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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第九十三話、大和、出航


 フィリピン海に展開する連合艦隊、旗艦『土佐』では、本土へ向かっている敵艦隊について意見が交わされていた。


「さすがに第九艦隊だけでは、この戦力は厳しいだろう」

「戦艦4隻に空母とは……。訓練中の『武蔵』ら戦艦5隻なら、性能では負けはしないだろうが……」

「練度の低い戦艦では話にならんぞ……」

「しかし訓練中の戦艦群は、魔技研からの派遣能力者たちがいる。命中率でいえば、現状でも互角にやり合えるのでは――」


 参謀らが意見を述べる中、山本五十六長官は口を噤む。宇垣参謀長が言った。


「戦力を分散させるのは得策ではありませんが……。やはり第九艦隊であたるには――」

「……」


 黒島先任参謀は、敵が分散されればむしろこちらに好都合と言っていたが……。南雲第二艦隊司令長官と小沢第三艦隊司令長官は、顔を見合わせる。

 結局、この始末である。連合艦隊司令部が想定していたより、規模が大きかったということだろう。


 今こそ敵太平洋艦隊は戦力を分散させた。攻め時だ、と言ってもいいのだぞ――


「失礼致します。長官、内地より通信です」


 諏訪情報参謀が足早にやってきた。本土からの連絡――連合艦隊から戦力を抽出して、日本に戻せと言ってきたのではないか。参謀たちが固唾を呑んで見守る中、その内容を山本は目を通し、ふっと口元を緩ませた。宇垣はたまらず問うた。


「内地からは何と?」

「第九艦隊が対処する。修理中だった『大和』は、すでにそれを完了していたようだ」

「大和……!」


 宇垣が目を見開いた。軍令部、いや魔技研から『くれ』と言われて、連合艦隊が南方作戦に戦力を全力投入できるのと引き換えに渡した日本最強の戦艦。それを実戦投入するというのか。


 渡辺戦務参謀が、口を開いた。


「まさか、軍令部はこの事態を見越して『大和』を……」

「いやいや、さすがにそれは――」

「偶然だぞ」


 黒島はぴしゃりと言った。


「こういう事態になった時の保険だったというだけだ」


 そもそも取引時点の『大和』は海に浮かぶスクラップ状態。とても戦力に勘定できなかった。


「未来予知などというものでは――」


 そう言いかけ、黒島は黙り込む。未来を予知した――傍から聞けば、眉唾どころか一笑に付すところだが、魔技研が絡むとそうとは言い切れなくなる。

 もしかしたら、能力者の中に、未来が見える者がいるのではないか、と。


 小沢は口をへの字に曲げた。


「しかし『大和』は修理中だったのだろう? 『武蔵』と同じで、乗組員の練度はどうなのか?」


 威勢のいいことを言っているが、果たして戦力になるのか。小沢の疑問に対して、山本は諏訪参謀を見た。


「やれるか?」

「魔核制御艦に改装されていますから、乗組員は最低限でも性能に問題はないでしょう」


 諏訪はスラスラと答えた。


「向こうには、魔技研でも最上位級の能力者である正木姉妹もいますし」


 正木姉妹、と聞いて、宇垣は、そうだったとホッとした。トラック沖海戦で恐るべき射撃精度を見せて、敵戦艦を撃沈した正木初子大尉が、第九艦隊にいる。彼女が最強の46センチ砲を持つ『大和』を操れば――


 そこで山本が頷いた。


「うむ、本土防衛については、第九艦隊に任せて問題ないだろう。では、我々は、目の前の敵――敵太平洋艦隊に注力しよう」



  ・  ・  ・



 九頭島秘密ドックでは、『大和』の出撃準備が進められていた。


 神明大佐と神大佐も、大和第一艦橋へ上がった。艦橋後部に魔核が設置されており、その後ろに、正木初子がついた。


 魔核が緑に発光。だが光はすぐに白くなり、次いで置物のような巨艦に命が宿ったような鼓動、唸りのようなものが感じられた。


 神大佐は目を見開く。


「さっきまで、ほとんど人がいない感じだったのに、何だか急に乗組員が全員配置についているような気配がしてきました」


 不思議な感覚です、という神に、神明は頷いた。


「実際、この規模のフネからしたら無人に等しいがな」


 乗り込んでいる人間も数十人程度。本来の乗員数が約2500人だから、どれほど少ないかは一目瞭然である。


『マ式機関、始動開始』


 機関出力16万馬力。魔技研が修理、改修する前が15万馬力だったので、その出力は上がっている。


 初子の魔核制御により、『大和』艦内の設備が次々に動き出す。


 おおっ、と声を上げる神をよそに、神明は静かにその時を待つ。艦の外では固定具と網が解かれていき、間もなく初子が報告した。


『神明大佐、各装備に異常は認められず。出航可能です』

「よし。……『大和』、出航せよ」


 大和型戦艦、その外観は、主砲の配置や艦橋やマスト、煙突の位置など改造前とさほど変化がないように見える。


 目に見えて違うといえば、艦中央の艦橋周り。搭載されていた副砲四基のうち、両舷に設置された一基ずつが撤去されて、二基となっていて、そのスペースを高角砲と対空砲が埋めていた。


 40口径12.7センチ連装高角砲六基は、新型の50口径12.7センチ連装高角砲十二基二十四門に倍増している。爆風避けのシールド付き対空機銃座の他、直進性の髙い50ミリ光弾型速射砲も各所に装備されている。甲板全体を見渡しても、対空砲の追加は明らかである。


 基準排水量6万4000トン。全長263メートル、最大幅38.9メートル。主砲は45口径46センチ三連装砲三基九門。


 横から見れば、すっきりまとまった精悍さを感じさせる一方、正面から見ると重甲冑をまとった騎士の如く、いかなる攻撃も跳ね返す頑強さを備えた巨艦である。


 日本海軍が誇る最強の戦艦『大和』は、魔技研の魔法装備や最新の電探やソナー、電子装備を身につけ、再び大海原へと乗り出す。

 微速をもって、九頭島秘密ドックから姿を現す『大和』。


『右舷、第九艦隊を確認』


 戦艦『大和』の出航を待っていたように、大型巡洋艦『妙義』『生駒』、そして空母『翔竜』と、駆逐艦隊がいた。


 今回の戦力は、『大和』を加えて、大型巡洋艦2に実験空母1、軽巡洋艦4、駆逐艦8である。

 ……なお、マリアナ諸島奇襲作戦に参加した、空母『インドミタブル』は、改修仕上げと点検のち、連合艦隊に編入されたので、九頭島にはいない。今は呉で搭載する飛行隊と共に訓練中である。


 ともあれ、第九艦隊16隻は、九頭島を出て、南西方向へと舵を取った。


 目指すは日本本土を目指す、異世界帝国艦隊。

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― 新着の感想 ―
遂に新生なった大和の出撃!! 出撃場面を読んでいる時に、頭の中ではあの名曲が鳴り響いていました(笑) 新生大和の初陣、楽しみです!!
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