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99話 仲間達の日常

 魔法を使いリリアの瞳を直したメル。

 しかし、その所為で色を失った事を知り……彼女は新たな魔法を作る為に奮闘する。

 だが、それはあまりにも無理をし過ぎており、ライノによりリリアを送られ、彼女はようやく自身が無理をしていた事を自覚し反省するのだった。

 一方、他の仲間達は……。

 メル達が部屋で眠りについた頃。


「暇だ!」


 シュレムは屋台に寄りかかり、近くに居る青年へとそう告げた。


「いや、暇ってそりゃ暇でしょ? というか何のために連れて来たのか分からなくなってきてるんだが」


 困った表情を隠すことなくそう告げる青年はカルロス。

 そう、彼女達は今商品を売っているのだ。

 置いてある物はカルロス手製の髪飾りや指輪、そしてライノの薬だ。


 前の街イアーナでは売れなかったと聞き、カルロスが考えたのは簡単な物だった。

 単純にシュレム達に店に立ってもらうということだ。

 メルは勿論としてリリアも可愛らしく、シュレムに関しては年相応とは言えない、美しさがあった。

 だからこそ、連れてきたのだが……。


「その、お客にそっけなくするの止めてくれないか?」

「はぁ? なんでだよ! 女性はともかく男に良い顔なんて出来るか!!」


 その言葉にカルロスは何度目かになる溜息をつく……。


「あのさ、一応商売だからな? 客相手なんだからな? 男も女も関係ないからな!」

「いいか? 真の漢ってのは女性に優しく、男性には厳しきある者だ!」

「お前は女だろ!? どっからどう見ても少女だろ!?」


 シュレムの言葉にカルロスは堪らずそう言うが、彼女は首を振り……。


「漢ってのは女でもなれるものなのさ」

「何でか分らないけど、オイラ頭が痛い……」


 頭を抱えるカルロスに何故か勝ち誇った顔のシュレム。

 だが、彼女はその顔に陰りを見せる。


「どうしたんだ? 急に……」

「いや、メル……無理してるんじゃないかなってさ」


 その顔は悲し気で物思いにふけっている様にも見え、カルロスは不本意ながらもその心臓の鼓動が早くなる。

 だが……。


「やだ、今時奴隷? 身なりは綺麗にしてるみたいだけど……」

「時代遅れよね、メルンで奴隷なんてもう見ていて気分が良い物じゃないわ」


 シュレムを見て勘違いをした女性達はひそひそと話し始め――。


「へ? いや、違う!?」


 カルロスは慌てて否定をし――。


「な? シュレム何とか言ってくれ!!」

「ふぅ……メル……」


 シュレムを見るが彼女はカルロスの言葉を聞いていない様だ。


「ちょ!?」

「あらやだ、無視されてるわ……」

「よっぽど酷い待遇なのね、見た目だけ見繕っても奴隷を連れてる男は皆そうだわ」


 その声は次第に大きい物へと変わっていき……カルロスは――。


「だから違うんだって――――!?」


 堪らず叫び声を上げると――。


「うるさいぞ、カルロス! オレが愛しのメルの事を考えている時にギャーギャー騒ぐな!!」


 やっと彼の声が届いたのか、シュレムはカルロスへとそう告げ――。


「く……クソッ!! 相手の勘違いだからこいつの所為とは言えない、言えないが……言ってやりたい……!!」


 カルロスは握った拳を自身の太ももへと落とした。

 だがその行動さえ――。


「怒ってるわよ……」

「やだ行きましょう」


 客が去って行く原因となっていく……。


「ああ、なんでこうなった?」

「おいおい、全然売れないじゃないか」


 ため息交じりのシュレムにカルロスは恨めしそうな目を向け……。


「そうだな」


 それだけ言うとがっくりと肩を落とした。




 一方、リアスとエスイルは医者の元へと訪れており……。


「それで、これが元気になる食べ物なんだね」

「ああ、そうだよ……しかし、あの娘にも困ったもんだね……あれだけ言ったってのに」


 老婆にそう言われ、リアスは申し訳なさそうに視線を老婆に向ける。


「アンタもちゃんと気を付ける様に言うんだよ」

「ああ、ちゃんと言っておくよ」


 彼はそう言うと、エスイルが持つ紙へと目を向ける。

 そこには疲労回復に聞くらしい食材の名が書き出されている、勿論医師である老婆が書いてくれたものだ。


「早速用意してくる」

「ああ、それとあまり無理をするようだったら今度は連れておいで、キツク言っておいてあげるよ」


 その顔は笑顔のはずなのだが、何故か笑っていない様に見えたリアスは苦笑いをし――。


「そうならない様にちゃんと言っておくよ」

「そうだね、そうした方が良いね」


 リアスの言葉に今度こそ本当に微笑んだ医師にホッとしたようだ。


「エスイル、行くぞ」

「うん、早く買い物してメルお姉ちゃんにご飯食べてもらおう?」


 少年を連れ、その場を去って行った。





 街の中、食材を求め歩くリアス達。


「次は……あれと……あれ!」

「分かった、おばさんこれをくれ」

「はいよ!」


 エスイルに指差された物を買っていくリアス。

 少し前までは節約をしなければと思っていた一行だったが、リシェスに来た事でそれは変わりつつあった。

 その理由が――。


「ねぇリアスお兄ちゃん!」

「どうした?」


 少年に呼ばれ、リアスは荷物を抱えつつもそちらの方へと目を向ける。

 そこには満面の笑みの少年が居り――。


「シュレムお姉ちゃん達を迎えに行こう?」

「それもそうだな、よし、この近くで店を開いてるはずだ」


 リアスはそう言うと進路を変え、歩き始める。

 するとその店がすぐに診えて来るのだが……そこでふと足を止めた。


「なんだ?」


 そこにはボーっと立つシュレム、そして両膝に肘を乗せ両手を組みその組んだ手の上に頭を乗せているカルロスの姿が映った。

 それは一種の銅像のようにも見え……。


「商品売れてないみたいだよ……」


 エスイルが指を向ける方を見たリアスは溜息をついた。


「そんなホイホイ売れる訳でもないだろ……何を落ち込んでるんだ……」


 そして呆れたように呟く。


「行くぞ、エスイル……あれじゃ今日は売れそうにない」

「うん、皆で帰って早くご飯を食べてもらおう!」


 二人はそんな会話を交わし、シュレム達の方へと再び足を動かした。

 するとシュレムはリアス達に気が付き……。


「おう! そっちはどうだったって言うまでもないか」

「ああ、疲労に効く物は買った。それで迎えに来たんだが……カルロスはどうしたんだ?」


 リアス達が近づいたと言うのに一向に動かないカルロスにようやく何かがおかしいと気が付いたのだろう、リアスが訪ねると……。


「どうやらオレが奴隷でこいつが主人だって勘違いされたみたいだ……誤解は解いたはずなんだでもな、なんか納得いってないみたいでな」


 シュレムの言葉を聞くとピクリと反応したカルロスはゆっくりと顔を上げ――。


「全然解けてないからな!? 寧ろ蔑んだ目で去られたからな!?」

「え? でもあの美人さん達はオレには優しかったし薬買ってくれたよな?」

「そりゃお前が奴隷だと勘違いされてるからだろ!?」


 そう叫ぶのだった――。

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