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隣で「おはよう」と笑う君を見たいから  作者: 山田 太郎丸
第三章 愛の炎は夜空の星より煌めいて

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44.ずっと、会いたくて

 



 まさか………いや、そんなことがあるわけが………だって、優奈はあの時死んだって………


 なら偽物?だけどそんな嘘を付く理由があるのか?………落ち着け、焦っても問題は解決しないぞ。


「さすがの優心くんもパニックみたいだねぇ。まぁ、死んだはずの妹が急に目の前に…しかも墓の前で現れたなんて、そんなの幽霊か何かだと思っちゃうよねぇ普通」


「でもお兄ちゃんはそう思ってない。そうでしょ?」


「だろうねぇ………そうだ。そんなに疑うなら、本人にしか分からない質問をすれば良いんじゃないのかい?」



 …なるほど、大和さんの言う通りだ。それなら優奈が本物なのかどうかが分かるはず。



「分かりました。それじゃあ今からいくつか質問をするから、正直に答えてほしい」


「もちろん」


「じゃあまず簡単なものから。誕生日は?」


「12月5日」


 調べれば分かることとはいえ、即答か。


「趣味は?」


「趣味?そんなもの無いけど」



 ()()()()()、か。完璧だ。それならこの質問も………



「強いて言うなら?」


「その聞き方をするってことは、分かってるんでしょ?お兄ちゃんと一緒にいることだよ」


「………十分だ。………生きててくれて良かった………久しぶりだな、優奈っ………!!」


 優奈を抱きしめる。間違いない、秋津さんは正真正銘俺の妹、戸張優奈だ。昔、スパイものの映画に二人してハマってた時に、遊びで作った合言葉。もちろん誰にも言ってないから、これを知ってるのは俺と優奈だけ。


「うん………うんっ!今まで会いに来れなくてごめんね、お兄ちゃん………!」








 それを少し離れたところで見守る綾乃と誠治。



「いやぁ〜感動の再会だね。綾乃ちゃんもそう思うだろう?」


「いえ、なぜ私の名前を?初めて会うはずですよね」


「手厳しいねぇ。これ、二人には内緒にしてほしいんだけど、実は綾乃ちゃんのお父君とは友人でね」


「っ………父と友人、ですか?あの人に友人なんていないと思っていましたが」


 いつも異常なほどに厳しい父だったから、そういう存在は作らないものだと思っていた。というかこの人が勝手に友人だって言ってるだけなのでは………


「まったく繁のやつは……… どうしてこう、いつも一言足りないのかねぇ………」


「………?話が見えてこないのですが………」


「気にしなくていいよ。あいつの昔からの悪い癖だから」


 この人はさっきから何を言っているのかしら……… よく分からないけれど、とても大事なことのような気がする。一応、頭の片隅には留めておきましょう。





 しばらく抱きしめ合った後、軽く近況を話し合った俺たちは何やら向こうで話している二人の下に向かう。


「二人で何を話してたんですか?」


「叔父さん、私の綾乃お姉様から離れてください」


「私は貴女の姉じゃないわよ」


「そんなぁ!?」


「ははは、仲が良さそうで何より。それじゃ、僕たちは帰ろっか」


 そう言って誠治は優奈を連れて、帰ろうとするが………



「え?嫌ですけど。今日は久々の再会なんですから、一緒にご飯でもと思ってたんですが。あ、もちろん叔父さんの奢りで」



 割とちゃんとしたテンションで断られた。誠治は複雑そうな表情をしていた。


「勘弁してよ……… 可愛い姪の頼みとはいえ、僕も仕事が立て込んでるんだから」


「なら私だけ残ります」


「そういう訳にもいかないんだよ。帰りの新幹線の席、もう取っちゃったし」


「ちぇー、色々話したかったのになー」


「これからはいくらでも話せるんだから、今日のところは我慢してほしいねぇ。というわけで後はお二人さんでごゆっくり」


「帰ったらちゃんとお話しようね、お兄ちゃん。綾乃お義姉様もまた」


 ん?なんか今、お姉様のニュアンスが違った気が………まあいいか。


 何はともあれ、優奈が生きていたことを知れただけでもここに来た意味があった。

 しかも大和さんが俺の叔父だったなんて……… なぜ隠していたのかは気になるけど、それはまた今度聞こう。



 気持ちが落ち着いたら、急激に身体から力が抜けていってその場にしゃがみ込んでしまう。

 そんな俺を見ていた綾乃は、心配になったのか顔を青ざめさせる。


「ちょっと優心!?大丈夫!?」


「大丈夫だ、なんか優奈が生きてたって安心感でつい………」


「そうだったの…よかった。いつも無茶するから、その内倒れるんじゃないかって心配で………」


 それは本当に悪いと思ってるんだが、いかんせん長年の癖になっているせいでそう簡単には治らない。

 健康には気を遣っているから大丈夫だとは思うんだけど。


「でも本当に良かったわね。まさか妹さんが生きていて、こんなに身近にいたなんて」


「ああ、俺も言われるまで全く気づかなかった。どうして黙っていたのかは分からないけど、何か考えがあったんだろうな。その辺りも帰ったら話さないとな」


「そうね。…私たちもそろそろ帰りましょうか」


 ふと空を見上げれば、陽は傾き、雲ひとつない空は茜色に染まっていた。


「そうだな、早く戻らないと夕飯の時間に間に合わなくなりそうだ」


「じゃあ、行きましょう」


「あ、ちょっと待って」



 大事なことを忘れていた。



「父さん、母さん、じいちゃん、ばあちゃん。言わなくても大丈夫だと思うけど、これからは俺だけじゃなくて優奈のことも見守っててほしい。じゃ、俺たちは行くよ。今度は優奈も一緒に連れてくるからな」


「そこに私は入っているのかしら?」


「もちろんだよ。次来る時は三人で…いや。春馬と雛も一緒に、だな」


「ふふっ、そうね。それなら今日よりも喜んでくれそうね」



 そうして俺たちはその場を後にする。



 俺はなんとなしに振り向く。


 別に何かあったわけではない。

 ただ、みんなが手を振っている。そんな気がしたんだ。




お読みいただきありがとうございます!

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