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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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63.信頼に応えるため

 



 新学期の始めは状況説明に追われたりもしたが、1ヶ月も経てばそういうものだと浸透していく。

 9月の終わりには中間テストもあったし、皆それどころでは無くなっていた。



 そして10月に入れば、様々なイベントが待ち受けていた。




「よーしHRやるぞー。今日は2週間後にある修学旅行と、来月の文化祭について話そうと思う」




 高校生といえばやはり、この2つがメインイベントとして挙げられるだろう。


 まずは修学旅行。高校2年を対象に毎年10月の半ばに行われており、この高校では福岡、熊本、長崎を3泊4日で周ることになっている。


 九州は車では中々行けない距離なので、筋金入りのドライブ好きである父さんは連れていってくれなかった。

 なので今回行けることになって素直に楽しみだ。

 美味しいものが沢山あったり、由緒正しい名所なども行ってみたいところだ。




 そして来月の文化祭。


 来月と言っても11月上旬にやるので、修学旅行が終わってからすぐに準備に取り掛からなければならない。


 本来ならそんなに早く始める必要は無いのだが、今の校長に変わってからかなり力を入れているらしい。

 その証拠に、文化祭の予算が3倍以上になったらしい。どんだけだよ。




 とまあ、そんな具合で、決められるものは早めに決めておきたいのだ。




「それじゃあまず班決めから。実行委員、後は頼んだ」


「はいはーい。実行委員の島崎です。とりあえず、班と部屋決めの人数とか全部説明するね。質問はその後で


 島崎さんは黒板に書き出しながら、必要事項を説明していく。




 島崎さんの説明をまとめるとこうだ。



 ・一班あたり4人から6人まで。


 ・宿泊時の部屋割も同様。


 ・基本班行動を守ること。各々の判断で別行動しても構わないが、点呼の際に全員揃っていること。


 ・点呼の時間は厳守で、指定されたチェックポイントで先生に確認を貰うこと。




「最後に、全力で楽しむこと!以上でーす」


「ありがとう島崎。さて、質問はあるか?」


「はーい」


「はい志田」



 春馬が手を挙げ、俺たちにはあまり関係のなさそうな質問をする。



「班員って男女何人ずつとか決まってるんですか?」


「いや、特に決まってない。どれだけ偏ってても構わないけど、出来るなら半々ぐらいが好ましいと思ってる」


「了解でーす」


「他に質問がある人は………いないか。それじゃあ早速班決めに入ってくれ。それが終わったら男女に別れて部屋割も決めるからな。あー、あまり騒ぎすぎないようになー」




 そう言われ、俺はふと綾乃の方を見てしまう。

 そして同じくこちらを見ていた綾乃と目が合う。




「なんだ、考えてることは同じか」


「当たり前じゃない。優心以外とはありえないわ」


「俺もだよ」



 自然に2人だけの世界を構築する優心たち。


 その光景を、声を掛けようとしていた春馬たちはもちろん見逃さない。



「はぁ…それ、どうにかならないのか。一応ここ教室なんだけど?」


「あたしたちもラブラブだけどさー?あーちゃんたちはなんかラブラブって感じじゃないよね」


「そう、長年連れ添った夫婦みたいな」


「やかましい。まあとりあえず、この4人でいいか?」



 優心がそう聞くと、3人は頷く。

 他にも春馬や綾乃と同じ班を狙っていた者はいたが、この4人には何者も寄せ付けないオーラがあった。


 面倒なことにならない内に、さっさと用紙を書き提出する。

 程なくして他のクラスメイトも決め終えたようで、春馬が男子に集まるよう促す。




「よーし、部屋決めっか。あ、優心は俺と同部屋な」


「俺に選択権は無いのかよ」


「無い!」


「清々しいほど言い切ったな」



 まあ俺にも春馬と離れる選択肢は無いけどな。



 そういう訳で俺の同部屋は、春馬、ジョージ、孝太のまたしてもいつもと変わらない顔触れとなった。


 意外と言ってはなんだが、女子の方もすんなり決まったようで、次のステップに進めるようだ。



「なんだ?もう決まったのか。それじゃあ行動班別に班長を決めてくれ」



 とは言われたものの。俺の中では班長は1人しかいない。



「班長………みんなは誰が良いと思う?」


「はいはーい!あーちゃんがいいと思います!」


「俺も氷川さんだな」


「だよな。春馬と雛には任せられない」


「「おいっ!」」



 3人がコントを繰り広げる中、推薦された綾乃は少し戸惑っていた。




「えっと、本当に私で良いの?」



 私にそんな能力は無い。

 周りに祭り上げられて、その期待に応えようと必死に足掻いて、強がってただけ。




 高校に入学してからもそれは変わらなかったけれど。


 少しずつ、みんなと関わるようになって少しずつ、変わっていった。


 その代わりに、










 どうやって強がっていたのか、忘れてしまったの。










 でも。










 それでもいいの。










 こんな私を愛してくれる人がいるのだから。




 結局は自分に自信が無いだけ。

 そんな自分でも優心が、雛や志田くんが信じてくれるから頑張ろうって思える。


 だから今回も、ありのままの自分で少しだけ。

 ほんの少しだけ頑張ってみようと思うの。



「あーちゃんがいいの!」


「俺はそういうの向いてないからなー」


「どの口が………でも、綾乃がやってくれるなら安心できるな」



 ふふ、こうやって期待を押し付けてくるけれど、それが信頼から来るものだって分かっている。


 期待には応えられないかもしれないけど、信頼には応えてみせる。


 それが、今の私。



「分かったわよ。期待に応えられなくても、文句は無しよ?」


「当たり前だ。俺たちから言ったんだから」


「ならいいわ」



 この信頼に応えられるよう、精一杯頑張らなくっちゃ。







 ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ——— ———







 そしてまたしばらくして。


 他の班の報告も終わり、先生と島崎さんから次の指示が入る。



「これで修学旅行関連は最後ね。来週のHRまでに、行きたい場所を3つぐらい考えておいてね。それを基にしてチェックポイントを決めるから」


「行きたくないところを指定しても仕方ないからな。ある程度決まっていれば、学校側から入場券くらいは融通が利く」



 学校も生徒のことをしっかり考えているんだな。

 先生の言う通り、人気のある名所などをチェックポイントにすれば、楽しめない人はほとんどいないだろう。


 そういう名所は交通インフラが整っているので、迷子になることも少なく、学校側としても余計な仕事が増えずに済むしな。


 なるほど、上手く考えられている。




 初めての九州、ますます楽しみになってきたな。






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