう事にした。
果たして、アルという行方不明の男と老人、彼らは何の関係があるのだろうか?
扉をノックしたメルだったが、暫くし溜息をついた。
出てくる気配が無いからだ……。
人が居ないって言うのは聞いたけど……何かしら情報あると思ったんだけどな。
メルはそう心の中で呟きつつ、扉へと手をかける。
すると――。
「え?」
それは何の抵抗もなく開いていき……。
「鍵かかってない?」
リリアはメルの服を握りしめ呟く……それを見たエスイルは少し頬を膨らませつつ、扉の奥を覗き見て……。
「近くには誰も居ないみたいだよ? メルお姉ちゃん……どうするの?」
「…………」
私達を狙ってる人が出入りしている家……こんなに簡単に入れていいのかな?
メルはその場で眉をひそめ、思考する。
簡単に入れることは喜ばしい、しかし怪しすぎるのだ……ましてやメルは一度侵入した時に捕まっている。
不用意に入るのは危険だ。
以前の経験から彼女はそう下し――扉を閉じると……。
「一回皆と合流してから来ようか?」
「でも……次の時は鍵かかってるかもしれないよ?」
エスイルの言う事は最もだ。だがメルは首を横に振った。
「その時は仕方ないよ……警戒し過ぎだとも思うけど、今日の所はこの家があるってだけで十分だよ」
ここを見張ってれば犯人は来るかもしれない。
メルはそう考え、リリアとエスイルの手を引きその場を去ろうとした。
その時――。
「――っ!!」
メルは何者かの気配を感じ咄嗟に振り返り、腰に携えた剣アクアリムを鞘から抜き放つ……。
「ひっ!?」
そこにはボロボロの服をまとった男が居り、彼はメルの持つ剣を見ると腰を抜かしたのか、地へと尻をつける。
だが、メルは彼には関心が無かった――いや……。
「逃げてください!!」
彼に放った咄嗟の言葉はそれだけで……すぐにその瞳を先程の家へと向ける。
誰か……居る?
ううん、人が居ないはずの家の鍵が開いてたんだ……だとするとここに居るのは――!!
「お、お姉ちゃん……」
声を震わせるリリアを背に隠し、エスイルへと瞳を向けるメル。
エスイルはメルの視線気が付き頷くとリリアの隣へと立ち――丁度その時、人のいないはずの家の扉は開き――。
「……貴方は……」
メルの目の前に姿を現したのは先日出会った青年。
勿論、彼の事は覚えていた。
私達を騙して襲ってきた人だ……。
「やぁ……この家に何かようかい?」
その顔はあくまでも笑顔であり、それが逆に恐ろしく見え……。
メルはアクアリムを握る手に力を籠める。
……この人はどう見ても普通の人間だよね?
あの魔物みたいな人達とどういう関係?
「あ、あの人だ……メルお姉ちゃん! カルロスお兄ちゃんの所に来た一人だよ!」
「……君はあの時の子供だね。それより質問に答えて欲しいんだけど、何かようかい?」
「貴方こそ、なんでこの家に居るの? 私達は人のいない家に誰かが出入りしてるって聞いたから依頼で来たんだけど……?」
メルは出来るだけ自然にそう言うと、目の前の男を睨む……。
勿論、剣は納めずその切先を向けたままだ。
「そうかい、でもその物騒な物をしまって欲しいな」
「しまえないよ……一回襲われてるし、信用できない……」
そう告げると男は目を細め笑う――。
「信用できない……か、はははははは! 何を言っているんだ? なら君の様に人に剣を向けてくる奴は信じられるとでも?」
「これは貴方が――!!」
貴方が信用できない、もう一度そう言おうとしメルは言葉を飲み込んだ。
何度言っても同じことの繰り返しだ。
そう思ったというのもある、それ以上にメルは彼の目が気になったのだ。
彼の瞳はメル達を捕らえている様でそうではない、かといってメル達の後ろへと視線が向けられている訳でもない。
あの人は一体なにを見てる……の?
メルの目の前に居る男は異様でそれが恐ろしく……メルは思わず身体を震わせる。
それを知ってか知らずか、男は不意にメルを見て口角を釣り上げ――。
「それとも、例えばエルフの使者であれば信用出来るとでも言えるのか?」
「……え?」
何故母達の事が出て来るのか? メルは疑問に感じ思わず声を漏らす。
すると、彼は顔を怒りで歪め――。
「あいつらが居たから苦労した人間もいるんだぞ?」
その一言でメルの脳裏に浮かんだのはシルトの言葉。
メルの特別扱いに不満を抱いているという物だった……。
いや、そうでなくてもメルはそれがどうしたとは言えなかった……母達もまた手段の中人を殺めたことがあるのだから、恨まれ居ても当然だ。
だが……それでもメルは――。
「貴方がママ達の所為で苦しんだなら……それはどうでも良いなんて言えないでも……それでも他人を小さな子を巻き込む人は絶対に許せないよ!!」
メルはアクアリムの切っ先を男に向けたまま叫ぶ。
少しでも変な動きをしたら切る――そう言うかのように……。
何せそこにはリリアやエスイルだけではない、腰を抜かした男性もいるのだ……。
あの人はただの一般人……この人達に利用なんてさせない!!
メルはそう考え、瞳を男性へと向けると――。
「こっちに来てください……危ないですから」
「あ……ああ……」
男性は這いずる様にメル達の元へと近づき――。
「やれやれ、その男は君の所為で怯えたはずだというのに……」
その様子に男は心底呆れたように笑うと……腰にある剣を抜き放つ。
「まぁ良い、俺の目的を果たすとしよう」
そう告げ、メルに向けその刃を向けた。




