106話 行動開始!
装備を整え、エスイルの力を確認したメル達。
彼女達三人はリアス達とは別行動で動き出すことにする。
目的は……いうには簡単な事だが……果たして可能なのだろうか?
メルはエスイルの精霊召喚が成功した事にほっとしつつ、もう一つの用事を済ませるべく二人に目を向ける。
「じゃぁ、そろそろ私達も情報収集に行こう」
「うん!」
エスイルは成功した事に喜んでいるのだろう、いつもより元気な声で答える。
逆にリリアは浮かない表情を浮かべていた。
そんなリリアの手を取ったメルは――。
「行こう、リリアちゃん」
彼女の名を呼び、再びそう告げる。
「……うん」
それで少し安心したのか、リリアは頷き三人……いや、シルフを含めた四人は歩き始めた。
『すぅ……すぅ……』
「ってあれ? シルフ寝ちゃったの?」
耳元から寝息が聞こえ、メルは尋ねるが帰ってくるのは相変わらずの寝息だけ……。
そういえば、さっきユーリママと同じ匂いって言ってったけ?
それで安心したとか? まぁ、その内起きるだろうし今は寝かせておいてあげよう。
「所でメルお姉ちゃん、何処に行くの?」
エスイルが訪ねるとリリアも気になっていたのか、メルの方へと目を向ける。
「まずは酒場かな? やっぱり冒険者の人に話を聞いた方が良いかなって……」
冒険者と言えば依頼で色々な場所へと向かう。
当然、情報も多く持っている者達であり……酒場の冒険者は比較的人当たりが良いのだ。
勿論、買われていなければ……の話ではあるのだが……。
でも、リアス達には情報屋に向かってもらってるし、私達が行くのは冒険者のいる酒場の方が良いよね。
「それに……」
「……それに? お姉ちゃんどうしたの?」
「ううん、なんでもない」
さっきライノさんから手渡されたお金……これで評判の酒場に怪しい人……街の外に住んでる人からの依頼を受けない事をお願いする。
この金額なら大丈夫のはずって事だったけど……安心はできないよね。
「メルお姉ちゃん?」
「大丈夫、行こうか?」
不安そうな二人を見てメルはすぐにリアスから伝えられた顔に出てしまうという欠点を思い出し、笑みを作る。
二人に心配をさせる訳には行かないのだ。
母であるユーリ達が来れば話は早い、だが……それが無理で狙われている以上……情報を得てこちらから打って出るのが得策。
メルはそう考え――止まりかけていた足を動かした。
幸いメル達が居た練習場は評判の酒場から近く、エスイルが事前に調べてくれたこともあり迷う事無く辿り着くことは出来た。
その酒場の門をくぐると昼間だというのに酒を飲む人、食事を楽しむ者が多く――。
メルは実家である「龍に抱かれる太陽」を思い出す。
懐かしさに思わず込み上げてくるものがあるがそれをぐっと抑えると店主らしき老紳士の元へと歩み寄った。
「いらっしゃい、依頼かな?」
しわくちゃな顔を更にしわくちゃにな笑顔にした老紳士。
メルは彼の前にある席へと座ると――。
「何か飲み物を……あと情報が欲しいの」
そう言って金貨一枚と銀貨を数枚置く――。
「情報量にしては高い、他に何かあるのかい?」
その言葉にメルは頷き――。
「ある人から依頼を受けないでほしい……その人はもっとお金を摘んでくるかもしれないけど……」
不利になるであろうその言葉……だが、メルがそれでも口にした理由――それはこの酒場が評判の理由でもあった。
「それなりの理由はあるのかい?」
「狙われてるんです……私達を利用してママ達を――だから――」
「……そうかい、ならその話は受けようそれでどんな人だい?」
思ったよりもあっさりと首を縦に振られ、メルは瞳を白黒させつつ慌てて告げる。
「その、街の外に住んでいる人って聞きました……だから――」
「ああ、その偏屈か……分かった可愛らしいお客さんの依頼だ約束しよう」
金をカウンターの中へとしまい込んだ老紳士に感謝をしつつメルは立ち上がり頭を下げると――。
「情報なら、あそこ席で酒を飲んでいる者達に聞くと良い、腕は立たないんだがそう言うのを集めるのが得意でね、ウチ自慢の冒険者の一角でもある」
店主がそう言うと、偶々メル達を見ていた女性はにっこりと微笑み頷く。
恐らく、何かを察したのだろう……彼女は立ち上がるとふらふらとした足取りでメル達の方へと近づいてきた。
「なになに~? 可愛いお客さんだぁ~」
「え!? きゃ!?」
いきなり抱きつかれたメルは思わず声を上げる。
そしてすぐに離れたかと思うと――
「こっちの子も!」
「っ!?」
リリアへと抱きつき最後にエスイルへと向かい――
「ねぇねぇ! どんな依頼? お姉さん達が受けちゃうよ~」
やはり抱きつくと随分と機嫌が良さそうに笑う。
その姿に呆気に取られていたメル達だったが、店主へと目を向けると頷き――
「え、えっと情報が欲しくて……」
「情報? 良いよ~どんな情報でもお安く提供しちゃうからね」
彼女がそう言うと口元を歪ませエスイルの手を引っ張り、先程の席へと向かって行き――
「エ、エスイル!?」
メルは慌てて立ち上がり、リリアの手を取ると女性とエスイルの後を追っていく……
『ユーリの匂いがお酒の臭いに……』
途中でシルフの残念がる声が聞こえたメルは――
し、シルフもしかして今までずっと寝てたのかな?
確かにあの女性はお酒の臭いが酷かったそう思い苦笑いを浮かべた。
すると、エスイル達はすでに席に辿り着いており、メル達が追い付くと女性は開いている席から椅子を持ってきていた。
「さぁ座って、あ……何か食べる? 飲み物いる?」
「おいおい、依頼の話だろうに……子供好きなのは良いが、仕事はきっちりしてくれよ」
嬉しそうな女性にそう言うのは男性。
彼は手に持つ酒を煽るとメルを見て真面目な顔を浮かべた。
「で、こいつがちらっと言ってたが情報って何の情報が欲しいんだ?」
「えっと……」
メルが話を切り出そうとすると男性は慌てた様に手を前に出し――。
「そうだ、先に行っておく……おやっさんから聞いてるとは思うが、俺達は実力は無い! 守ってくれってんならその依頼はあっちの奴らに出してくれよ?」
その事を気にしていないかのように笑みを浮かべた男性にメルはぽかんと口を開けてしまった。
冒険者になっている以上、それなりの実力は認められているはずだからだ。
「いえ、欲しいのは情報だけなので」
だが、メルはそこまで依頼するつもりはない。
頼む事は簡単だ。
先程のやり取りから考えてもこの酒場でなら子供であるメル達の依頼ならば受けてくれるだろう……。
でも、これ以上人を増やしても相手に警戒されたらそれまでだよ……。
もしも、相手が多い様なら雇うその方が良いよね?
メルはそう思い、女性に促され椅子に座ると――。
「この街の近辺にある家に住んでいる人の事で情報が欲しいんです……」
そう切り出した。




