103話 戦う決意
敵の数が多い、そう確信したメル達。
しかし、母ユーリ達にまかせっきりにする訳ではなく、メルは戦う事を決意する。
果たして仲間達を納得させられるのだろうか?
メルの言葉の後、その場には沈黙が流れる。
相手は一人ではない……。
だが、少女は真剣な表情を崩すことなく――。
「私達でその人を倒そう」
「大勢いるのかもしれないのにか!?」
メルの答えに驚くのはカルロス。
いや、彼じゃなくても驚くだろう……たった今メルは相手はまだ居ると言っているのだから。
しかしメルは首を振り――。
「何もすぐって訳じゃないよ? ちゃんと調べてから……いくらなんでもその人と他の人達を相手にするなんて無理だよ」
そう告げる。
メルのその言葉に一人以外はほっとし――。
「え?」
「メルなら私が頑張るとか言いそうだからな……ほっとしただけだ」
リアスは心底安心したような顔になり、メルは思わず頬を膨らませる。
た、確かに今までは頼られたりしてちょっと嬉しくて無理をしてたかもしれないけど……それはちゃんと理解したし……これ以上やるとリリアちゃんが泣いちゃいそうだよ。
だから……私はもう、絶対に――。
「もう、自分の力を過信しないよ」
そう……メルは強い。
だが、それはあくまで子供としては……と言った所だ。
大人相手に対抗出来ると言うのは強みだが、メルはまだ幼い。
当然、体格や体力に差が出てしまう。
「ええ、その方が良いわよ」
ライノはメルの答えに満足をしたのだろう微笑み……。
エスイルは怒っていたにも拘らず、その顔は若干柔らかなものになっていた。
「え? すぐに行かないのか?」
唯一シュレムは呆けた顔でそう告げ、仲間達の顔を覗き込む……。
その様子に一同は呆れた様な表情を浮かべ溜息をついた。
「お、おい! 失礼じゃないか!?」
「失礼も何も、もし相手が大人数だったらこっちの戦力が足りない」
「メルが居るだろ?」
何を言っているんだ? そう言いたげな顔で告げるシュレムにライノは笑みを浮かべつつ迫ると――。
「そのメルちゃんを無理させ過ぎない様にしたいのよ?」
「い、いや、そこはオレ達が頑張れば良い事で――」
「オイラでも分かるけど、リアスの言ってる事はそれにはまずこっちの数が足りないって……」
仲間達にそう言われても納得できないのだろうシュレムは眉をひそめる。
「メルなら出来るよな?」
「ええっと……それはちょっと難しいよ……私はそこまで強くないし……」
フィーナママやバルドさん、ドゥルガさんとかなら大丈夫だと思うけど……。
こっち来れない訳だし……それ以前にママ達の力は借りれない。
「じゃ、俺はこの街の情報屋に当たってみるよ」
「うん、お願いリアス」
リアスに笑顔を向けそう答えるメル、元よりそうして貰おうと思っていたのだ。
彼女はその後すぐにカルロスとエスイルへと目を向け――。
「二人はリアスやシュレムと一緒に行動して、ライノさんも出来れば」
「ええ、分かってるわ」
ライノという男性は確かに戦うことは出来る。
だが、それはあくまで天族としては強いという程度だ。
彼もまた守らなければならないだろう……。
あとは……。
メルは心の中で呟きリリアの方へと目を向ける。
そこにはメルの顔を覗き込む不安そうなリリアが居て……。
「リリアちゃんは私の傍に居てね」
メルはそう微笑むと再びリリアの頭を撫でた。
そうすると気持ちよさそうに目を細めるリリアからは硬くなっていた表情は柔らかな物へと変わっていた。
リリアちゃんの髪ってサラサラで触り心地が良いなぁ……って、何か視線を感じる?
メルは何故か睨まれているような気になり、視線を動かすと再び起こっているエスイルが居て……。
ん? もしかして、エスイル……。
「エスイル、おいで?」
不機嫌になっている少年を手招きをし呼ぶ。
すると、エスイルが近寄ってくる。
「な、何? メルお姉ちゃん」
少年はリリアへと目を向けるとぷいっとそっぽを向き、すぐにメルへと目を向ける。
そんな少年にメルは微笑むと――。
「大丈夫だよ、エスイルは大事な弟だからね?」
「ぅぅ……」
メルの言葉と笑みにエスイルも笑い……。
ヤキモチを焼いてくれてたんだね……ちょっとこれは嬉しいかも。
そんな事を考えつつメルはシュレムへと目を向け――。
「シュレムは一緒に居る人を守ってね、それと――」
「あ、ああ分かった! 分かったって……勝手な行動はしない、これで良いだろ?」
「お願い……じゃぁ、今日はもう遅いから明日から行動しよう?」
メルがそう言うと苦笑を浮かべたリアス。
そんな彼に疑問を感じメルは首を傾げると――。
「いや、リリアが何をしたのか分からないけど、今日から行動って言ってたら止めるつもりだったんだ」
「ぅぅ……」
そんな事言わなくても……確かに無理はしてたけど……。
「リリアちゃん、メルちゃんをよろしくね?」
「うん……」
「もうしないってば……」
メルは顔を下に向け、垂れた耳を更に垂らすとそう呟くと、仲間達からは笑い声が聞こえ――暫くすると、メルもまた笑い始めるのだった。




