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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第四章 君の隣でどこまでも歩み続ける

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62.そういうこと




花火大会から一夜明け、本日は8月31日。

高校では、この日から二学期が始まる所が多く、優心たちが通う古見高校も例外ではなかった。




優心は前日のことを思い出し、何度も頭を抱える。

もっと良い告白が出来たんじゃないか、とか。そういえば花火全然見れなかったな、とか。


後悔しても仕方ないことであり、結果を見れば成功しているのだから問題は無いのだが、本人的には色々プランも考えていたのであって。

たった一言、つい出てしまった言葉。やり直せるなら、あの時に戻りたいとまで思うようになってしまっていた。


そう考えていたのも、綾乃と顔を合わせる時までだった。




「おはよう、優心」


「ああ、おはよう綾乃」




いつもと変わらぬ朝。変わったことがあるとすれば、それは綾乃の纏う雰囲気。

なんとなく、大人びて感じる。前から大人びてはいたのだが、それがより一層深まったというか。




「ふふ、なんだか夢みたい。優心の彼女として迎えられる朝が来るなんて」


「俺も嬉しいよ。ここまで、長いようで短かったなぁ」


「そうね………出会ってからは1年以上経つのに、ちゃんと話すようになって、ここまで半年も経ってないもの。でも、私たちらしくて良いかも」




確かに。長い間あんな空気だったのにも関わらず、綾乃を助けたあの日から全てが変わった。

もしも綾乃を助けていなかったらなんて、考えたくもない。




「そうだな。あ、俺たちの関係ってどうするんだ?付き合ってること、みんなに言うのか?」


「どうしましょうか。正直言うと、隠してもあまり意味は無い気がしてるのよね」


「というと?」


「大したことでは無いのだけど、ほら、今までの私たちってほとんど恋人みたいなものだったと思うのよ」



それはずっと思ってた。今思えば、あれは綾乃からのアピールだったのだろう。お互いの想いを確かめ合ったからこそ、気づくことや分かることがある。



「だったらもう隠さないで、堂々とイチャつけるようにしちゃいましょう?」


「いや………それはちょっと………………」


「何、嫌なの?嫌なら別に構わないけれど」


「いえ!嫌じゃないです!」



最近、綾乃がなんか怖い。こういうのをヤンデレって言うんだっけ。

創作のジャンルとしては魅力的だとは思うが、実際にされる身になるとたまったもんじゃないな。



それから色々と話し合った後、少し早めに家を出る。

今日は午前中で終わりなので、昼食を用意する必要はない。

綾乃のお弁当が食べられないのは残念だが、帰ったら腕によりをかけて作ってくれるそうなので楽しみだ。




学校までの道中も、周りに見せつけるように腕を組んで歩く。手を繋ぐだけではダメなのかと聞いたら、「そんなんじゃ足りない」って言われた。女心というものはよく分からないな。


