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復活の艦隊 異世界大戦1942  作者: 柊遊馬


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第一〇五話、T-13艦艇転移実験


 日本軍第一艦隊は、敵旗艦級戦艦との遠距離砲撃戦で、『天城』と『薩摩』に直撃弾を受けて、落伍。残る戦艦は5隻となっていた。


 3万5000メートルの砲戦距離でまともに当てられたのは、敵旗艦のみだったが、数の不利を抑えるべく、落伍した艦へのトドメよりも健在の艦の戦闘力を奪うことを優先させたらしい。


 そして3番目に狙われたのは連合艦隊旗艦『土佐』だった。


 敵大型戦艦に夾叉され、次に砲撃が飛んでくれば、いつ被弾してもおかしくない。敵の主砲は43センチ砲であり、食らえば『土佐』の装甲では破られる可能性は高かった。当たり所が悪ければ轟沈もあり得る。


 山本五十六長官以下、連合艦隊司令部にも緊張が走る。


 第一水雷戦隊を突っ込ませるか、いや今からでは間に合わない。旗艦の無事を優先し、敵の砲撃を躱すべく変針すれば――などなど。


 だが敵旗艦の周りに突然、巨大な水柱が囲み、一同は別の意味で固まった。こちらの砲撃が着弾するタイミングではないのだが――


「何だ……?」


 訝る山本。通信兵が駆け込んできた。


「弾着観測機より報告! 第一艦隊とは別の観測機を確認。先の砲撃は、そちらからの模様」


 はあ?――黒島先任参謀が眉を吊り上げた。意味がわからなかった。

 そこへ別の通信兵がやってくる。


「長官、連合艦隊司令部宛てに平文です。『我、大和。これより参戦す』以上!」

「『大和』だと……!?」


 連合艦隊司令部が騒然となった。山本も二の句が継げなかった。

 大和といえば、大和型戦艦の『大和』で間違いないだろうか? しかし――


「『大和』は内地ではないのか!?」


 宇垣参謀長が、珍しく声を荒らげた。昨日の今日で、本土からフィリピン海まで、いくら飛ばしても1日程度で到着できるはずがないのだ。

 それこそ『魔法』でもない限りは――



  ・  ・  ・



 戦艦『大和』は日本本土近海の九頭島にいた。


 それは間違いない。しかし、異世界帝国の奇襲艦隊を撃滅した折り、『大和』にいた先任参謀の神は、『このままフィリピンに駆けつけて連合艦隊と共闘しましょう』と発言。この時、神明大佐はまともに受け取らなかったのだが、母港に帰還した頃には、考えを改めていた。


「これから、フィリピンへ行くぞ」


 もちろん、言い出しっぺである神は、自分でも本気で、フィリピンに駆けつけて、などと発言したわけではない。


 日本とフィリピンの戦場までの物理的な距離の問題がある。どうあがいても、連合艦隊と異世界帝国太平洋艦隊の海戦は終わっているに違いない。


 だが神明大佐は本気だった。

 転移札による瞬間移動能力者である秋田中尉を呼ぶと、神明は告げた。


「艦艇転移試験T-13をやる」

「……本気ですか?」


 当の秋田は面食らった。いつかはやるとわかっている実験ではあるが、まさか一海戦が終わったばかりの今やるとは思っていなかったからだ。


「理由ができた時にやってしまうのが、ちょうどいい。今は条件が揃っているからな」


 神明は地図を指し示した。


「ちょうどマ号潜水艦隊が、戦場の近くにいる」


 太平洋艦隊後方を移動する敵の大上陸船団攻撃のため、第九艦隊潜水艦部隊こと、マ号潜水戦隊が、フィリピン海にいる。


「貴様は――そうだな。偵察機を積んでいるマ8号潜に飛び、そこから戦場海域近くへ向かえ。適当なところでマーカーを落としたら、転移で『大和』に戻れ。後は……言わなくてもわかるな?」

「わかりました」


 やはりいきなりというのがあって、渋い顔になる秋田である。

 人間は感情がある生き物なのだ。だが同時に、ここは軍隊である。命令あれば、それがいついかなる時でも実行せねばならない。


『大和』は九頭島軍港に戻ると、最低限の補給と追加人員を呼集。『妙義』から一式水上戦闘攻撃機を『大和』に載せ替え、準備を整える。


 一方で、秋田は、転移札を使って、まずマ-8号潜水艦に転移した。

 明治時代の防護巡洋艦『高千穂』を再生、改造して潜水艦となったマ-8号。この艦は、日本の巡洋潜水艦(巡潜型)と同様、カタパルトを備えて、魔技研開発の二式水上偵察機改を搭載していた。

 ちなみに、紛らわしいがハインケル設計の同名の機体とは別物で、魔技研と武本重工の共同製作である。


 秋田は、神明からの命令書を潜水艦長に提出。マ-8号の艦長、松川少佐は、T-13のため、戦隊と別行動を取る旨を、魔力通信で僚艦に伝えると、艦を浮上させ、武本二式水偵改を用意させた。秋田は航空服を着せられて、水偵の後ろ座席に乗り、機体ごとカタパルトで射出され、フィリピン海の空を飛んだ。


 遮蔽装置を標準装備する二式偵察機に乗って西へと飛行。やがて水平線の向こうで戦闘をしているのを確認すると、偵察機は海上ギリギリに降下。秋田はコクピットを開くと、札付きの浮遊板を投げ捨てるように、機外へ放り出した。


 その後、水偵にはマ-8号に戻ってもらうと、自分は転移札で、『大和』に戻った。ちょうど、『大和』は最低限の補給作業を終えて海上に出ていたので、秋田が神明に報告を済ませると、艦艇転移実験――T-13が実行された。


 艦艇転移。


 秋田の転移札による瞬間移動能力を活用して、軍艦を移動させる――時間と燃料を節約し、目的地へと飛ばす究極の移動方法である。


 これがもし一般的な技術として実現すれば、移動や輸送、戦略、戦術に革命が起きるのだが、現状は、秋田の能力頼みであり、まだまだ制限も大きい。


 かくて、戦艦『大和』は、九頭島近海から、フィリピン海――秋田が水偵から落とした浮遊板の札にテレポーテーションを成功させた。


 一方、功労者である秋田は盛大に魔力消耗を起こし、ぐったりしていたが……。大和ほどの巨艦を、遠くへ転移させるのは消耗も大きく、連発できないのが次の課題となるだろう。


 ともあれ、転移を済ませた『大和』は、ただちに観測機を発艦させ、戦場の偵察を行い、第一艦隊が、異世界帝国の旗艦級戦艦『アナリフミトス』と撃ち合い、苦戦しているのを発見。46センチ砲による遠距離砲撃を実行した。


 これが、『アナリフミトス』を襲った砲撃であり、エアル大将をして『41センチ砲ではない』と言わしめた攻撃の正体だった。


 そして、『大和』の砲撃が、次々と異世界帝国艦隊旗艦を襲う。障壁を抜けてくる超重量弾は、自艦の長砲身43センチ砲に耐える装甲――実質、対45センチ砲対応防御を叩き、傷つけた。

 高角砲と光弾投射基を吹き飛ばし、艦尾ガンマ砲塔のバーベットを歪ませ、旋回不能に追い込んだ。

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