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100話 カルロスの店

 カルロスはシュレムと共に店を開き、ライノの薬などを売っていた。

 しかし、ひょんなことからシュレムが奴隷だと勘違いされてしまい……店は思った以上に繁盛せずに困ってしまう。

 一方リアス達は買い物を済ませカルロス達と合流するために彼らの元へと尋ねるのだが……そこには落ち込んだカルロスが居り……。

 カルロスの叫びにリアスは苦笑いを浮かべる。


「つまり、このメルンで奴隷連れながら商売してるって思われたのか……」


 リアスの言葉に頷くカルロス……。

 そう、メルンで奴隷と言うのは珍しい……しかし、フォーグやフロム地方には奴隷は普通にある制度でありメルンに居ないという訳でもない。


「そりゃ……まぁ、オイラも男だし、美人なお姉さんの奴隷は欲しいと思った事はある。いや今も思ってる」


 リアスは困ったように笑うと……。


「そこを力説されてもな……」


 と呟き、シュレムの方へと目を向ける。

 そこには見た目は可愛いと言うよりは綺麗な少女が居り……。


「にしてもシュレムが奴隷か、そうは見えないんだが」


 今はその背に大きな盾は背負ってはいないもののどうにみても奴隷には見えない少女……当然彼女を見てリアスは首を傾げた。


「そりゃ……そうだけど、勘違いされたのは事実だ」

「きっとこのオレがカッコよすぎて自分の物にしたかったんだな……でも、オレには心に決めた女性が居るんだ……」

「え、えっとシュレムお姉ちゃん……」


 いつも通りの発言に特に気にした様子も無い様子のエスイルは彼女の名を呼び――。


「どうした?」


 シュレムは弟同然の少年へと目を向ける。

 その目は優し気で彼女を知らない人が見ればそれは目を奪われるだろう……。


「皆でメルお姉ちゃんの所に戻ろうってリアスお兄ちゃんと話してたんだ」

「そうか! それもそうだなオレは疲れた! もう帰ろう!」

「いや、商品全然売れてないんだけど?」


 エスイルの提案に迷うことなく乗ったシュレムはそう言うが、当然カルロスにはそう切り返され――。


「いや、今日はもう無理だってお前だってわかってるだろ? カルロス!」

「ああ、そうだな……」


 清々しいまでにはっきりとそう言われ、恨めしそうな瞳をシュレムへと向けたカルロスはそう呟くと店仕舞いをし始める。

 それを見たリアスは店へと近づき――。


「手伝うよ」

「僕も!」


 二人の言葉に屈託のない笑みを浮かべたカルロスは疲れた声で――。


「助かる……」


 そう告げる。

 丁度その時だろうか?


「店は閉めるのかい?」


 その声に振り返るカルロス、一人の青年と片腕の無い男が残念そうに店の商品を眺めている。


「い、いえ! お客様ならどうぞ見てってください!」


 途端に笑顔になるカルロスは流石商売人と言った所だろう。


「良かった父さん……」


 カルロスの言葉に安堵したのか笑みを浮かべた青年は隣に居る男へと顔を向ける。

 父と呼んではいたがどう見ても血のつながりがありそうには思えなかったのだが……父の方は息子へと微笑むとその顔をカルロスへと向けた。


「そうか、済まないな古傷が痛むんだ……何か良い薬は無いか?」

「古傷……効くかと言われるとやっぱこれかな! 無名ではあるが腕は確かな薬師が作ったんだ! 確か古傷にも効果があるって言ってたな」


 そう言って手に取ったのはライノの薬――それを手渡そうと差し出す、が……。


「な、何するんだよ?」


 その手はリアスによって動きを止められる、

 そして、一歩前に出たリアスはエスイルを背後に隠す。


「なんだね?」


 突然の行動に驚いたような表情を浮かべた腕の無い男は微笑みながらリアスに問うと……。


「笑顔が嘘臭いんだよ、オレでも分かる位にな……」

「そう言う事だ。ついでに言うとアンタは殺気を隠せてない……俺達に何の用だ?」


 射貫くような瞳で男を睨むリアスは地を這うような低い声で問う。

 すると、先程までは笑みを浮かべていた男達は――。


「なるほど、子供にしては大したもんだ。”娘”や”息子”が戻って来ないのも頷ける」


 口角を釣り上げ、笑う男は隣に居る青年へと目を向け――。


「この場で殺してやっても良いんだが……」


 懐に手を入れると筒を取り出す。


「あの娘達を捕らえる為に……利用させてもらおう……」


 その言葉で宿に居るメル達の事と察したリアス達は身構える。

 だが、リアスはともかくエスイルは勿論、カルロスは戦えず……シュレムは武器を持っていない。

 対する相手は何か手段があるのだろう、不利かと思われたその状況で――。


「ほら! 憲兵さん! あそこ、あそこに奴隷の女の子が居るのよ! さっさあの男を捕まえて頂戴!!」


 そう叫び声が聞こえ……。


「いや、あの奥さん、何度も申し上げますが奴隷の売り買いは確かに禁止されています。ですが他の地方で購入した奴隷については――」


 興奮気味の女性をたしなめるような声が辺りに聞こえ始め――その声の主は……。


「ん?」


 リアス達の方へと目を向け、その顔を引き締めると歩みより――腕の無い男の肩へと手を乗せる。


「何かあったのですか?」

「…………」


 肩に手を置かれた男は黙り込み。


「子供が数人、その様子から恐らくは其処の商人の知り合いでしょう……それとも冒険者か何かと言うのは分かりますが……貴方は何をしているんですか?」

「……いや、すまない古傷が痛くてね……良い薬は無いかと聞いたんだが無名の上に高い物で値切れないか頼んでただけだよ」


 途端に先ほどの笑みへと変えた男はそう言うと筒を懐にしまい、代わりに銅貨を六枚取り出し、それをカルロスへと手渡す。

 そしてカルロスの手に合った小瓶を取ると――。


「すまないね、お兄さんを信じてみるよ……行くぞ」

「はい、父さん……」


 そう残し、隣に居る青年へと声を掛けるとその場を去って行き――。


「…………」


 憲兵は暫くその背中を睨みつけていたが――視線をリアス達に向け――。


「確か君達は宿の主人を救った人達だったね? 子供が多いと聞いたよ……腕が立つとは報告にはあるがあまり無理はしないように頼むよ」


 彼はそう言うと先ほどの女性の方へと向かい。

 何やら話し始め――。


「え!? じゃぁあの子奴隷じゃないの!? しかもアイビーの宿の事件の!? あらやだ私ったら……」


 その声は大きく、しかしどうやら誤解は解けたようでカルロスはほっと胸を撫で下ろした。


「でも、なんだったんださっきの……」

「メル達を狙ってたのは間違いないな? あの野郎次にあったら磨り潰してやる……」

「そうだとは限らないだろう……追うのだけは止めてくれよ? 今はメル達の所へ戻ろう……」


 そう口にしたリアスは男達が去って行った方へとその瞳を向け睨むのだった……。

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