101話 手紙
メルが目を覚ますと其処にはシュレムが居た。
彼女の手には宿に届いていたであろう手紙……その送り主は母ユーリ達。
事情がばれている事にメルとシュレムは顔色を悪くするのだった。
メルが読む手紙の内容はこうだ。
『メルは今リシェス辺りだろうか? 無事か? 怪我はしていないか? ちゃんとご飯を食べているのか?」
そんな言葉から始まる手紙だったが次第に――。
『所でこの手紙を書いている訳だが、クルムの息子を連れて行ったらしいな? それにシュレムもついて行っていると聞き私は驚いている……何故一言言わなかった?」
『事情は聴いたけど、それなら僕達に相談があっても良いんじゃなかったかな? 護衛って聞いたけど小さな子だとは聞いてないよ!』
等々が書かれていて……メルはその顔を青くする。
そしてずっとそこに居たであろう精霊シルフに目を向け――。
「シルフはエスイルを連れてきた事をママ達が知ってたのを知ってた?」
そう聞くとシルフは頷いた後に首を傾げ――。
『うん、ユーリが後で伝えるから言わなくて大丈夫って言ってたんだよ!』
「そ、そう……」
なんて事だろうか、母達はシルフが来た時にはもう手紙を出し終えたに違いない。
更に言えばユーリからの言葉をシルフが伝えない事は無い、それを察したユーリ達は言わなくて良いと先に伝えたのだろう……。
精霊達はメルは勿論、ユーリを信頼している彼女がメルに伝えるなと言えばその通りにすることは容易に想像できた。
「これってもしかして来たりするか?」
メルと同じように顔を青くするシュレム……いや、もしかしなくても事が事だ、確実にやってくるだろうとメルは思い……。
「ど、どうしよう? ママ達が来たらきっと……」
「どうするもなにも……」
青い顔をした二人が慌てているとシルフは心配そうにメルの顔を覗き込み――。
『ユーリ達来れるの?』
「へ? 来ないの?」
「んっと……ん~?」
それも口止めされているのだろうか?
とは言えユーリ達がここに来ると言うのならば怒られるのは分かり切っているのだ。
だが、シルフは来れるの? と聞いた。
その声はどこか嬉しそうでもあった事から――。
『ユーリ達忙しいって言ったけど、その……メルの話を聞いて行かない方が良いかなって言ってたよ?』
「な、なんで?」
何故そんな話になったのか? ここまで事情が伝わっている以上あの母達が来ないなんて事はまずないだろう……。
メルはシルフの言葉が信じられなく、思わず聞き返すとシュレムは腕を組み。
「精霊が何か言ってるのか?」
「うん、その……来ない方が良いかなって話になってるって……」
「……はぁ!?」
その事はシュレムも信じられないのだろう、声を上げ驚く――やはりどこか変だ、メルはそう思いシルフへと目を向ける。
「どういう事か聞いてる?」
『えっとね! ユーリ達は会いに来る前に犯人を捜して捕まえるって言ってたよ?』
「そ、そう言う事か……」
その言葉を聞きメルはほっとした。
危険に身をさらされてる自分達を見捨てるはずが無い。
それに相手の狙いはユーリママみたいだし……ママが動けばそっちを狙うはず……でもなんで直接リラーグに来なかったんだろう?
あの蟲だって気が付かなければ脅威でしかないのに……。
「メル?」
「ママ達は犯人を見つけたら来るって」
精霊の話が聞こえないシュレムはメルの名を呼び、彼女はそう答える。
すると、シュレムは何か慌てた様子で――。
「そうだ! そのこと忘れてた!!」
「へ!? その事って犯人の事?」
リリアという少女を操り、メル達を襲わせ……。
宿を襲撃した人ではない人、黒いミミズ……これがユーリを狙う敵なのだろう。
「え、えっと……忘れてた……てどういう……」
メルは声を震わせシュレムに問う。
襲撃からこれまで沈黙を保ってきた相手は動き始めたのだろうか? そんな不安を抱え――。
「それが――」
シュレムの言葉を待つメルはごくりと喉を鳴らす……。
「俺達に接触してきたんだ」
そして、続きの言葉は別の声で紡がれた。
メルはその声の元へと目を向け――。
「リアス……それって、大丈夫だったの!?」
そこに居るのは仲間であるリアス、ライノ……そしてカルロスにエスイルだ。
シュレムの言う通り話をしていたのだろう……彼らは頷くと――。
「カルロスお兄ちゃんのお店に来たんだ……その僕たちも合流してたからリアスお兄ちゃんが気が付いてくれたけど……」
「いや、オレも気が付いてからな!?」
エスイルの言葉にすかさずそう付け足すシュレム。
「ああ、確かにシュレムも気が付いてた……けど、運良く憲兵が通りかかってくれてさ、相手はあっさりと引いた……でもそのお陰で今度の狙いがはっきりした……」
「今度の? ユーリママから狙いを変えたって事?」
その言葉にはリアスは静かに首を振る。
「最終的な目的は其処だと思う、だけど今度も俺達……それもカルロスやエスイルが狙われる可能性が高い」
「どういうこと?」
全く意味が分からなかった。
なぜカルロスと幼いエスイルなのだろうか?
「つまり、ね……アタシも含め他の子達は抵抗できるでしょ? リリアちゃんだってあれだけ動けるんだもの目が見えれば厄介に違いないわ、だけど二人は違うわ」
「……そんな、そんなの卑怯だよ……」
ライノの言葉にメルは思わずそう漏らす……カルロスは自分では戦えないと言っていた。
まして、エスイルはまだ子供……戦える訳が無いのだ。
そんな子を狙うなんて……相手は何を――ううん、リリアちゃんの事もあるんだ。
それをやって当然って思う人達なんだよね……そんなの許せる訳が――。
メルは自分が怒っている事を隠す様子もなく、その顔を真っ直ぐリアス達へと向ける。
「メル、お前まさか……」
そんなリアスの言葉に頷いた彼女は――。
「しっかり寝たから体調は良いよ、だからそろそろ反撃にでよう? エスイルは勿論、カルロスさんまで狙われるなら大人しくしてるつもりはないよ」
そうはっきりと言葉にし――その表情を柔らかい笑みへと変え、リリアへと向ける。
「勿論、リリアちゃんも守るから……だから、知ってる事教えて?」




