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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第三章 愛の炎は夜空の星より煌めいて

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45.真面目な話と馬鹿みたいな話

 


 二人は大急ぎでホテルに戻ってきたため、夕食の時間にはなんとか間に合った。


 その後、優奈とこれからも関わっていくであろう春馬たちにも話をしておこうと思い、連絡を取ることにした。




「夜遅くに悪い、今大丈夫か?」


『あたしたちは全然オッケー。ね、ハル?』


『もちろんだ。そっちはどうだ?楽しんでるか?』


「ああ、綾乃も楽しんでくれてるみたいだし、良い旅になってるよ」


 なお、今この場に綾乃はいない。汗臭いかもしれないから、と言って温泉に入りに行った。

 ただ少し気になっていることもある。今、俺の通話画面に表示されてるのは『春馬』の文字のみ。つまりこれが意味することとは………


「というかお前たち一緒にいるのか?」


『ん?そうだけど。そっちが二人で旅行に行くなら、こっちもそうするかってな。という訳でこっちは沖縄だ』


「沖縄?この真夏にか?」


『そうだよ。あ、言っとくけど俺が沖縄行きたかった訳じゃないからな。うちのワガママ姫の気分で連れてこられたんだから』


『誰がワガママ姫だ!いいじゃん、夏休み中みんなで会える時間がなかなか取れなかったんだから』


『だからって沖縄はねーだろ……… さすがに暑すぎるわ………』


 やっぱこの二人仲良いな。幼馴染とはいえしばらく離れていたのに、往年の夫婦のような絆を感じる。

 本人たちに言ったら怒られそうだから口には出さないけど。



 そして優心は失念していた。この二人の勘が凄まじく優れていることを。


『『なんかすごい失礼なこと考えてない(か)?』


「………怖いんだけど」


『直接見なくたって空気で分かるんだよ。そういうもんだろ?なあ、ヒナ?』


『そうそう。トバっちって結構分かりやすいんだよね』


 この二人の俺への評価を一度問いただしたいところだが、その前に本題に入らなければ。


「まあそれは一旦置いといてさ。二人にちょっと話したいことがあったんだよ」


『話したいこと?』


「秋津さんのことなんだけど」


『優奈ちゃん?………はっ!?まさかトバっち………』


「何考えてるかは大体分かったから、その先は言うなよ」


 絶対こうなると思った。雛の恋愛脳は一体どうすれば治るのか。治らないんだろうなぁ………

 だが念のため、きっちり言っておこう。



「俺が好きなのは綾乃だけだ。誰に何を言われても、これだけは絶対揺らがないからな」


『お、おぅ………そんなにキッパリ宣言されると、雛ちゃん少し照れちゃうぜ』


『ヒュ〜♪ いいねぇ優心。で、秋津がどうしたって?』


 ナイスだ春馬。春馬ならこれが真剣な話だって分かってくれると信じてた。


「今日、こっちで会ったんだよ」


『はっ?いや、偶然会うってのもありえなくはないと思うけどなぁ………』


「うちの墓の前で、だ」


『それは………偶然じゃないだろうな。何があったんだ?』


『お化けとかじゃないよね………?そんな怪談を聞かされてる訳じゃないよね………?』


 なんか知らないけど雛が怖がってるみたいだな。少し仕返しでもしようか…と思ったが、先に春馬が口を挟んだ。


『雛、これはそういう話じゃない。多分優心はすごく真面目な話をしようとしてる。ここは大人しく聞く場面だ」


『そうなの?邪魔してごめんね?トバっち』


 やっぱ最高の親友だよ、お前は。俺の考えてることなんかお見通しだよな。


「気にしなくていいよ。俺の言い方も悪かったと思うし」


 散々話が逸れたが、ようやく話せるな。



「秋津さんが俺の妹だった」


『………何だって?トバっち、よく聞こえなかったからもう一回お願い』


「秋津さんが、俺の妹だった」


『………ねえハル。これ、真面目に言ってるんだよね』


『大真面目だな』


 信じられない気持ちは分かるけどな。俺が聞いても、何言ってんだお前って思うし。


『それは、養子とかそういう話?』


「いや、違う。生きてたんだよ、死んだと思ってたはずの妹が」


『良かったじゃん!現実でそんなことってあるんだ!』


『詳しい話は聞いたのか?』


「いや、帰ってから色々話そうって」


 なんか意味深な質問だな。急にどうしたのだろうか。

 答えはすぐに明らかになった。


『そうか。んじゃ俺から話せることはほとんど無いな』


「春馬、どういうことだ?何言ってるんだよ」


『一つだけ話せるのは、俺はそのことを知っていた。それだけだな』


『えっ、ハル知ってたの!?』


「その話、詳しく聞かせて………くれないんだろうな」


 春馬はこういうやつだ。いつに間にか裏で動いていて、いつの間にか解決している。

 俺が春馬のしていることを何も知らない訳じゃない。本人は気づかれてないと思ってるだろうけど、色々動いてくれてるのは知ってる。

 それを絶対に話そうとはしないんだけどな。


『俺からじゃなくて優奈ちゃんから聞いた方がいいだろ?』


「それもそうだな」


『いや何二人で解決してんの?あたし全く意味分かんないんですけど』


 雛にはこのやり取りは少し分かりづらかったらしい。通話越しでも分かるくらい混乱していた。

 仕方ない、軽く説明してやるか。


「あー、まあ簡単に言うと、俺の死んだはずの妹が生きてて、それに春馬は何らかの形で関わってたってことだよ」


『なるほど分かった!』


「本当か?」


『うん!つまりハルが全部悪いってことでしょ?』


『どうしてそうなる!今の話のどこをどう聞いたら全部俺の責任になるんだよ!』


 やはり何も分かっていなかったようだ。さて、どう説明したものかな………


『まあ後で俺からしっかり説明しとくわ。てか氷川さんは?一緒じゃないのか?』


「綾乃は今頃大浴場でゆっくりしてるんじゃないか?」


 その瞬間、扉の方からガチャッ、という音がする。噂をすれば、だな。


「ただいま。誰と話してるの?


「おかえり綾乃。春馬と雛だよ。今二人で沖縄にいるんだってさ」


『久々のあーちゃんだ!あーちゃん成分を摂取しなきゃ………』


「何よそれ。そもそもこれだけ離れているのに摂取も何も無いでしょうに」


『そこは愛で何とかするんだよ』


 愛で何とかなる訳ないだろ。雛は綾乃が絡むと、どうも知能が低下する傾向があるな。まあ綾乃も楽しそうだから良いんだけどさ。



 そうして2日目の夜は、四人で馬鹿みたいな話をしながら過ごしていく。

 優心にとっては、この時間がただただ心地良かった。



お読みいただきありがとうございます!

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