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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第三章 愛の炎は夜空の星より煌めいて

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番外編.志田春馬という男

そういえば掘り下げてなかったなって

 


 志田春馬は人気者である。顔良し、元気良し、性格も良し。加えて運動神経に頭脳も抜群ときた。非の打ち所がなく、完璧超人と言っても過言ではない。

 強いて言うなら、優心に対してだけは()()()()をしているをしていることくらいだろうか。優心からすれば傍迷惑な話だが。



 そんな春馬も最初からここまで完璧というわけではなかった。


 小学生の頃、春馬には好きな女子がいた。当時の春馬はイケメンでも無ければ明るい性格をしているということも無く、当然その女子から好かれる道理も無かった。


 そして既に友人であった雛はその事を知って、兄二人と共に春馬改造計画を実行した。服装や髪型、話し方まで一から変えた。体だって最新のトレーニング器具やメソッドを用いて、徹底的に鍛え上げた。

 このイメチェン計画を四人、いや昏人と信乃を含めた六人はノリノリで進めていった。


 今の春馬を見れば分かるが、計画自体は上手くいった。そう、()()()()()()()()()()()()。学校では敵がいないほどの人気者となり、女子の視線は全てと言っていいほど春馬に集まった。春馬が好きだった女子ももちろんその中の一人だ。

 だが、一部の女子が春馬を偶像視し始めたのだ。そして不運なことに春馬が好きだった女子もその中の一人となってしまった。


 その話を聞いて春馬は落胆し、他人に興味を持てなくなった。興味が無いということは、好きになることも嫌いになることも無いということだ。

 つまり全員がほぼフラットな関係になる。誰かと深い関係になることもない。ひたすらに無関心の中で、春馬は引っ越すまで完璧を演じ続け、いつしかそうすることが当たり前になっていった。


 ただし雛だけは別で、自らを変えてくれた雛のことを好きになるのは時間の問題だった。

 さりげなくアピールしていたりするのだが、そもそもの距離が近すぎるが故に気づかれないことがほとんど。雛の方もそんなことはありえないと分かっていたので、すぐにその可能性は排除していた。



 そんな雛と離れた後、もちろん転校先でもすぐに人気者になった。田舎の学校だったため、都会から来た春馬は始めは奇異の目で見られたりもしたが、馴染むまでは一瞬だった。転校したのが小学6年生だったので宮城での小学校生活は1年も無かったが、告白された回数は軽く十や二十は超えていた。正直、男女関係はもう懲り懲りだったので全て断っていたが。




 そして中学に上がり、優心に出会った。当時の優心は事故のショックからは抜け出したものの自分のことで精一杯という感じで、転校したばかりということも相まって、友人など当然居らず孤立していた。それまで他人に興味を持てなかった春馬が、自分をどうとも思わない存在に興味を持つのは必然だったのかもしれない。




 そこから春馬の生活は優心と共にいることが増えていった。学校ではほぼずっと優心と一緒だったり、部活の助っ人を頼まれても優心との遊びを理由に断ったり。

 優心との関係は新鮮であり、心地良いものでもあった。


 だから優心への嫌がらせが始まった時は本気で怒り、その原因が自分と一緒にいることへの嫉妬だと知った時は呆れ、自らの持つ全てを使って報復することを決めた。

 その本気っぷりは、いつか再会する時まで連絡を取らないと決めていた雛に頼ったことからも明白であろう。


 優心を刺そうとした女子は徹底的に叩き潰した。本人は当然のこと、そんな人間とつるんでいる奴らがまともな人間の訳がなく、芋づる式に悪事を暴いていった。親もネズミ講などの碌でも無い商売をしていたので、それもまとめて警察送りにした。

 もちろん、優心に春馬がやったとは絶対にバレないように何人もの人を間に介しながら。だから優心は彼女が退学した詳しい理由を知らなかったのだ。


 気付けば、彼らの周りから邪な心を持つものはいなくなっていた。というか学校の内外で生徒の問題行動が見つかりすぎて、次は自分かと思った者はそんな考えを捨てていった。




 そして優心と同じ高校を受験し、現在に至る。春馬の他人への興味は相変わらず皆無だが、むしろ割り切って損得勘定で物事を考えるようになった。今のところ得ばかりなのだが。

 だからこそ、高校生活を楽しいと感じられている。優心がいて、雛がいて、綾乃もいる。皆と過ごす日々はかけがえのないものであり、それを守るためなら今の春馬は優心が関わっていようがいまいが、他人のために動くことが出来る。




(ま、あいつら以外は今も正直どうでもいいけどな)


 そこまで変われてはいなかった。

 別に春馬に限らず他の人も同じだとは思うが。

 春馬は一人屋上で寝転がり、


「は〜〜あ、なーんかおもしれーこと起きねえかなぁ………」


 いつものように、そう独りごちるのだった。



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