もちろん学校に到着してもそのままだ。離してと言っても聞いちゃくれない。靴の履き替えが大変だったよ。


廊下を歩いていてもざわめく声が絶えないし、中にはあまりよろしくない内容も聞こえてきた。というかほぼ罵声だった。




そして教室の扉の前に立つ。なんだか意味もなく緊張してきた。

ふと綾乃の顔を見てしまう。すると綾乃もこちらを見ていて、薄く笑って一言。




「大丈夫よ」




と。

うん、なんか大丈夫な気がしてきた。綾乃がこんなに堂々としてるんだ、隣に立つ俺がそのくらいの気持ちじゃなくてどうする。


覚悟を決めて、教室の扉を開ける。


先に口を開いたのは綾乃だった。




「みんな、おはよう」


「おはよー………ってあやのん!?そ、その腕…そういうこと!?そういうことなんだよね!?」


「相川さん落ち着いて。でも、そういうことよ」


「「キャーーー!!!」」




久々に顔を合わせたギャルズは相変わらずだった。この2人はたぶん綾乃の気持ちを知ってたんだろうな。

揶揄うような雰囲気は一切無く、むしろ祝福してる感じ。

なんだかんだでいい人たちなんだよなぁ。




「で、どっちからなの?」


「それは…ふふ、言えないわ」


「あやのん………可愛すぎるでしょ」


「恋する乙女ってこんな可愛いんだ………」


「「はぁ〜あ、良い人いないかなぁ〜〜〜」」




論点がズレてるぞ。いや一向にズレてくれて構わないんだが。

まあ気持ちは分かる。綾乃は本当に可愛くなったと思う。笑顔を見せるようになってから、氷の女王なんて言われてたのが嘘みたいだ。


それはさておき、男子からの視線は痛い。登校の早くない春馬はまだ来ていないし、味方になってくれそうなのは………。




「おはよう。ジョージ、孝太」


「おはよう優心!朝からすげえなぁ」


「おはよう。だが本当に凄いと思うぞ。あの氷の女王のハートを射止めるなんて」


「いやハートって………。もっと他に言い方無かったのかよ。てか孝太こそすごいじゃないか」


「そうだ、忘れるところだったわ。お前インターハイ優勝したんだろ?マジですげえよ!」




この黒田 孝太という男、夏休み中やけに忙しそうにしていると思ったら、インターハイの柔道で優勝してやがった。

大会中はもちろんのこと、終わってからも取材とかで遊びに行く時間など碌に取れなかったらしい。


ジョージはアメリカに行っていたので当然会えず、夏休み中は俺もほとんど外出しなかった。春馬と遊ぶと大体運動系になるし、本気でやっちゃうからね。こんな暑い中では流石に勘弁してほしい。




「運が良かっただけだ。優勝候補に早々に番狂わせがあってな。トーナメントにも恵まれた」


「だとしてもだ。運も実力のうちって言うだろ?」


「そうだな。ありがとう2人とも」




そんな俺たちの中に割って入る者はなく、しばらく3人で駄弁っていた。

そこに、春馬が重役出勤してくる。

瞬間、教室内に衝撃が走る。




「よっす、優心。ジョージと孝太もおはよう」


「「「いやちょっと待てぇ!!!」」」




思わず突っ込んでしまった。


だって仕方ないだろ。春馬の首筋には、噛み跡とキスマーク。

こいつ、まさか………………。




「お前の首筋、なんだそれ!?」


「あ、これ?あー………その………な?」


「な?じゃねぇよ!あれですかぁ!?隣にいる人が関係してるんですかねェ!?」


「落ち着けジョージ。………………まあ、そういうことだよ」




さっき見たよそれ。これだから人気者は。

明確に違う点を挙げるとすれば、隣にいる雛の方が態度がでかいこと。同情するよ春馬。俺たちは彼女に一生勝てないんだ。




「しっかし山﨑かぁ………春馬、お前もしかしてロr」


「あ゙ぁん?」


「ナンデモナイデス」




ジョージがここぞとばかりにカタコトになってしまった。それだけ今の雛には圧がある。

向こうから話し終えた綾乃がやってきて、雛を宥め始める。雛は徐々に落ち着いていき、やがて俺たちを祝福するムードに切り替わる。




「それはそれとして、トバっち、あーちゃん、おめでとー!」


「上手くいってよかったな優心」


「春馬こそ。その様子だと、もっと先まで進んだようで」


「ああ…まあな。後で昏人さんあたりにはドヤされそうだけどな」



諦めろ春馬。まあ昏人さんも春馬なら大歓迎、みたいな感じだったし大丈夫だと思うけどな。

でもその跡は隠して欲しかったかなぁ。なんか生々しいんだよ。



「どっちから告白したんだ?」


「ハル。神社の端っこなのに、全体に聞こえそうなくらいの大声で愛を叫ばれちゃって、大変だったよ」


「それは悪かったって。あんなヒナの姿見ちゃったら、抑えきれなかったんだよ」


「もー、ハルってば」


「甘い空気出すのやめろ」


「「「どの口が言ってんだ!」」」




なんかよく分からんが怒られた。

一部歓迎されてないみたいだけど、そんなのはどうだっていい。

大事なのは、俺たちの気持ちだからな。




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