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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一二二〇話、潜水艦隊の行動


 第3潜水艦隊、司令長官アヒーンズ中将は、不気味な日本潜水艦隊を包囲すべき行動していた。

 ヴァスィア・ネラ級大型潜水艦を旗艦とする第3潜水艦隊は、150隻からなり、通常の潜水艦の他、潜水型駆逐艦、巡洋艦を含む混成艦隊であった。


「見えない敵を相手にするというのは嫌なものだ」


 アヒーンズの発言に、傍らの参謀長は皮肉げな笑みを浮かべた。


「元々、我々潜水艦は、海に潜ると目が見えませんが」


 音が頼りの世界だ。敵が出す音、こちらの発した音の反射を捉えることでその存在を浮かび上がらせる世界である。

 ここでは目よりも耳が大事である。


「敵は我々よりもいい耳を持っているようで。おそらく先制は敵が取るのでしょう」

「何ともやりづらい。味方が犠牲になるのが前提とはな」


 アヒーンズは気が進まないという顔をする。

 索敵範囲の違いは、先制攻撃に直結する。そして先制されるということは、先にやられるということでもある。


「こちらの索敵範囲は、もう少し何とかならんものか。聞けば我が軍は、日本軍の潜水艦に対して先制できた試しがないらしいじゃないか」

「一部例外はあるようですが」


 参謀長は真顔で返した。


「こちらのソナーもバージョンアップはしています。これだけの艦隊を率いていても、一定速度以下であれば、自軍の潜水艦のノイズをキャンセルできる機能とか」


「それならば最高速度を出しても自軍のスクリュー音をキャンセルするとか、そっちを出してほしかった」

「実際、実戦配備に向けて量産しているらしいですよ」

「本当か!?」


 アヒーンズは驚いた。

 もしそのソナーが配備されれば、潜水艦の索敵はもちろん、水上艦艇が20ノット以上を出しても自艦のスクリュー音のせいで探知できない、などという問題が解決されるのではないか。

 そうなれば、敵潜水艦艇狩りが捗るようになり、今までのような苦戦も避けられる。


「何でまだ配備されていないんだ?」

「できたばかりだからではないんですか?」


 どこか投げやりな参謀長である。自分も聞いた話で詳しくは知らない。だから深く突っ込んでくれるな、という顔である。


「ともあれ、結局、今日の我々には間に合わなかったわけですが」

「まあ、そうだな」


 アヒーンズは正面に向き直った。機械に覆われた発令所には窓はなく、当然外の様子もわからない。


「だがよくよく考えたら、今必要なのは純粋に探知距離の長いやつだな」


 敵より遠くから音を広い、識別できるソナー。それが今こそ必要であった。参謀長は頷いた。


「そうですね。ただ先の新型、一部では配備が始まっているそうで……。こちらにも欲しかったところです」

「まったくだな」


 同意した時、くぐもった音が外から聞こえた。発令所にいた者すべてが、その音に反応する。


「聞こえたな」

「はい……」


 音が繰り返し聞こえる。


「爆発音……? 敵かっ!?」


 アヒーンズは聴音手を見やる。彼はヘッドホンをズラして振り返った。


「複数の爆発音、右舷方向より続く!」

「敵は右か! 全艦、面舵!」


 司令長官は即座に命じた。


「回頭完了後、衝撃魚雷各2本を前方方向に発射!」


 通信手が艦隊内水中通信機に取りかかった時、発令所が吹き飛んだ。アヒーンズはもちろん、操舵手、通信手含めた要員が爆発と海水の衝撃に飲み込まれた。


 第3潜水艦隊に対して、側面から仕掛けたのは、日本海軍第五艦隊である。

 単縦陣をに五列形成し、第五艦隊各艦は、第3潜水艦隊に対して反抗戦を仕掛けつつ、右舷に指向した転移砲で砲撃を加えた。


 TR型潜水艦を始め、潜水型駆逐艦、潜水型巡洋艦が次々に被弾、大量の気泡と共に爆沈していく。

 第3潜水艦隊は、旗艦からの命令がなく、反応が遅れた。その旗艦は、艦隊で一番大きい潜水艦だったこともあり、真っ先に標的になって沈められていた。


 反撃命令も出ず、判断に迷っている間に味方は次々とやられていた。これが水上艦であれば、旗艦喪失は目で確かめることができただろう。

 だが水の中、音で判別するしかない世界で、味方潜水艦の爆発が多数起きたことで聴音手たちは聞き取れず、旗艦の動向がまるでわからなくなった。


 故に水中通信をして旗艦を呼び出すが、撃沈されてしまったので応答はあるはずもない。対応が遅れている間に、転移砲弾の猛攻で第3潜水艦隊の被害は拡大する。

 敵襲とあれば衝撃魚雷を使ってかく乱する――そういう作戦だったので、その場で衝撃魚雷を発射する艦も現れた。だが敵の位置もわからないまま撃ったところで、態勢を立て直すための時間稼ぎにしかならない。


 そこに敵がいなくて、水中衝撃波の効果もまったく意味がないとなれば、そもそも時間稼ぎすらできなかった。

 旗艦の命令を待たず、各個に残存する潜水艦は動く。艦隊右側の潜水艦ばかりがやられたので、そちらに艦首を向ける者、あるいは逃走する者など反応はそれぞれだった。


 だが、最終的な運命は同じだった。すなわち、第五艦隊の水中砲撃は、第3潜水艦隊を一隻残らず撃沈したのであった。



  ・  ・  ・



 第3潜水艦隊の全滅は、総司令部である『ウルブス・ムンドゥス』にも届いた。

 詳細はわからない。敵の規模もわからない。交戦中という連絡が最初で最後であり、以後は途絶している。

 だがこの衝撃は、ただ潜水艦隊が全滅しただけでは終わらなかった。


「どういうことだ……?」


 アエイ首席参謀は首をかしげた。


「敵は主力の露払い、もしくは支援のために本営艦隊に突き進んでいるのではなかったのか?」


 予想された針路から逸れた結果、包囲殲滅するはずが、その網の外へ逃げられた。


「敵は一点集中で総旗艦を目指していたのでは……?」


 参謀たちの視線が、総参謀長であるカサルティリオに集まる。総司令部の予想ははずれたばかりか、包囲部隊の一角が崩れた。


 さらに地球軍の戦略についても、今までの予想で合っているのかわからなくなった。日本海軍第五艦隊の動きは、ムンドゥス帝国総司令部に一種の混乱を起こしたのであった。

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